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#8 親になる

赤ちゃん〝寝ハゲ〟眠るとき頭ぶんぶんで 専門医「安心して」の理由

生まれたときからフサフサだった髪の毛が……。※画像はイメージ
生まれたときからフサフサだった髪の毛が……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

生後3カ月に差しかかる頃、我が子の後頭部にまとまった脱毛を発見。思い返すと、眠るときに頭や首をブンブンと振る“クセ”のようなものがあるのでした。SNSなどで“寝ハゲ”と呼ばれるこのような脱毛はなぜ起きるのか、そしてこの“クセ”は放っておいて大丈夫なものか、小児科専門医らを取材しました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
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生まれたときからフサフサ

子育てをしていると、細かいところで驚くことがしばしばあります。

うちの子は生まれたときから髪の毛の量が多く、そろそろ3カ月目に差しかかる今は、まさにフサフサな状態。でも、2週間差で生まれた親戚の子どもは、あまり髪の毛が生えていません。二人を並べてみると、「同じ赤ちゃんでもこんなに違うものか」と不思議な感じがします。

また、当たり前なのですが、赤ちゃんも大人と同じように、くしゃみやしゃっくりをするんですね。そして、眠いときはあくびをするし、目をゴシゴシとこすります。その度に「可愛い」と思うわけですが、突然、大人とは違う行動をしてハラハラすることもあります。

私にとってはその一つが、寝るときに頭や首を激しく左右に振ったり、「うーうー」とうなりながら自分のフサフサの髪を掴む行動でした。さすがにこれは「可愛い」とはならず、大丈夫かなと心配になります。

観察していると、ちょうど眠りに入ろうとする、うとうとしているタイミングでこのような動きをするよう。声を出していますが、意識はないか、はっきりしていなさそうです。

発熱など体調に問題はなし。ミルクは飲ませてから寝かしつけをしているのでお腹が減ってはいないはず。寝ぐずってはいましたが、それは毎度のこと。10分から20分くらい手をつないでいてあげると、次第に動きは小さくなって、すやすやと眠りに落ちます。

そして、寝顔を眺めながら、「さっきの動きはなんだったの」と疑問に思うのでした。

頭や首をブンブン振るが…

赤ちゃんが寝るときに取るこうした行動について、小児科専門医でスマホアプリやSNSで発信する『教えて!ドクター』のプロジェクトリーダー・坂本昌彦医師に話を聞きました。

坂本医師は「寝る前に赤ちゃんが頭を左右にブンブン振るのは、珍しいことではありません」と説明します。

「はっきりした理由はわかっていませんが、睡眠習慣がまだ定まっていない月齢では、覚醒から入眠に移行するときに、落ち着かせるためにリズミカルな動きが必要になるからではないかとも言われています」

アメリカ小児科学会のウェブサイトでも、指しゃぶり(Thumb-sucking)と同様の「子どもによくある習慣」として頭を振る(Head banging)が紹介されており、「けいれんや激しく泣くなどがなければ心配しなくて大丈夫です」と坂本医師。

また、髪を掴む行動は子どもの成長に必要な「見る」「触れる」「口に入れる」などの探索行動の一つとも考えられ、やはり「安心してください」とのこと。前述のウェブサイトにもHair twirling​​(髪をくるくるする)として言及があります。

いずれも、赤ちゃんの成長と共に、次第に見られなくなる行動だということでした。

というわけで、ひとまずは頭や首を振ったとき、ぶつけるなどして傷つかないように、寝床まわりを整理。あとは気にしすぎず見守ることにしたのですがーーある日、我が子の頭を撫でていてギョッとしました。

フサフサだった髪の毛のうち後頭部の一画がごっそりと抜け、地肌が見えてしまっているのです。

その場では慌てたものの、そういえば子どもが生まれる前、脱毛した赤ちゃんの後頭部を「ブルドーザーが通ったあと」にたとえたツイートがバズっているのを見かけたことを思い出しました。

“低月齢あるある”として大喜利のように「芝刈り機かもしれない」などリプライが集まっているのを読んで、赤ちゃんの脱毛は珍しくないこと、こうした脱毛が“寝ハゲ”と呼ばれて、ある意味では親しまれていることを知ったのでした。

まあ、あれだけ頭を左右にブンブン振れば、それだけ後頭部を寝具に擦りつけることになるので、毛も抜けるでしょう。でもこれって、また生えてくるんです、よね……?

赤ちゃんもサイクルは同じ

そもそも、このような赤ちゃんの脱毛はなぜ起きるのでしょうか。国立成育医療研究センター・皮膚科診療部長の吉田和恵医師に話を聞きました。

吉田医師はまず「赤ちゃんの髪の生え方はとても個人差が大きい」とした上で、こう説明します。

「赤ちゃんの髪の毛が抜ける原因としては主に、自然に生え変わる生理的な脱毛(新生児生理的脱毛)と、摩擦による脱毛(乳児期後頭部脱毛)の二つが考えられます。これらの場合、また髪が生えてきますので、心配しなくて大丈夫です」

これもひと安心です。そもそも、赤ちゃんも大人同様、髪の毛が伸び、抜け、また生えてくるサイクル(毛周期)を繰り返しています。

自然にだったり、寝具などとの摩擦だったりで髪の毛が抜けることはあっても、また髪の毛は生えてきます。そのため、安心してよいとのこと。

そして、そのサイクルは、お母さんのお腹の中にいるときから始まっていると考えられているそうです。生まれたときから髪がフサフサの赤ちゃんと、そうでない赤ちゃんがいるのは、このような理由によるものとみられます。

また、生後すぐに一気に髪の毛が抜けたように見えても、お腹の中ですでに「生えて、伸びる」までサイクルが進んでいた可能性があります。

うちの子のように、フサフサだった髪の毛が後頭部を中心に生後数カ月で全体的に抜けてしまうようなケースは、新生児生理的脱毛、乳児期後頭部脱毛、あるいは両方が重なることが原因としてあり得るということでした。

髪が抜けても「数カ月から約1年以内にまた生えてくる」ため、「頭皮に他の問題がなければ様子を見て大丈夫」と吉田医師。

頭皮の問題とは、例えば、上記の原因より起こりにくいものの、脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)という病気に伴って髪の毛が抜けることがあります。その場合は頭皮が赤くなったり、ふけやかさぶたができたり、汁のようなものが出たり、といった症状があり、こうした場合は受診するのがいいということでした。

また、非常に稀なものとして、外胚葉形成不全症(がいはいようけいせいふぜんしょう)のように、生まれつき髪の毛が作られにくいような病気もあるということです。こうした場合も、歯や爪、汗のかき方に症状が出るため、原因はなんにせよ、やはり受診が望まれます。

総じて個人差が大きいため、脱毛以外の症状がないのであれば、吉田医師は「少し長く2歳ごろまでは様子を見るようにおすすめしています」とします。

取り急ぎ、他の問題のない我が子は、次の毛が生えて来るのを見守ることに。後ろ向きに抱っこしているときなど、大きな脱毛部分が目立ちますが、本人は今日もいたって元気に大暴れしています。

【連載】親になる
人はいつ、どうやって“親になる”のでしょうか。育児をする中で起きる日々の出来事を、取材やデータを交えて、医療記者がつづります。

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