連載
#247 #withyou ~きみとともに~
「不登校の原因一つじゃない」 若者支援のNPO「彼らの本音聞いて」
「ひとりひとりが学ぶためにも、公立の学校に柔軟な学びの場を」
冬休みが終わり、通常の学校生活に戻った子どもたちがいる一方、休み明けから学校に行きづらくなる子どももいます。2021年度には不登校の中高生の数が過去最多を更新。孤立する若者をサポートしているNPO法人「D×P」は、不登校のきっかけはさまざまで、「いくつかの悩みが折り重なっている」と指摘します。大人には何ができるのでしょうか。子どもたちのアンケートの声から考えます。
LINEチャットなどを通じて、10代を中心とする子どもたちの相談に乗ったり食糧支援を行ったりしているNPO法人D×P。担当者は、この時期は「学校に不安を抱える子から『冬休みの間に親族に学校のことを聞かれて気持ちがしんどくなった』という声が寄せられたり、冬休みが終わる直前に『学校に行きたくない』と連続してメッセージがきたりすることもあります」と言います。
受験シーズンでもあることから、進路が決まらない焦りを訴えたり、受験費用の工面ができずに希望通りの受験ができないつらさを訴えたりする声もあるそう。
一方、D×Pの担当者は、「不登校のきっかけは、人によって様々で、多くの場合はいくつかの悩みが折り重なっています」とし、家庭環境の悩みも不登校とは無関係ではないケースがあると指摘します。
「家庭環境が悪く、安心して受験勉強に集中できない」「学費が未納であることが分かり、卒業できないかもしれない」――。いずれも実際にD×Pに届いた声です。
「学校だけでなく、家庭環境の変化やトラブル、家族との不仲などによって、ストレスから体調不良、不登校へとつながる場合もあります」と担当者。そのため、「不登校は、ひとつの原因を取り除けば解決できる問題ではないと感じています」。
D×Pでは学校に関しての子どもたちの本音を知る一助にしようと昨年8月、13~25歳を対象に「学校・教育に関するアンケート」を実施しました。
そこで回答を寄せた307人のうち、「学校に行きづらいと感じたことや、行かなかったことはあるか」という問いに「はい」と答えたのは全体の87%。
きっかけを複数回答可で聞くと、「友だちのこと」(141)が最多で、次いで「勉強のこと」(137)、「自分の病気やけが・体調」(118)、「先生のこと」(115)と続きます。
アンケートでは、「行きづらくなったきっかけ」について、自由記述で回答する項目も設けました。
勉強にまつわる内容もありました。「きっかけの一つとして課題が終わらなくてしんどかったこと。怒られたくない、どうしてみんなと同じことができないんだろうと思っていた」(18歳)。「勉強がとにかく嫌になった」と記した16歳や、「テストがつらかった」という16歳もいました。
友人関係で悩んでいたという声も多く見受けられました。「いじめられた」という訴えの他にも、「4人のグループで、3人対1人になってしまったから」(17歳)、「仲良くしていた友人グループに無視されたから」(19歳)、「恋人を友人に取られた」(年齢不明)など、ギクシャクした人間関係が原因で、学校への行きづらさを感じたという声も多くありました。
また、「頭では行かないといけないとわかっていても、心と身体がいうことをきかなくてやるせない気持ちだった」(15歳)など、理由が明確になる前に、心身がつらくなっていたと答える人もいました。
「よくわからないけどお腹がじんわり痛かった」という18歳は、「『よくわからないけど学校に行きたくない』という感情を理解されなくてつらかった」「『絶対に何かある』と決めつけられて、それで詰問されるのがいやだった」と綴っています。
D×Pの担当者は、子どもを支える大人たちに「まずは、子どもが安心して気持ちを打ち明けられる関係を作ってほしい」とメッセージを送ります。「アドバイスや指導をする前に、彼らの本音を聞いてみてください。10代は学校や教育の課題にも気づいています」と指摘します。対話を重ねる中で「お互いに得られる学びがあると感じます。学校の教員の方にはぜひ生徒から学ぶことを意識してほしい」と話します。
その上で、2021年度には不登校の小中学生が過去最多の24万4940人となった現状を、「画一的な学校のあり方は限界を迎えていると思います」とします。
発達障害があり周囲と同じように学ぶことが難しい場合、家庭に余裕がなくフリースクールに通えない場合、体調の波があり通学が困難な時がある場合……それぞれ適切なサポートは異なるといいます。
「家庭の経済状況にかかわらず、ひとりひとりが学ぶためにも、公立の学校に柔軟な学びの場を用意していく必要があります」と訴えています。
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