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「デカデカで派手派手」な道の駅の〝謎〟遊園地にホテル、温泉も併設

なぜ道の駅に観覧車やジェットコースターが見えるのか。そもそもここは道の駅なのか。
なぜ道の駅に観覧車やジェットコースターが見えるのか。そもそもここは道の駅なのか。 出典: 我妻弘崇

目次

西日本最大級の「道の駅」が兵庫県にある。そこには遊園地にホテル、温泉までも併設されていて――。あまりにも「デカデカで派手派手」すぎる道の駅は、いかにして生まれたのか。その来歴を紐解いてみると、「そもそも道の駅とは何か」という根本的な問いへの答えも見えてきた。(ライター・我妻弘崇)
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西日本最大級の道の駅とは

「ウソみたいだろ、道の駅なんだぜ、これ」

思わずそんなことをつぶやいてしまうほど、バラエティに富んだ巨大な道の駅が、兵庫県神戸市北区大沢町にある。神戸市の中心地である三宮・元町エリアから車で30分ほどでアクセスできる道の駅「神戸フルーツ・フラワーパーク 大沢(おおぞう)」だ。
 
我妻弘崇撮影
我妻弘崇撮影
敷地面積は35ヘクタールを誇り、その大きさは東京ドーム……失礼、甲子園球場の約9倍にのぼるほど。といっても、この道の駅、単に「広い」だけではない。

ヨーロッパの古城のようなホテルがあるかと思えば、遊園地やゴーカート、温泉、神戸モンキーズ劇場(猿まわし劇場)、バーベキュー場、ドッグランなどを有し、もちろん飲食店や直売所も併設する。

まるでテーマパークのような施設群と規模を誇り、道の駅と呼ぶには、あまりにもデカデカで派手派手すぎるのだ。車が出入りする入場ゲートは、分厚い“壁”のよう。
 
我妻弘崇撮影
我妻弘崇撮影
“進撃の道の駅”である。だが、こうした多様なレクリエーション施設と西日本最大級の広さが話題を呼び、2017年3月にオープンした「道の駅神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」は、今ではじゃらんの「道の駅ランキング」でも西日本上位の常連になるほどの人気道の駅に。

コロナ禍によって来場客数は減少したが、それでも年間100万人以上が訪れる近畿圏を代表する道の駅として君臨する。

それにしても――。なぜこれほどまでに大きな道の駅が誕生したのか? もっと言えば、テーマパークのようなこの施設を、「道の駅」と認定してもいいのか? 気になる点は多い。

そもそも「道の駅」とは、24時間無料で利用できる駐車場・トイレなどの「休憩機能」、道路情報、観光情報などの「情報発信機能」、観光レクリエーション施設などの地域振興施設で地域と交流を図る「地域連携機能」……これら3つの機能を備えている施設のこと。

22年8月現在で、日本全国に1198駅が設置され、「道の駅」を設置する場合は市町村が、国土交通省道路局に申請し登録する。ということは、この規格外の道の駅の持ち主は、神戸市ということか!?

「もともと、『道の駅神戸フルーツ・フラワーパーク大沢』は、1993年にテーマパーク『神戸市立フルーツ・フラワーパーク』としてオープンしました。農業振興を兼ねて神戸市が運営していました」

こう背景を説明するのは、神戸市経済観光局農水産課・丹羽雄亮さん。神戸市北区は、観光地として人気を博す海沿いのエリアと違い、観光の客足が遠かった。

六甲山がまたがる里山エリアの北区や西区を知ってもらう玄関口として、「神戸市立フルーツ・フラワーパーク」はオープンしたという。もともとここは、テーマパークだったのである。
 
※赤く囲まれた場所が神戸市北区大沢町。北区の北部に位置する。

なぜテーマパークから変遷?

開園当初、「神戸市立フルーツ・フラワーパーク」は160万人が訪れるほどの人気スポットだった。しかし、「1995年に発生した阪神・淡路大震災によって風向きが変わりました」と丹羽さんは続ける。

「バブル崩壊による不況も重なり、入場者数は年々減っていきました。冬季のイベントとしてイルミネーションを開催するなど、入場者を増やす方策に取り組むなかで、再編にむけ、2012年度に有識者による活性化検討会を開き、フルーツ・フラワーパークの果たすべき役割や機能、市の公共負担などを再考しました」(丹羽さん)

その結果、ホテルを民間事業者に譲り渡すことなどが決まった。一方で、どうすれば施設全体が負の遺産にならないか、考えあぐねていた。

「ホテルを売却した平成26年に、国交省から道の駅に関する機能拡充についての新たな考え方が提示されました。新たな考え方の下であれば、この施設は道の駅としての役割を担っていけるのではないかと考えました」(丹羽さん)

先述したように「道の駅」を設置する場合、3つの機能が求められる。だが、丹羽さんの言葉を借りるなら、この考え方に基づく新しい取り組みは3つの機能に加え、「産業振興など新たな機能を拡充することで、地方創生の拠点となるような先駆的な道の駅の取り組みを募集し、支援する」というものだった。

つまり、単に「休憩」して、町の「情報」が得られるだけではなく、地域の発展につながるような複合的な拠点としての道の駅の設置をバックアップする――、「重点 道の駅」と呼ばれる施策が始まったタイミングだった。

「フルーツ・フラワーパークは、六甲北有料道路の大沢ICを降りて、すぐの場所にある好立地でした。再編を考えるなかで、気軽に立ち寄ってもらえるよう入園料を無料にするといったことを決めていました。また、もともと農業振興に力を入れていたので、国交省の新たな考え方と合致するところが多々ありました」(丹羽さん)

実際、道の駅「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」内には、無菌室内でウイルスフリー化させたイチゴ、ユリの培養苗を活用した苗作りを行い、育ったものを農家に卸すといった取り組みを行っている施設もある。これは、「神戸市立フルーツ・フラワーパーク」時代から行われているものだそうだ。

フルーツ・フラワーパークを再建すべく、国交省に応募すると、見事、平成26年度「重点 道の駅」35か所の一つに選ばれた。

余談だが、この26年度の「重点 道の駅」を皮切りに、その後、「特定テーマ型モデル 道の駅」(中山間地域及びその周辺地域において、「道の駅」が公共交通モード間の接続拠点となっており、接続機能向上の取り組みにより、現時点で地域住民の生活の足の確保に資する成果をあげているケース)など、道の駅の機能拡張化が始まる。令和3年には、「防災 道の駅」として39 駅を初めて選定している。

国交省のホームページには、こう説明がある。

“都道府県の地域防災計画等で、広域的な防災拠点に位置づけられている「道の駅」について「防災道の駅」として選定し、防災拠点としての役割を果たすための、ハード・ソフト両面からの重点的な支援を行うこととしています”

これは、広さや備蓄といった点を考慮した際、「道の駅」が防災の拠点になりえると判断してのことである。道の駅は、「通過する道路利用者へのサービス提供の場」 から、「地域の課題を解決する場」(「重点 道の駅」など)を経て、「災害時でも機能する場」へと、時代に応じてその役割を拡張し続けているのだ。

「かつての道の駅は、休憩をしたり、食事をしたりする“立ち寄る”だけというイメージだったと思います。しかし、今は目的があって、そのために道の駅を訪れる局面に変わってきています」(丹羽さん)

「重点 道の駅」という枠組みができたからこそ、負の遺産になりかけていたテーマパークは、地域のハブになりえる地方創生の拠点として、第二の人生を歩むことになった。

リニューアルした「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」は、来場者数が150万人まで戻るV字回復を成し遂げる。もちろん、この背景には、“地方創生の拠点となるような取り組み”があったからこそだ。
 

「三セク」まかせにしない座組み

我妻弘崇撮影
我妻弘崇撮影
同道の駅内にある、直売所やフードコートが入る「FARM CIRCUS」を運営する、北神地域振興広報担当の吉田彰さんが説明する。

「一般的に道の駅は、第三セクターの企業が入り、自治体とともに運営していくというイメージが強いと思います。しかし、『神戸フルーツ・フラワーパーク大沢』は、地域の方も参画し一緒になって運営しています」

端的に言えば、「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」は、次のような座組みで管轄しているという。

「土地の所有者である神戸市、施設内にあるテナント(遊園地や外部企業など)・駐車場などの管理を行う第三セクターの神戸農政公社、そして地域の連携やイベント運営などを行う我々、北神地域振興の三者から成り立っています」(吉田さん)

道の駅化するにあたり、「情報提供機能」や「地域連携機能」を強化すべく、神戸市はこのポジションを担える存在を公募。選ばれたのが、北神地域振興だった。

実はこの北神地域振興、フルーツ・フラワーパークが道の駅に生まれ変わると決まった際、地元の方々が出資して生まれた会社だという。つまり、ここは神戸市と神戸市の第三セクターと地域の人たちで運営している道の駅ということになる。

『神戸フルーツ・フラワーパーク大沢』がある神戸市北区は農村地域なので、少子高齢化や新規就農者の所得向上といった課題を抱えています。思い入れのある場所ですから、地元に根を下ろす地域住民が農業振興のために手を挙げた結果、採択されました」(吉田さん)

吉田さん自身、種まき・苗の植付けといった農業体験や、移住相談窓口を設ける地域の拠点施設「一十土」を経営し、関係人口を増やすために奮闘する一人だ。

「もっと多くの人に神戸の里山エリアの魅力を知ってほしい」。そうした願いを持つ人々が集まり、「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」を地域創生の拠点にすべく、日夜、知恵を絞っている。地域の思いが宿っているからこそ、この駅の道は人を惹きつけるのだろう。

「我々は、『地産地消を遊ぼう!』を合言葉に、地域の農家や食の6次産業化をバックアップするために何ができるかを考え、それを道の駅に来る皆さんと共有できればと考えています。

今年は、神戸商工会議所と連携し、まだチャレンジ段階にあるような新商品を『FARM CIRCUS』で3カ月間テスト販売するといった取り組みも行っています。チャレンジの芽を育てていくことも、『神戸フルーツ・フラワーパーク大沢』の役割なんです」(吉田さん)

実際、「FARM CIRCUS」を訪れると、その県産品の数々に驚く。地場の野菜や果物をはじめ、麺類(香港麺もある!)、乳製品、総菜……ソース文化圏の神戸らしく多種多様なソース類など、見ていてまったく飽きない。

「地元のものだけど、神戸に暮らしている方にも発見になってほしい」と吉田さんが言うように、ここが神戸市の海側と山側のあらゆるものが集まる交易点になっている。

まるでスーパーマーケットに来るような感覚で、神戸に暮らす人々が「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」にやってくる。その一方で、大阪や京都からはテーマパークを楽しみに大勢の人が来訪する。この道の駅が、広大でバラエティ豊かなのには、理由があるのだ。

テーマパークでありながら地域創生の拠点。「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」へ行くと、道の駅の可能性を感じることができる。

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