連載
#52 どうぶつ同好会
11月11日=チンアナゴの日! 意外と知らない「ひれ」や「個性」
けんかも引っ越しもします
11月11日は「チンアナゴの日」。砂の中に埋まっている部分の方が長くて、「ひれ」があって、けんかや引っ越しもする……そんなチンアナゴの魅力や個性を、すみだ水族館(東京都墨田区)の飼育スタッフに聞きました。
「チンアナゴは警戒心が強い魚です。人の足音や動きに反応して、引っ込んでしまう個体もいます」
そう話すのは、4年前からチンアナゴの飼育を担当している松田健治さんです。
ペンギンやクラゲ、数々の魚を展示するすみだ水族館では、「チンアナゴ」のほか、近縁の「ニシキアナゴ」「ホワイトスポッテッドガーデンイール」の3種類を計200匹ほど飼育しています。
いずれも巣穴からひょこっと顔を出す姿がかわいらしい人気者です。松田さんが、3種類それぞれの特徴を説明してくれました。
チンアナゴ:白い体に黒の斑点があり、大きな黒い斑点が五つある。そのうち一番下にあるおなか側の模様に「おしりの穴」があり、排泄(はいせつ)する。丸い顔で、正面から見た顔が犬の狆(ちん)に似ていることが名前の由来。全長は30~40センチ。
ニシキアナゴ:オレンジに白のしま模様。尾っぽにいくにつれてしま模様が細くなる。顔は面長でとがった顔つき。全長は30~40センチ。
ホワイトスポッテッドガーデンイール:茶色に白の斑点がある。顔はニシキアナゴと同様に面長。全長は3種類の中では一番長く、60~70センチ。
日本動物園水族館協会によると、チンアナゴは協会に加盟する140園館のうち39園館で、ニシキアナゴは31園館で、ホワイトスポッテッドガーデンイールは2館で展示されています。
チンアナゴと言えば砂から顔を出している姿が印象的ですが、全長は30~40センチ。普段、砂から出ている体の長さは、全体の3分の1から4分の1だそうです。
ということは、砂の下はどうなっているのでしょうか?
「自然界では体の倍近い長さの穴を掘ります。基本的には中はくねくね蛇行しながら入っています」
「しかし、水族館では飼育管理の関係で水槽の砂の厚さを15~20センチ程度にしているため、斜めに入っていたり、横になっていたり、いろんなバリエーションがあります。たまにV字に入っている個体もいます」
巣穴を作るとき、チンアナゴはゆらゆら体を左右に揺らすことが多く、ニシキアナゴとホワイトスポッテッドガーデンイールは体を回転させながら固めていることが多いといいます。
3種類とも、尾っぽの先から粘液を出して砂を固めます。たまに巣穴の引っ越しをしますが、引っ越しした後の穴はしばらく固まって残っていることもあるそうです。
「『ひれ』にも注目してみてください」と松田さんは話します。
「魚なので、よーく見ると背びれや胸びれがあります。『チンアナゴは魚なの?』と聞かれますが、背中のひれを見ると魚と認識していただけると思います。個人的に好きなポイントは、目の下あたりにある小さな胸びれです」
背びれはチンアナゴよりも、ニシキアナゴとホワイトスポッテッドガーデンイールのほうが大きいそうです。
その2種類は、けんかをするときに背中のひれを体と一緒に震わせて怒りますが、チンアナゴは背中のひれをあまりつかわず、口を開けて相手をにらみつけます。
体が太く長い個体は、「あまり引っこまず巣穴からよく顔を出している印象」があるそうです。
毎日午前1回、午後2回のご飯の時間が近づくと、3種類とも体を長く出して待っている様子が見られるといいます(時間は非公表)。
1/13枚