連載
#104 コミチ漫画コラボ
受験生時代のバレンタイン、「じーん…」とした母のやさしさを漫画に
「世間はバレンタインに浮足立つが…進学校の3年生にそんな日は存在しない!」
バレンタインデーにはどんな思い出がありますか? 大学に通いながらSNSに漫画を投稿しているA1(エイイチ)さん(22)は、大学受験の年のバレンタインが印象的で、漫画にしました。そもそも「進学校の3年生にそんな日は存在しない!」といいますが、どんなバレンタインだったのでしょうか?
「2月14日、世間はバレンタインで浮足立つが…進学校の3年生にそんな日は存在しない!」
漫画はそんな一文から始まる、A1さんの実体験です。
センター試験が終わり、学力の現実を突きつけられる受験生たち。「クラス全体がギスギス」している状況でした。
バレンタインであろうと、変わらず勉強に励むA1さん。学校ではバレンタインを感じることはありませんでしたが、帰宅後、母親がチョコレートをくれました。
「勉強中でも食べやすいような粒状のチョコ買ってきたよ!」
何げない母親の気遣いに、「じーん…」となったA1さんでした。
「みんなバレンタインどころではありませんでした」
進学校で国立大学を目指し勉強していたA1さんは、そう振り返ります。センター試験を終え、志望校のレベルに点数が達していなかった生徒は雰囲気が暗く、点数を満たしている生徒も次の試験に向けて緊張感が漂っているように感じました。
自身も例外ではありません。
「センター試験の結果が志望校の合格ラインに達していなかったので、志望校を考えなおしました。2月後半からは国公立大学の前期試験が始まります。出願と勉強とでみんなストレスがたまっている時期かもしれません」
A1さんの高校は国公立を受ける人が多く、「『東大に行け!』という〝リアル『ドラゴン桜』〟のような先生ばかりでした」と振り返ります。
イベントごとが好きだったA1さんは、それまでのバレンタインでは大袋に入った小分けのチョコレートを買って、男女関係なくクラスの友達に配っていたそうです。友達からもらうこともあり、バレンタインは「おいしいものをいっぱいもらえる日」という認識でした。
しかし、高校3年になると毎日夜まで学校の学習室で勉強し、親に迎えに来てもらって帰宅する日々を送っていたといいます。
学校ではバレンタインを楽しむことはなく、意識もしていませんでした。しかし、帰宅して母親からチョコレートを手渡されたときは、素直にうれしかったと話します。
「『バレンタインだからチョコあるよ』『猫ちゃん好きでしょ』と、猫の形をしたチョコや缶に入ったチョコ、一口サイズのチョコの三つをくれました。勉強中に食べて元気が出ました」
高校3年の夏休み、体調を崩して入院していたA1さん。2カ月ほど勉強に集中できない時期がありました。その後志望校を選択する際は両親と衝突があったといい、「当時はこの世で自分だけが不幸だと思い込んでいた」と振り返ります。
毎日お弁当を作ってくれた母親にも、体調を心配し毎日送り迎えをしてくれていた父親にも、素直に感謝の気持ちを伝えられませんでした。むしろ、「感謝を伝えるという感覚がなかったかもしれません」。
現在大学生活を送るA1さんは、親元を離れて自分で家事をするようになり両親へ感謝の気持ちが強くなったと話します。
「友達や先輩に恵まれ、心に余裕ができてきました。高校時代を振り返ってみると、私は親への態度がちょっとひどかったかもしれません。何でもやってもらえるのが当たり前ではないよと、当時の自分に言いたいです」
今回の漫画を母親に見せ「バレンタインのときはありがとう」と伝えると、「『いいね』したよ!」と喜んでくれたそうです。
A1さんは、「世の中にあるバレンタインの創作は恋愛の話が多いと思いますが、家族からのチョコを喜ぶ話があってもいいなと思いました」と話します。
「バレンタインは、誰かに気持ちを伝えるきっかけです。私も感謝や好意などの気持ちを伝えられる日にしたいと思います」
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