一方で、五明さんには「一人で何かを生み出せることをしないといけない」という思いがあった。それはCM制作とも、また異なると話す。
「ラジオCMはそれはそれでめちゃくちゃ楽しいんですよ。でも、CMって流れる期間が決まっているので、半年、1年で消えてしまう。そこにちょっと寂しさがあって、一人でずっと残るものを作れないかなって。あと、ゼロからイチを作れて、すべて自分で完結できるもの。それがマンガを描くということでした」
五明さんは、友人のマンガ家・山本さほさんの勧めもあり、同じく友人のアーティスト・
imaiさんとともに体験した免許合宿を、『39歳の免許合宿~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~ 』と題して、Twitterで公開する。
五明さんはマンガについてはまったくの素人だった。コロナ禍で芸人としての仕事が激減し、描き始めた絵。じわじわとファンを拡大した同作は、その後、同人誌即売会「コミティア」での販売とオンライン販売を経て、ついにはワニブックスからメジャー版がリリースされるまでに成長した。
参考:『39歳の免許合宿 ~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~』
とはいえ、長年やってきた芸人の仕事とは違う、どう着地するかもわからないジャンルだ。五明さんはマンガを描こうというモチベーションを、どうして保ち続けることができたのだろう。そう尋ねると「描かなきゃいけないと思ったからです」という、シンプルな答えが返ってきた。
「やってみるとわかる発見って、やってみないとわからない。当たり前の話なんですけど。例えば、何もない白いコマに、線を一本引いたら空間になる。それに気が付いたとき、『すげえな』って思ったんですよ(笑)。
芸人が舞台でコントをしているときって、僕らは基本的に正面しか見せることができないじゃないですか。でも、マンガは、360度どの視点からでもその舞台を描くことができる。自分で作ることができる面白さにハッとしたんです」
だからこそ、「ストーリーは自分(てめぇ)で創れ――なんですよ」と劇中に登場する、屈指の名言を持ち出して、笑いながら伝える。
「トリオの仕事が少ないとか、コロナ禍とか、制限がある中でも、できることってあるじゃないですか。それを行動に起こすか、起こさないか。起こしてみると、そこに青春があった(笑)。だから、何歳になっても青春はあると思います」