ネットの話題
Z世代も顔文字使う?「古いという認識ない」 ガラケー時代から進化
自分らしく感情表現を表現したい。でもスピーディーにね
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自分らしく感情表現を表現したい。でもスピーディーにね
11月、キーボードアプリ「Simeji」の運営会社「バイドゥ」が、今年のZ世代のトレンドを調査した結果を発表しました。年間トレンドに、芸人なかやまきんに君の元気な掛け声『ヤー!パワー!』が選ばれる一方、顔文字のトレンドも発表されました。絵文字やスタンプ機能なども豊富になる中、顔文字というと一昔前の感情表現のようにも思いますが、Z世代も顔文字を使うのでしょうか。
Simejiは若者に人気のキーボードアプリで、文字盤の着せ替えや、定型文の選択といった機能があります。
例えば定型文の選択では、フリマアプリのやりとりで多用する文言や、ビジネスの場面で使う言葉を選べます。他にも、顔文字を自作できる「顔文字メーカー」などもあります。
アプリのダウンロード数は5000万を超えますが、ユーザーの8割がZ世代だといいます。
バイドゥでSimejiの運営を担当する山岸千夏さんは、「ユーザーが何を考え、Z世代の間でなにが流行っているのかを定量・定性的にみながらプロダクトを運営している」と話します。
「Z世代をはじめとする若者からは、おもしろくかつ効率よく自己表現したいという欲求を感じます」と山岸さん。それを可能にさせ、かつ「使っていて楽しい」ことを目指しているのだそう。
Simejiでは10月27日~11月13日、アプリ内で10歳から24歳を対象にユーザーアンケートを実施し、トレンドアワードとして発表しました(有効回答数は6895人)。
記者が気になったのは、「ヒト」や「モノ」など複数設けられた部門の一つに、「推し顔文字」があったこと。顔文字には「一昔前にはやったもの」というイメージがあったからです。若者と顔文字との関係について、山岸さんに尋ねてみました。
――35歳の私にとって顔文字は、携帯電話(ガラケー)時代によく使われていた感情表現の一つという認識です。その後、絵文字やスタンプが豊富になってきたため、いまの若者も顔文字を使っていることに驚きました。
Z世代は顔文字を古いものとは認識していないと思います。
というのも、Z世代の親が⻘春を過ごしたガラケー時代にトレンドとされていた顔⽂字と現在のZ世代が使う顔⽂字は特徴が違うからです。
最近は、顔文字の中に絵文字や記号を入れるとか、特殊フォントを使ったりしています。
一方で、親世代が使⽤しているような、記号だけで作られたような顔⽂字は、古いと認識しているようです。
若年層で使っている人は多い印象がある一方で、みんなが使っているわけではなさそうです。
――私の方でもZ世代の何人かに話を聞いてみたのですが、「友達の中でも使う子は1人か2人。日常的に使っている場合もあれば、おもしろがって使っている人もいる」(都内の大学1年生)といった声や、「自分では一切使わない。自分の周りの大学生も全然使っていない」という声もありました。一方で、広島県の大学1年生の女性は「顔文字は受け手に解釈の幅を持たせられる気がして使い勝手がいい」と、親や友だちに限って使うこともあるそうです。
ある特定の年代がみんな使っているというよりは、特性によるという感じかもしれません。例えば、「二次元」が好きな子や、推し活をしているような子はよく使っています。
推し活に関しては、「推し」のライブ配信のコメント欄などを見ていると、顔文字の使い方に特徴があることが、顕著にわかります。
――テキストでのコミュニケーションをするとき、スタンプや絵文字の種類も増えてきて、それだけでもかなりの表現ができるのではとも思うのですが。
顔文字を使う最大のメリットは、自分をより豊かに表現できるところだと思います。
オリジナリティーを表現したい子にとっては、絵文字・記号・特殊文字などを自由に組み合わせて様々なパターンの表現ができる一つの手段だと思います。
――顔文字でなら、より豊かに自己表現ができると。
Z世代は多様性を尊重し、⾃分らしさを表現するという点を重視しています。
相⼿に⾃分の感情を適切に伝え、⾃分らしさを表現することがZ世代にとって「質の⾼いテキストコミュニケーション」になるのではないでしょうか。
逆に、感情の機微や⾃分らしさをスピーディーに表現できず、相⼿に⾃分を伝えにくいものは質が低いコミュニケーションとして、Z世代に受け⼊れられづらい傾向にあります。
――なんと。スピーディーさも重要ですか。
⽣まれた頃からSNSがある環境で育ち、⽣粋のデジタルネイティブなZ世代にとって、ソーシャルメディアが⽣活の⼀部になっています。
TwitterなどSNSで感動や嬉しさをリアルタイムで共有し⼈との繋がりを広げることもあります。
その際に、⾳声ではなくテキストで感情を表現することが多いように感じます。
――スピーディーさを重視するなら音声では?と思ったりも。
確かにボイスコミュニケーションは、すぐに⽤件を伝えることができるため緊急性の⾼い内容の伝達には適しています。ですが、声だけだと表情が⾒えず、感情が伝わりにくいことも多いため、⾃分らしさや感情を表現するという点ではテキストコミュニケーションの⽅が適しているのかもしれません。
さらにテキストは記録に残るので、⾒返す時にも便利ですよね。
――なるほど。「自分らしく感情表現を表現したい。でもスピーディーにね」という思いが垣間見えます。
Simejiでは、オリジナルの顔文字を作れる機能として「顔文字メーカー」の提供を始めています。
このサービス開発の元となったのは、ユーザーから届いた「こんな顔⽂字を作ってほしい」というリクエストや、「顔⽂字を作りたいけど、どう作ったらいいのかわからない」という声でした。これらの声からも、「自分で表現したいけど、手間をかけたくない」という気持ちを感じました。
ユーザーの要望を受けて開発した「顔文字メーカー」は、ユーザーがSNSでよく使⽤している⼈気の顔⽂字について分析。その上で、⼿間を避けたいという特徴のあるZ世代に合わせ、顔⽂字を構成するパーツをタップするだけで、オリジナル顔⽂字が作れるように⼯夫しました。
実際にSimejiを使ってみて、顔文字の種類の豊富さに驚きました。私は2006年に大学生になったときに初めて携帯電話を手にしましたが、その頃見かけた顔文字と、いま使われている顔文字を比較すると、山岸さんがおっしゃるように絵文字や特殊フォントとの組み合わせがかなり多様化しているように思います。
山岸さんが繰り返した「Z世代は自分らしく表現したい」という言葉。表現に対して貪欲な世代なのかもしれないとは、TikTokやインスタグラムを見る中でも感じます。特に、既存のものをアレンジする力が優れているようにも思います。
これについて山岸さんは「Z世代は⽣まれた頃からSNSがあるからか、動画の編集制作や写真のアレンジなど⾼い編集技術をもっており、コンテンツを⽣み出し発信するということがとても上⼿です」と評価し、「編集や制作が日常の一部になっている」と指摘します。
では、SNSという場を離れたとき、デジタルネイティブ世代はどんな表現を生み出していくのか、そこに興味を持ちました。
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