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連載

#13 #令和の専業主婦

扶養内で働く〝ちょうどいい人〟 セーブは「なまけ」?…批判の誤解

「誰もが本意の働き方を選べるようにするには?」

「理由は様々だけど、本意の人と不本意の人がいます」と識者は語ります。写真はイメージです=Getty Images
「理由は様々だけど、本意の人と不本意の人がいます」と識者は語ります。写真はイメージです=Getty Images

目次

配偶者の就業を阻害する要因とも指摘されている「130万円の壁」などが国会で議論になっています。そもそも「壁」を意識しながら働くのは、どのような人たちなのでしょうか。

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本意の人と不本意の人

パートの主婦らが社会保険料を負担しないように時間を抑えて働く「130万円の壁」などについて、岸田文雄首相は1日の衆院予算委員会で「対応策を検討する」と述べ、制度を見直す考えを改めて示した。
「130万円の壁」超えると保険料負担増 首相は「対応策を検討」:朝日新聞デジタル

女性の生き方と働き方をテーマに調査を続ける「しゅふJOB総研」の研究顧問の川上敬太郎さんに話を聞きました。

 ――そもそもなのですが、扶養内で働いている人たちの状況を整理していただけないでしょうか。

 「扶養内で働いている人の理由は様々だと思いますが、本意の人と不本意の人がいます」

 「家計内のやりくりが配偶者の収入である程度まかなえて、本人は家計補助をする程度で十分だという家庭であれば、扶養の範囲内で働いている方がメリットがありますよね。それは『本意の人』だといえます。逆に、配偶者の収入だけでは家計がまかなえない家庭は、そもそも扶養に関係なく働いて収入を得る必要があります」

 「『不本意の人』は『本当はしっかり働きたいけど』というのが前提にあった上で、ちょうどいい条件の仕事が見当たらなかったり、働き過ぎて控除が受けられなくなると「働き損」となり、メリットが少なくなったりしてしまう人があたります」

労働力不足の社会から「要請」の側面も

――2021年にビースタイルホールディングスが行った調査では、収入の上限について聞くと、4割が「上限は気にしない」と答えた一方で、「103万円の壁」(配偶者控除の適用外となり所得税を支払うことになる上限)や「130万円の壁」(上限を超えると社会保険料を負担することになる)を意識している人たちが合わせて約45%いましたね。

 「控除内に収めたいという人たちは、家庭生活や家計のバランスを見たときに、それが『ちょうどいい』人たちです」

 「家のことをする時間もできるし、収入も配偶者の収入補助の役割で十分という考え方の場合、税金の優遇してもらえれば、その分出費が抑えられ、ちょうどバランスがいい人たちです」

 「ただ、これはデリケートな話になりますが、『働く能力があるのにも関わらず、セーブしている』という見方もできます。本人にとっては扶養内で働くことが本意であっても、労働力が不足している社会の中で『もっと働いてほしい』という意見もあります」

本来、働き方を選ぶのは誰なのでしょうか。写真はイメージ=Getty Images
本来、働き方を選ぶのは誰なのでしょうか。写真はイメージ=Getty Images

――労働力不足の社会からの要請、という意味では、扶養控除があることが社会側からも「壁」になっているという視点ですね。

 「扶養内で働くのが『ちょうどいい』人にとっては、『壁』がなくなると、バランスがくずれることになってしまいます。ただ、全体最適の点からいうと、『壁』は変えないといけない部分でもあります」

 「ただ、この制度は元々あったもので、いま扶養に入っている人は制度があるから利用しているだけ。制度が急に変わると、はざまで損してしまう人も出てくる可能性があります。そのため、少しずつ変えていくのが望ましいと思っています」


――「もっと働けるのに」という人たちが、労働を抑制する理由になってしまっている制度だととらえると、見直しがあってもいいのかなと感じます。

 「注意しないといけないのは、扶養内で働いている人のことを『働きたくないんだ』と評価したり、『なまけている』とみなして『許せない』と感情的に見る人がいることです」

 「感情的に捉えている人の気持ちをひもとくと、その主な理由は、自分にまわってくる『しわ寄せ』に対して不満に思っている気持ちです。「年末近くになると年収調整でシフトがうまらない分をカバーする」など、職場がしわ寄せを最小限にとどめる状況を作るべきであるという業務設計にかかる話なので、そこを混同しないようにしてほしいです」

「議論はあるべき。ただ……」

――今国会でも、税や社会保険料の負担が増えないように時間を抑えて働く「130万円の壁」などに言及があり、これまでも制度変更の議論はたびたび起こっています。

 「議論はあるべきだと思います。(現状、扶養内で働く多くが女性であることから)女性のキャリアの分断という観点からいうと、扶養枠でおさめようという気持ちが無意識にはたらいて、それが障壁のようになってしまっていることは問題です」
 
 「労働力不足の観点からみても、扶養内で収めようとするために、働けるけど働かないことを選ぶというのも課題かなと思っています」

「ただ、政府が何を想像して、この制度変更を考えているのかが気になります」

――というと。

 「10年後の『働き方』をどう考えているのでしょうか。例えば、夫婦が同じくらいの収入を得るというのをモデルケースにするかどうかということです」

2020年、しゅふJOB総研が行った『働く主婦の10年後の未来』がテーマのアンケートでは、「夫婦対等に共働き」60.2%、「夫が働き、妻は専業主婦」4.2%
しゅふJOB総研「働く主婦の10年後の未来」

「いまの議論を見ていると、制度を変えること自体が目的になっているよう見えます。『誰もが本意の働き方を選べるようにするには?』の将来的な具体的なイメージがあって、議論されるべきなのかなと思っています」

「誰もが本意の働き方を選べるようにするには?」。写真はイメージです=Getty Images
「誰もが本意の働き方を選べるようにするには?」。写真はイメージです=Getty Images

扶養内で働く、元専業主婦の本音

年収を扶養控除内で抑えながら働いているという40代の女性にも話を聞いてみました。

女性は、子育てと仕事の両立が難しくなったことや、自身の体調不良により、約10年前に会社員から専業主婦になりました。子どもが就学し、時間に余裕がでてきた頃から、ブログを運営するようになりました。企業からのPR案件を請け負うなどし、収益化に成功しています。

 ――現在は扶養内で働いているということですが、その理由を教えてもらえますか?

 「扶養の範囲を超えてしまうと、税金がたくさんかかるイメージがあるので、一応超えないように考えながら働いています」

 ――「130万円の壁」などは、就業を阻害する要因だと指摘されていますが、「壁」についてはどのようにとらえていますか。

 「本当はもっと大きく稼ぎたいし、主人からも扶養を超えていいからもっと稼ぐようはっぱをかけられます。「大きく稼ぐ」の具体的なイメージは年収300万円ほど。「主人になにかあったらわたし一人で稼がないといけないことになるかも……」と考えると、そのくらいあると安心感はありますよね」

 ――そこに踏み出さない・踏み出せないのはなぜでしょうか。

 「一度仕事を辞め、専業主婦のライフスタイルが長く続いた後だと、就労時間の制限や、就労形態、できる仕事内容などから、年収300万円を目指すのは難しいと考えているからです」

 ◇

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