自宅で筋トレをする人も増え、「自重トレーニング」にあらためて注目が集まっています。腕立て伏せはポピュラーな自重トレーニングですが、いくつかのポイントを押さえると、より“効かす”ことができるそう。プロに教えてもらいました。(withnews編集部・朽木誠一郎)
話を聞いたのはトレーナーの相山慶太郎(
@keitaro1202 )さんです。駿河台大学男女駅伝部ストレングスコーチで、自身も現役の短距離選手であり、2022年の全日本実業団選手権の男子マイルリレー走者として優勝するなど、活躍しています。
自分の体重を活用した自重トレーニング。より効果的にする方法はたくさんありますが、その中でも今回紹介する「スロートレーニング」は、筋トレの初心者にもおすすめだと言います。
スロートレーニングとは、筋肉に力を入れっぱなしにしながらゆっくりと動作する筋トレの方法。比較的、軽い負荷でも、ゆっくりと動作することで大きな筋肥大・筋力増強効果を得ることができるとされます。
筋肉、そして関節への負荷が小さいことから、ケガのリスクを抑える筋トレの方法として期待されているのです。動作方法は指導者によりさまざまですが「3~5秒かけて上げて、3~5秒かけて下げる」というのが一般的です。
これに「ノンロック」という手法を組み合わせると、より効果的です。ノンロックとは、腕立て伏せでは、腕を伸ばしきらずに再び腕を曲げるという動作。腕を伸ばしきると力が抜けてしまうため、それを避けることで、さらに力を入れっぱなしにできます。
こうした物理的な刺激と、力を入れっぱなしにすることによる筋肉内の化学的な変化による刺激で、より高い負荷で筋トレをしたときと同等の効果が得られると考えられています。
相山さんはまず、腕立て伏せのポイントについて、以下の4点を説明します。
①頭からかかとをまっすぐに
「腰を反りすぎたり腰が上がりすぎることで、本来、狙いたい部位への負荷が落ちて、ケガのリスクもアップしてしまいます。お腹を締める意識で、頭からかかとまでが一直線になるようにしましょう」
②手のつく位置は肩の下に
「横から見たときに、手のつく位置が肩よりも前や後ろにならないように注意してください。手の位置が変わると、大きい筋肉で鍛えやすく、初心者の方にもおすすめの大胸筋ではなく、三角筋前部や上腕三頭筋に効いてしまいます」
③目線は少し前に
「キツくなってくると、目線が下がりがちです。そうすることで背中が丸まり、効果的なフォームが崩れてしまいます。視線を手と手の間から少し上に向けて、三角形の頂点を作るイメージにするとグッドです!」
④フォームが崩れるまでやらない
「追い込みたいときほど、フォームが崩れてがむしゃらになってしまいがち。これも効果的にトレーニングができず、ケガのリスクがアップするので、NGです。
目標回数に届かず、フォームが崩れそうになったら、難易度を落としてとにかくフォームを重視するようにしてください。キツくなったら膝をついて行うといいでしょう」
その上で、相山さんはスロートレーニングのポイントとして、以下の2点を説明します。
a. リズムを一定にする
「一定のリズムや時間で動くことで、負荷がかかり続けるので、より追い込めます。リズムが崩れてしまったら、一度、休憩して、少しフレッシュな状態で行うととても効果的です」
b. 難しい場合は片道でもOK
「上下のリズムを一定にすることが難しければ、下げるとき、もしくは上げるときのどちらか片方でも、十分に高い効果を得られます。
下げるときは体全体が完全に地面につくまで、ジワジワと下げられるとグッド。上げるときは体全体が完全に地面についた状態から腕を伸ばせるとグッドです。ただし、それだけ負荷は高くなるので、自分の体と要相談で行ってください」
記者が実際に体験すると、普段の腕立て伏せよりずっと少ない回数で、腕がプルプルする感覚がありました。
ポイントを押さえれば、自宅でも、自重でも、もっと“効かせ”られる筋トレ。健康維持のためにも、ぜひ生活に取り入れてみてください。