連載
#7 Y2Kと平成
平成ブーム、ソックタッチも売れている? 「提供し続ける責任」
「タイミングが来たときにはお客様の役に立ちたい」
今年流行った「Y2Kファッション」。2000年代周辺ファッションのリバイバルを指しますが、その代表格ともされるのが、ルーズソックスです。当時、ルーズソックスがずり落ちないように止めてきた「ソックタッチ」は、令和の今、Y2Kの流行の影響を受けているのでしょうか。ソックタッチを販売する白元アース(東京)に聞きました。
ソックタッチが生まれたのはいまから50年ほど前。一時生産を止めた時期もありましたが、当時から製造を続けているのは白元アース(東京)です。
白元アースによると、ソックタッチにはこれまで2度のブームが訪れています。
一度目は1970年代。ミニスカートが日本に上陸し、若い女性たちが好んではいたのはハイソックスでした。当時は、ポロシャツにミニスカートにハイソックスという「ハマトラ(横浜トラディショナルの略)ファッション」が流行し、ハイソックスをしっかり止められるソックタッチは重宝されました。
二度目は1990年代。ルーズソックスの大流行にあわせて、復活しました。
そして、Y2Kファッションがトレンドになっている現代。
全国に469店舗を展開するチュチュアンナ(大阪市)によると、昨年比でルーズソックスの売り上げは6倍になっているといい、ルーズソックスにも流行の波が訪れているようです。
ではソックタッチはというと、「微増、という感じですかね」と話すのは、白元アースでソックタッチを担当しているマーケティング戦略部部長補佐の竹内陽子さんです。
1年ほど前から、「取り扱いを始めたい」「店頭でお客様の関心を呼ぶため、POPなどの販促グッズがほしい」といった声がかかるようになってきたといいます。問い合わせがあったのはこれまでも取引があったところではありますが、「出荷状況がいいな」と感じる程度には売り上げも上がったといいます。
私は2000年代なかばに高校生でしたが、その頃はまさにクラスメートの多くがソックタッチを持っていた時代。現在、10代への取材も続けていますが、いまは「みんなが持っている」というほどの流行は感じません。
それについての竹内さんの考えは「1990年代の第二次ブームのときは、みんなが一様に同じファッションをしていましたが、いまは多様になっている。アイテムとして注目は確かにあるけれど、誰もがこれを持っているという時代ではないのかなと思います」。
一人一人のファッションが多様になっていることに加え、「Z世代には、その日の気分などでスタイルを変える特徴がある」と指摘していたのは電通プロモーションプラスの堀かおりさん。「この日は『韓国風』の淡いコーディネート、この日はY2Kファッション……など、気分やその日会う友人に合わせて変え、ひとつのスタイルだけにこだわりません」と話します。
そんな時代のソックタッチの使い方について竹内さんは、「自分が使いたいときに使ってもらうのがいいと思っています」と話します。
第二次ブーム後、「靴下だけだと、広がりの限界があるので」と、違う用途でソックタッチを利用できないかいくつか提案したこともあったといいます。
「肌と衣類を密着させる」という特徴を生かし、「かがんだときに胸元が見えないようにするために使えないかと提案をしたりしましたけど…やっぱり靴下を止めるものですよね」と竹内さんは笑います。
ソックタッチはある種、靴下のトレンドに売れ行きが左右される商品。常にたくさん売れ続けるわけではない商品を続ける苦労もあるのではないかと聞くと、竹内さんはこう答えてくれました。
「時々注目されるソックタッチですが、唯一無二の商品です。その商品を守りつつ、タイミングが来たときにはお客様の役に立ちたい。『提供し続ける』という責任もあるのかなと思います」
現在、ソックタッチはドラッグストアやコンビニ、ディスカウントストアなど全国で販売されています。
【連載】Y2Kと平成
いま流行している「Y2Kファッション」。街中でルーズソックスを履いている高校生を見かけることも珍しくありません。広い層に2000年代の出来事や空気感への興味・関心が高まったこの機会に、当時の世情を振り返り「現代社会」を考えます。
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