連載
#149 ○○の世論
岸田内閣の不支持率57%…それでも「超低空飛行」を続ける理由
自民支持層の内閣支持率、なお63%
あわただしい年の瀬。岸田文雄内閣の支持率が、朝日新聞の電話世論調査(12月17、18日実施)で31%に下がり、最低を更新しました。11月は37%だったので、かなりの急降下です。
不支持率は57%で、こちらは10年前に自民党が政権に復帰してからの3代の内閣で最も高くなり、不人気ぶりが際立ちます。
ですが、首相に代わってほしいという世論は、それほどではありません。この落差のわけを探ってみました。(朝日新聞記者・磯田和昭)
岸田首相は今回調査の直前に、防衛力の抜本的な強化のため1兆円あまりの増税が必要だという考えを示しました。この方針には「賛成」が29%にとどまり、「反対」が66%を占めました。
「反対」という人の中で見ると、内閣不支持が7割にのぼり、唐突ともいえる防衛増税が支持離れの大きな要因になったことがうかがえます。
回答者の半数弱を占め、ボリュームの大きい「無党派層」で支持模様を見ると、ここでも内閣不支持が67%と高くなっています。
一方、自民支持層の内閣支持率は11月の68%からは下がったものの、なお63%と高く、岸田政権の足元が一気に崩れていくような局面ではなさそうです。
閣僚のドミノ辞任などもあって、政権の信頼が揺らいでいるのは間違いありません。
そこで今回調査では、いつもの内閣支持・不支持に加えて、「岸田首相にいつまで首相を続けてほしいか」という質問を、四つの選択肢を挙げて聞いてみました。選択肢には「続けてほしくない」も入れました。
結果は、「2024年9月の自民党総裁任期まで」が33%と多く、「できるだけ長く」という人も14%いました。
「続けてほしくない」という回答は32%ですが、これは内閣不支持の57%よりは、かなり少ない数字です。
そこで、内閣不支持と答えた人が、「いつまで」と思っているのかデータを見てみました。半数あまりが「続けてほしくない」を選んでいるのですが、「総裁任期まで」が25%、来年5月に首相の地元広島で開かれるサミットまでを選んだ人も18%います。
また、自民支持層に絞って、「いつまで」の回答分布を見ると、「できるだけ長く」が23%、「総裁任期まで」が45%と、それなりの厚みがあります。
「首相にいつまで続けてほしいか」の質問に続いて、「岸田首相の次の首相には誰がふさわしいと思うか」、自民党総裁選への出馬経験があったり、「ポスト岸田」と取りざたされたりしている6人の名前を挙げてたずねました。
「この中にはいない」という選択肢も設けました。これがないと、野党の支持者らが質問に答えにくいためです。
結果はなんと、「この中にはいない」が37%と一番多くなりました。
名挙げで最多は、昨年の総裁選で岸田首相に敗れた河野太郎デジタル担当相ですが、それでも24%にとどまっています。自民支持層に絞って見ても、回答者全体と比べて支持模様に大きな違いはありません。
高市早苗氏は経済安保担当相、林芳正氏は外相と、それぞれ現職閣僚です。また、茂木氏は党幹事長として、いずれも記者会見などでメディアに登場する機会がそれなりにあります。
水面下はともかく、表だって「ポスト岸田」を争うような局面にはない。一般の有権者は、答えるとしても、ざっくりとしたイメージでしか答えられないうえに、どういう政治家なのか、そのイメージさえ十分には持てていない。
つまり、衆目の一致する「ポスト岸田」候補が浮かばないから、政権運営への不満が高まる中でも、岸田首相に「続けてほしくない」という回答は、危険水域までには高まらない――。
超低空飛行でも、当面、何とか墜落を避けられそうな世論の結果といえそうです。
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