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カレー、何曜日に食べる? エスビーの商品名、由来は〝バブル期〟に
料理レシピサイトで検索される曜日は。
自宅でのカレー、食べる曜日は決まってますか?――。料理レシピ検索サイトなどに聞いてみると、実は、カレーが食べられる曜日に偏りがあることがわかりました。
「カレー」と「曜日」というワードでまず浮かぶのは、「カレー曜日」。約30年にわたり販売が続く、エスビー食品の商品です。一時期、同名のルーを販売していたこともありましたが、現在は、甘口、中辛、辛口の三つのレトルト商品を展開しています。
「カレー曜日」とは、何曜日を想定してつくられた商品なのか――。
同社広報に聞くと「実は商品ありきではなく、キャンペーンから始まったものなんです」とのこと。
話はバブル景気の頃までさかのぼります。
1980年代のバブル景気の間は、リゾート地の開発が進んだり、「ジュリアナ東京」をはじめとするディスコブームが来るなど、人々の消費行動は加熱していました。同社によると、レトルトカレーにもバブルの影響があったといいます。「辛さに特化したものや、パッケージの色合いを派手にしたりという、カレーの要素の一部分だけを膨らませた『とがった商品』で、消費者を引きつけようとする傾向がありました」。
カレー曜日が発売された1990年は、株価が下がるなど、バブル景気が崩壊に向かっている最中でした。
同社では、「(いずれ)原点回帰して『おいしいカレー』の本質である“家庭の味”を求める動きが出るだろう」と想定。20~30代のファミリー層に向けて、「カレーをライフスタイルの一つとして定着させてもらいたい」とプロモーションをかけ、家庭でのカレー文化の定着を狙いました。
そのキャンペーンで使われたのが「カレー曜日」という言葉。
キャッチコピーは「今日は、わが家のカレー曜日」「食べたいときがカレー曜日」でした。
そのため、カレー曜日というのが月~日の特定の曜日を指すことは当時想定していなかったそうで、「『それぞれのご家庭で、それぞれのカレー曜日を定着させてもらいたい』という願いが強かったようです」(広報担当者)。
ただ、近年はその「カレー曜日」にも傾向が出てきました。
同社が2018年に発表した、カレーに関する調査で「カレーを自宅で夕食に食べる曜日別の頻度」を聞くと、一週間の中では金曜日に一番食べられていることがわかりました。
アンケートでその理由を聞くと、1位は「いつ食べてもおいしい」、続いて「家族が好き・喜ぶから」、3位は「子どもが好き・喜ぶから」という結果に。
広報担当者は「一週間の疲れがたまった金曜日だからこそ、(比較的調理が楽な)カレーをメニューに選んだり、家族みんなが好きなメニューであるカレーを選んだりすることが考えられるのでは」と話します。
週末に食べられるという傾向は、料理レシピサイトの検索結果からも。
料理レシピサービス「クックパッド」の検索データサービス「たべみる」によると、2020年から22年までの3年間の「カレー」の1千回あたりの検索頻度(SI値)は、金曜が最多。金曜を100とすると、月曜88.6、火曜90.5、水曜92.2、木曜93.2と、金曜までに徐々に増えていきました。週末は土曜98.8、日曜95.9と、金曜を除く平日よりも高いことがわかりました。
また、レシピ動画サイト「デリッシュキッチン」によると、昨年8月の「カレー」の検索数で最も多い曜日は土曜日という結果に。土曜を100とすると、日曜が90で続き、金曜が89で平日では最多。最少は火曜で78でした。
土曜が最多だった理由についてサービス運営会社の広報は、週末に残った食材が活用できる点に加え、「手軽に作れて大人も子どもも喜んで食べられる。家族がそろう休日によく作られているのではないか」と推測します。
「カレー総合研究所」の代表・井上岳久さんは、カレーは木曜日に食べられていた印象が強いと言います。「カレーは家族だんらんのイメージがある。一昔前は、会食が入りやすい金曜日は、父親が夕食時におらず、避ける傾向があったのではないか」とみます。
一方、金曜日以降にカレーを食べる家庭が多いというデータについては、コロナ禍で在宅勤務が増え父親が家にいることが多くなったことに加え、「共働き夫婦が増えたことが影響しているのではないか」。平日の最後で、仕事が忙しくなりがちな金曜日に「帰宅後パッと作る、または朝出発前に作るのに適している」と言います。
さらに「カレーであれば、一週間の夕食メニューのネタが切れたときも作りやすい」と指摘。「『金曜日はみんないるし、忙しいし、カレーにしよう』となるのではないでしょうか」
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