連載
#22 特別じゃない日
コーヒーに挑戦した女子高校生 祖父が見せたさりげなくて優しい行動
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「コーヒー」に込めた思いを聞きました。
「私もそろそろ慣れとかないとなーって。友達と出かけたときみんなフツーに飲んでるからさあ」
祖父母に頼んでコーヒーを淹れてもらい、初めて飲んだ女子高校生。
その苦みに思わず顔をしかめます。
すると祖父は、黙って冷蔵庫から牛乳を取り出し、自分のコーヒーに牛乳と砂糖をたっぷりとそそぎます。
孫娘「おじーちゃん、めっちゃ砂糖入れるんだね!」
祖父「こっちのほうがうまい」
孫娘「私もそうしよっかな~」
孫娘がごきげんで帰った後、祖母が祖父に笑って問いかけます。
「お砂糖とミルク入ったのはどうだった?」
「……いつものでいい」
祖父は孫娘のために、甘党のふりをしたのでした。
初めてのコーヒー飲料は、グリコさんの「カフェオーレ」でした。
今でこそコーヒーはブラックでがぶがぶ飲んでいますが、当時はあの甘い「カフェオーレ」でも、とても苦く感じ休憩をはさみながらちびちび飲んでいました。
ただ、今思い返すとその苦かった経験は覚えているのですが、いつその苦さを克服したかは覚えていないのです。
いつの間にか平気になってしまっていました。
大人になるのは意外とあっけないものかもしれませんね。
◇
〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化され、7月に第2集「特別じゃない日 猫とご近所さん」が発売された。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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