連載
#62 「きょうも回してる?」
ガチャガチャは環境負荷? カプセルも中身もSDGsな〝アイデア〟
SDGsな中身とは…。
プラスチックのカプセルに入ったプラスチックの商品…。ガチャガチャにはそんなイメージがあります。ところが最近、段ボール製のカプセルの中に、SDGsな商品が入ったものも誕生しているそう。ガチャガチャ評論家のおまつさんが取材しました。
ガチャガチャは、毎月約350種類の新商品が売り場に並んでいます。
私は市場調査として全国の売り場に行き、「売り場のお店がどのような店舗作りをしているのか」、「どんな商品が売れているのか」を見ることがとても大事だと思っています。
時たま、「おっ、これは面白い!」と思わせる商品があります。これこそ、売り場を見る醍醐味です。
今回、東京・浅草にあるガチャガチャ専門店「ガチャ処」で、ダンボールで作っているカプセルを見つけ、早速お話を聞きにいきました。
このダンボールのカプセルを作っている会社は「ぺパポン」(千代田区)。ダンボールのカプセルも社名と同じくぺパポンです。
ぺパポンの特徴は二つ。
一つ目はリサイクル率ほぼ100%のダンボール素材を採用していること。
二つ目が、組み立てはすべて福祉作業所で行っていることです。
日本ではダンボールの回収率が95%となっているほか、古紙利用率もほぼ100%。ぺパポン代表の横田敬之さんによると、リサイクル時も金属や樹脂のリサイクルのように高温で溶解させるなどの環境負荷の大きい工程はないと言います。
これは、社会全体が現在、高い関心を抱いているSDGs(持続可能な開発目標)の17目標のうち、12番目の目標(つくる責任、つかう責任)に当てはまるそうです。
また、福祉作業所と共に障がい者支援への取り組みについては、SDGsの8つ目の目標(働きがいも経済成長も)に当てはまり、「福祉作業所では、やりがいを持って働いてもらえていて、仕事が楽しいと言ってくれています」と横田さん。
また、横田さんはぺパポンの組み立てを誰もができるように、組み立て工具などを日々開発しているそうです。
ぺパポンは、まさにSDGsのゴールに合致したカプセルと言えます。
ぺパポンを作ることになった、きっかけについても聞きました。
横田さんはかつて、電子部品・電子機器パーツの専門店でプラスチックのカプセルに入った電子部品をガチャガチャに入れて売っていたことがあります。その際、購入後に店内で商品が開封され、中身だけが持ち帰られ、カプセルが店内に置き去られる光景を目にすることがありました。
「カプセルも持ち帰ってもらうためにはどうしたら」――。
そこで考えついたのが「ペパポン」でした。
容器をダンボールにし、捨てずに持ち帰ってもらえれば、「環境に優しい」というメリットがあるのではと考えたそう。
その後、展示会などでぺパポンを紹介しつつ、ぺパポンに興味を持ってもらえる会社と出会ったことをきっかけに、今年8月から販売をスタートさせました。
今回はぺパポンを使った「コオロギガチャ」と「たねポン」を紹介します。
コオロギガチャは、コオロギフードなどを扱うMNH(調布市)とペパポンのコラボ商品。コオロギを含む昆虫食は栄養素が豊富であり、昆虫の飼育は環境への負担が少ないと言います。
また、地球に優しいエコ食材で代替タンパク質としても注目されSDGsを代表する食材だそうです。国連も昆虫食を推奨しています。コオロギガチャは、SDGsのテーマにあったガチャガチャだと言えそうです。
味はピザ味、ソース味、カレー材などがあります。
横田さんが「乾燥コオロギなので食べやすいですよ」と勧めてくれたので、恐る恐るコオロギのカレー味を食べてみました。
「うんっ? 食感がサクサクして、カレーの味で美味しい! お酒にあう!」。
カプセルの中には、コオロギの魅力や昆虫食を面白く学べるリーフレットが入っているなど工夫がありました。
次に紹介するのは、「たねポン」です。
種子の輸入・販売をてがける「グリーンフィールドプロジェクト」とのコラボガチャガチャです。たねポンの中には有機種子が入っており、なんとぺパポン自体が植木鉢になります。
カプセルの器と蓋に付属の耐油脂を敷き、片方のカプセルにヤシガラとたっぷりの水を入れるそうです。栽培期間は7〜14日。
種子は、ブロッコリー、ヘルシーミックス、赤ラディッシュ、ガーデンクレスの4種類です。
横田さんは「今回は初級編。中級編、上級編も企画しています」と、今後の展開も明かしてくれました。また、たねポンのなかには、「たねポンで自由研究」と題して観察記録の用紙も入っているので、「子どもたちの自由研究にお薦めです」。
今後は、昆布茶が一回分入った「お茶ガチャ」を予定しているそう。
横田さんは「現在、原材料価格が高騰していて大変ですが、まずはぺパポンを多く流通させていきたいですね。そして、ぺパポンの新しいガチャガチャを作っていきたいです」と話してくれました。
横田さんの話を聞く前は、どうしてもSDGsは堅苦しいイメージでしたが、横田さんが語るぺパポンの魅力、カプセルとしてのペパポンに入っている商品の魅力を聞いているうちに、SDGsは楽しく、面白いという考え方ができるようになったと感じました。
ガチャガチャ業界では現在、プラスチックのカプセルがほぼ100%であり、お客様は商品を目当てで購入します。
そのため、業界初のダンボールで作られたカプセル、ぺパポンのブランド力を高めることが重要であり、ぺパポンに賛同してくれる企業が増えれば、業界に変化をもたらすことが可能になるかもしれません。ぺパポンの今後に期待です。
◇
「コオロギガチャ」、「たねポン」は1回500円。
1/10枚