連載
#7 親になる
誤解していた「授乳が大変」〝タイムリミット20分〟は「根拠なし」?
幸いなことに、すくすくと育っていく我が子。成長曲線の上限あたりを推移しています。2カ月を越えると、その栄養源であるミルクを飲む量も増えてきました。
我が家では、引き続き主に在宅勤務をしている私が、日中に搾母乳と人工ミルクで授乳する機会が多くあります。
私はこれまで「授乳が大変」と聞くとき、ミルクの「準備が大変」なのだと思っていました。しかし、実際に自分がやってみると、そこには誤解もあったことに気がつきました。
泣いたり、飲みたそうな素振りをしたりする子ども。哺乳瓶を咥えさせ、いざ飲みだしたものの……10mlも飲まないうちにイヤがったり、キャッキャと遊び飲みをしだしたり。哺乳瓶の角度や寝かせる、抱っこする体勢など、いろいろ試してみても、飲み進めてくれないときはぜんぜんミルクが減りません。
大前提として、赤ちゃんが飲みたくないとき、発育が順調なら無理に飲ませる必要はないとされます。
とはいえ、イヤがった10分後に急に飲みたがったり、飲みたいのにまだ上手く飲めないためにパニックのようになったり、ずっと飲まないままでいたためお腹が減って寝ぐずったりと、赤ちゃんの「飲みたい」のニーズを汲み、応えるのが難しいことも事実です。
もちろん、ミルクの“飲み”は赤ちゃんにより個人差が大きいので、そこまで困らなかったという親御さんもたくさんいらっしゃると思いますがーー。
赤ちゃんの気分により振り回される授乳。時間があれば根気よく付き合えばいいものの、難しいのはタイムリミットがあることです。
考えてみれば当たり前のことで、一度、口をつけたミルクを長時間にわたり放置するのは不衛生で、食中毒のリスクもあります。そして、廃棄の目安は短いもので20分、おおむね30分以内とされているようです。私自身、自治体の両親学級で、20~30分と指導されました。
うちの子どもの場合、月齢に見合った量を20分で飲み切れることは5回に1回あるかないか。だからこそ1回にどれくらいの量を準備するかで悩むことになります。小分けに準備すれば上手くいくかと思いきや、瓶をチェンジする間に飽きて飲まなくなってしまったり、現実問題として温めや調乳の負担が倍に増えたりします。
また、小分けにしたときに限ってまたたく間に飲みきり、足りないとギャン泣きされること、ならばと次の小分けをあげるとそれはひと口しか飲まず、親側が頭を抱えることも。
これもある意味では「準備が大変」なのですが、そのひと言では片付けられない難しさがありました。それを体験せず、「そんなの、小分けに準備すればいいじゃん」などとパートナーに言い放つようになっていたら……考えるだけでおそろしいです。
可愛い我が子のため、もとより飲み残しを“長時間にわたり放置”するつもりはないのですが、ちょっと気になることも。それが、このタイムリミットの20分や30分という数字がどうやって決まっているのか、調べてもはっきりとした出典がわからなかったことです。
【連載】親になる
人はいつ、どうやって“親になる”のでしょうか。育児をする中で起きる日々の出来事を、取材やデータを交えて、医療記者がつづります。
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