連載
#8 Y2Kと平成
なぜいま厚底ブーツ? ギャルブランドEGOISTのスタッフに聞く
1990年代後半にギャルブランドとして一世を風靡したEGOIST。2000年ごろに流行したY2Kファッションのリバイバルで、EGOISTでも厚底ブーツが売れているといいます。なぜ、Y2Kファッションや厚底ブーツが若い世代に注目されるのでしょうか。EGOIST運営会社のスタッフやショップ店員に聞きました。
EGOISTは1990年代のギャル文化を牽引したブランドの一つで、渋谷109で働く「カリスマ店員」もブームになりました。99年の新語・流行語大賞のトップテンには「カリスマ」が選ばれ、当時のEGOISTのカリスマ店員が授賞式で登壇しました。
EGOISTを運営するアパレル会社「エルベン」で広報を担当する桜井美樹さんによると、ここ4、5年で再び厚底ブーツが人気だそうです。
今シーズンの厚底ブーツは4種類。フェイクレザーのニーハイブーツ、編み上げのひざ丈ブーツとショートブーツ、そしてニット素材のひざ丈ブーツです。いずれもソールが4㎝前後、ヒールは10〜11㎝です。
渋谷109店の店員・安丸未来さんは、高校卒業後に入社して約6年。90年代のギャルブームを直接知っているわけではありませんが、高校生のころからギャルが好きで、EGOISTの店舗に通っていました。
「見た目もそうですけど、接客してくれるときの自信ある感じが本当にかっこよかったんです。『芯のある女性』というオーラに圧倒されました」
自分の意思をしっかり持っていて、ぶれないーー。そんなギャルに憧れたといいます。
安丸さんからみた厚底ブーツの一番の魅力は、「スタイルアップして見えるところ」。
お店でブーツを買い、気に入ってそのまま履いて帰る人もいるといいます。渋谷109店の店長の経験もある桜井さんは「お出かけ前に自信をつけるためにはくというか、『武装』して行く感じなのだと思います」と話します。
当時を知る母親が中高校生ぐらいの娘と一緒に来店し、おそろいで買っていくこともあるそうです。
かつてのギャルは、金髪で小麦色の肌、濃いめのメイクにミニスカート、厚底ブーツという「わかりやすい見た目」でした。
ですが、いまは「ギャルも多様化している」と桜井さんは指摘します。肌が白い『白ギャル』も、お化粧がそれほど濃くないギャルもいるといいます。
「ただ、見た目のギャル度は違っても、『自分らしさという芯をしっかり持ちたい、自信を持ちたい』というマインドは変わっていない気がします」
SNSでインフルエンサーのファッションをチェックして「みんなと一緒だから安心」と思うのではなく、「みんなと一緒」を打破するためにY2Kファッションのアイテムを身につける。そんな「マインドギャル」が増えていると桜井さんは分析します。
同社には、当時のブームを知るスタッフもいます。
人事課の鈴木絵美さんは渋谷109で出会ったEGOISTの店員に憧れて入社し約20年。当時は、「マイクロミニワンピースに厚底ブーツ」「シャツとエルメススカーフのような柄・素材のミディスカートに厚底ブーツ」といった合わせ方をしていました。
やはり、「抜群にスタイルがよく見えるので自分に自信をもつことができた」そうです。
なぜまたブームなのか。鈴木さんはコロナ禍との関連を指摘します。
「コロナ禍の不安やステイホームによるSNS利用時間の増加もあり、当時のファッションの明るさが多くのZ世代の琴線に触れ、流行したのだと思います」
【連載】Y2Kと平成
いま流行している「Y2Kファッション」。街中でルーズソックスを履いている高校生を見かけることも珍しくありません。広い層に2000年代の出来事や空気感への興味・関心が高まったこの機会に、当時の世情を振り返り「現代社会」を考えます。
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