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車社会を下支え!?「ありがたすぎる」ジャッキに称賛、発想の源は
「情けなさ」をあえて全面排除した理由
自動車などの重い物を持ち上げるための道具・ジャッキ。これを模して、予想外のモチーフを元に作られた美術品が、ツイッター上で「天才的」と称賛を集めています。発想の源がどこにあるのか、制作者に話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
2023年2月3日、とある動画と画像がツイートされました。
写っているのは、仏像などの形で表現されることが多い、仏教における敵役「邪鬼」の造形物。ふんどし姿で右上をにらみつけ、両手を上側に掲げた様子は、何かを支えている風です。盛り上がった腕や足の筋肉が、雄々しさを感じさせます。
そして注目すべきが、膝を貫く細長いねじです。21秒の動画では、ねじの回転に伴い、折り曲げていたももを伸ばして立ち上がる様子が記録されています。この作品の名前は、邪鬼とジャッキとをかけた「邪ッ鬼」といいます。
「天才の発想」「なんて有用な邪鬼たんの使い方なんや」「もはやシャレが芸術の域だ」。ツイートには好意的な感想が連なり、6千超の「いいね」がつきました。
#節分の日 #節分2023 #節分
— 田上 万豊 Tagami Takato (@TGARMY2nd) February 3, 2023
今年も邪ッ鬼うp
※日本の産業四天王の一角、自動車産業は支えられません。 pic.twitter.com/S8W643mNF8
「邪ッ鬼」を手がけたのは、田上万豊(たがみ・たかと)さん(@TGARMY2nd)です。仏教的な意匠などから着想を得た造形物を、これまで数多く制作してきました。
田上さんによると、「邪ッ鬼」のアイデアが生まれたのは2021年のこと。小ぶりな作品を構想していたとき、なぜか「邪鬼」と「ジャッキ」の共通点に気付き、それぞれのモチーフが頭の中でぴったりと合致したのだといいます。
邪鬼と言えば、仏教の世界においては、仏法を破る存在として登場することが少なくありません。四方を守る四天王のうち、多聞天(毘沙門天)に踏みつけられる場面など、情けない姿で図案化されるのが一般的です。
一方、四天王に仕える善神と見なされる場合もあり、「邪ッ鬼」においてはこちらのイメージを採用しました。ウレタン樹脂の一種・レジンキャストが主材料で、実際にジャッキとしては使えませんが、その力強さは見る者に強い印象を残します。
「ジャッキは重量物を持ち上げて支えるための道具であり、善神としての邪鬼は四天王の眷属(けんぞく)です。その役割や動作を想像すると、自然と今回のデザインに行き着きました」
「特に意識したのは大腿部(だいたいぶ)の筋肉表現で、曲げていても伸ばしていても違和感のない、中間的なデザインを心がけました」
たくましい外観の「邪ッ鬼」ですが、横幅は20センチ、奥行きは10センチほど。昨年1月の完成後、SNS上や各種展覧会で披露すると「可愛い」「面白い」と好評を博しました。ちなみに今回は節分に合わせて動画を再掲したそうです。
田上さんは他にも、3つの顔と6本の腕を持つ金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)を、ほうきやハンガーを手にする母親に見立てた「金剛夜叉オカン」など、仏教由来のユニークな作品を積極的に生み出してきました。
なぜ、仏教なのか。尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。
「私の性格のナイーブなところと、私が好む造形や雰囲気とが、おのずと仏教・仏像に向かわせただけです。諸仏が現すありがたいそのあり方の一部を、日常経験のレベルで見いだして表現しています」
「なので、私の解釈や経験によりつつも、持物(じもつ=仏像が手に持ち、その法力などを象徴する物)や印(仏像のハンドサイン・印相)にも対応するような意味を考え、デザインを組み立てています」
そして、「邪ッ鬼」が改めて注目を集めた点については「幸いです。今後、作品を作るほどにクオリティーが上がっていくと思うので、現在のデザインとのギャップをより楽しんで頂けるはずです。よろしくお願いします」と話しました。
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