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「生々しすぎる」カイロに騒然 攻めたデザインの意図、日赤に聞いた
無償の善意への感謝、全力で表現
春の足音が聞こえてきたとはいえ、厳しい寒さが続いています。なかなか手放せないのがカイロです。先日、意外なほど「生々しい」形状のものが、ツイッター上をざわつかせました。一体、どんな意図が? 配布元の組織を取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
カイロは、日本赤十字社(本社・東京都港区、日赤)が制作しているものです。
手のひらサイズの、献血用バッグを思わせる外観。表面に刻まれた”赤血球液-LR「日赤」”や、”献血” “特生物”といった表記……。半透明の赤い液体が詰まっている点も相まって、一見すると医療用具としか思えません。
しかし、献血マスコットキャラ「けんけつちゃん」とみられるシルエットがプリントされるなど、パロディー的な要素を含むことからグッズと分かります。この製品、実は繰り返し使える「エコカイロ」なのです。
2月上旬、ツイッター上に関連画像が出回ると、大いに話題を呼びました。「めちゃくちゃかわいい」「カプセルトイ化したら即購入する」「手に入れるために血をあげまくる」。現在に至るまで、多くの感想が飛び交っています。
人々の度肝を抜いた今回のカイロは、どういった性格のアイテムなのでしょうか? 日赤の担当者に聞きました。
担当者によると、カイロは2023年1月中旬以降、全国の献血会場で配布されています。サイズは縦約12センチ・横約8センチ・高さ(厚み)約1センチです。ウェブ上の会員制献血予約サービス「ラブラッド」利用者向けに誕生しました。
同サービス経由で献血の予約をするなどした場合、会員は特別なポイントがもらえます。20ポイントたまると、様々な記念品と交換できるそうです。カイロもその1つで、献血への動機付けや、関心を喚起する目的で提供されています。
全体のデザインについては、ラベルの表記や形状を、できる限り本物の血液バッグに似せています。実物と同様、A型・B型・O型・AB型の4種類あり、献血関連事業を行う日赤ならではのクオリティーが実現されていると言えそうです。
カイロを満たす液体は、水と酢酸ナトリウム水溶液を混ぜ、赤く着色したもの。使った後、固まった液体が溶け出すまで、お湯で5~10分程度温め、しばらく置くか冷水で冷ますと再利用できます。
ちなみにカイロの他にも、黄色い液体入りの保冷剤や、より小さいサイズのキーホルダーなど、血液バック型の献血記念グッズには様々なものがあります。SNS上で画像が拡散され、人々の目を楽しませることもしばしばです。
担当者によれば、各種記念品は、協力者に対する感謝の気持ちを表すためのものです。無償の善意が疑われることがないよう、社会通念上差し支えがない範囲で、目的に適(かな)うデザインを考案しているといいます。
日赤の統計では、2021年度の献血者数は505万人と、17年度比で約30万人増加しました。一方、担当者いわく、献血は国の需給計画や医療機関の需要を踏まえて呼びかけられます。必要量を超えて依頼することはありません。
その上で担当者は「将来の献血基盤を支える若い世代にご協力頂くため、様々な取り組みやキャンペーンを実施しています。記念品に限定したものとは断定できませんが、それぞれ一定の効果があったのではないかと考えています」と語りました。
そして、カイロがネット上で好評を博した点を巡っては「現在の反響が、献血未経験の方や献血間隔が長く空いている方にとって、献血の動機付けになることを期待しています」と述べています。
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