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連載

#4 Y2Kと平成

接客は〝なくなる仕事〟? 20年前に登場したヒト型ロボットの現在

約20年前に発売された“ヒト型サービスロボット”、どんなもの?
約20年前に発売された“ヒト型サービスロボット”、どんなもの? 出典: 朝日新聞社
今から17年前の2005年9月に富士通から発表された「ヒト型サービスロボット」。開発の目的は「少子高齢化による将来の労働力不足を補う」ことでした。接客業はこうした機械化により“なくなる仕事”と言われることがありますが、その後、実際にはどうなったのか。当時の新聞記事や資料から紹介します。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎、金澤ひかり)
 
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「ペッパーくん」の10年前に登場

お客に敬礼するロボット店員「エノン」君=札幌市西区のイオン発寒ショッピングセンターで、2006年11月4日撮影
お客に敬礼するロボット店員「エノン」君=札幌市西区のイオン発寒ショッピングセンターで、2006年11月4日撮影 出典: 朝日新聞社
<2005年12月2日の朝日新聞朝刊紙面から>

富士通が開発したヒト型ロボット「enon(エノン)」が1日、千葉県八千代市のイオン八千代緑が丘ショッピングセンターで25日間の「パート勤務」を始めた。(中略)高さ130センチで「いらっしゃいませ」とあいさつしたり、胴体部分の液晶モニターと音声でトイレや喫煙場所を案内したりする。商品を運んだり、ゴミを捨てたりできるかどうかも試す。富士通は1体約600万円で売り出している。


富士通フロンテック株式会社と株式会社富士通研究所が17年前の2005年に発表した、このヒト型サービスロボット「enon」。丸い頭、胴体に内蔵されたモニタは、いかにもロボット然とした見た目です。

サービスを目的としたヒト型ロボットには、他にソフトバンクの「Pepper(ペッパーくん)」がありますが、その誕生は2014年6月。それよりも約10年前の製品でした。

当時のリリースによると、「搬送用ロボット、清掃用ロボット、監視用ロボットなどの専用のロボットとは異なり、一台で案内・誘導、搬送、巡回・見回りなどの多様な活動ができる先進的なロボット」だったそうです。

自律走行や​​最大10kgまでの荷物の搬送、片腕で0.5kgまでつかんだり手渡したりすることができるハンドリング、​​胸部のタッチパネルつき液晶モニタ、顔部の目と口に配置したLEDによる表情の変化など、現在も時折、商業施設などで見かけるヒト型サービスロボットと遜色ない機能が搭載されていました。

日本ロボット学会誌24巻3号「サービスロボット『enon』の開発」(2006)によれば、少子高齢化による将来の労働力不足を補うため、さまざまなサービス業務を代行する目的で開発されたということ。

「enon」とは、an exciting nova on network(ネットワークの躍動的な新星)の頭文字をとったもの。今ではIoTという言葉も浸透しましたが、当時は「ネットワークと連携する」こと自体が、商品の大きな売りになっていたことがうかがえます。

一方、その値段は参考価格で1体約600万円とかなり高価だったようです。その後、enonの販売は人知れず終了となりました。似たコンセプトの三菱重工の家庭用ロボット「wakamaru(ワカマル)」も、同様に普及はしていません。

21年には、pepperがその前年から生産を一時的に中止していることがわかり、大きなニュースになりました。

このように、汎用的なサービスに対応するヒト型ロボットの普及は、この20年の経緯からみると、まだ遠いということがわかります。「接客」のような複雑な仕事は、今しばらく人間のもののようです。

ただし、この間に例えば「掃除ロボット」はすでに普及し、またコロナ禍においては外食産業やカラオケなどにおいて、「配膳ロボット」の導入がなされています。

「enon」が目指したところとは異なりますが、こうした「専用のロボット」により、人間の負担が減り、人間にしかできない仕事に集中できる、というのが、現時点での方向性になることでしょう。

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いま流行している「Y2Kファッション」。街中でルーズソックスを履いている高校生を見かけることも珍しくありません。広い層に2000年代の出来事や空気感への興味・関心が高まったこの機会に、当時の世情を振り返り「現代社会」を考えます。

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