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「大人が読ませたい本」は怪しいゾ かいけつゾロリが35年続く理由

原ゆたかさんが語る〝読むべき本〟は

「かいけつゾロリ」シリーズは、「説教くさくなっていないか」気をつけて書いているという作者の原ゆたかさん
「かいけつゾロリ」シリーズは、「説教くさくなっていないか」気をつけて書いているという作者の原ゆたかさん

目次

読書の秋。10月27日から、「秋の読書推進月間」も始まります。でも、子どもたちにどんな本を読ませたら良いのでしょう。大人が子どもに「読んでほしい本」と、子どもが「読みたがる本」はいつも、少しかみ合いません。子どもたちから熱烈な支持を集め35周年を迎えた「かいけつゾロリ」シリーズ。作者の原ゆたかさんに、子どもが読むべき本、子どもの読書への想いを伺いました。

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「楽しい」を否定していない?

本は、「娯楽」のためにあるというのが、私の考え方です。

私は小さい頃、読み聞かせをたくさんしてもらったこともあり、もともとは本が好きな子どもでしたが、小学校に入って自分で本を読むようになった頃、先生やまわりの大人からすすめられた本をがんばって読みきってもおもしろくなくて、本が嫌いになった時期がありました。それから私は、「大人が読ませたいと思う本」はあやしいぞ、と思うようになりました。なぜなんでしょう。

大人は買い与える立場なので、せっかくなら文字が多くて知識が増え、勉強の足しになるような本であって欲しいと思う気もちはわかります。

でも、みなさんが本を読むとき、「さあ、今日は勉強してやるぞ」と思って読むでしょうか。実用書はともかく小説は楽しもうと思って読むはずです。なのに、子どもの本だけはこうして勉強のために読まされるのです。楽しいはずがありませんよね。

そこで、私は自分が今小学生だったらこんな本が読みたかったという本を書きたいと思いました。

少なくとも私のような小学生なら、読んでくれるにちがいないと思ったからです。

そうして書きはじめた「かいけつゾロリ」も今年で35年、70巻をこえました。

ここまで書かせてくれたということは、私のような小学生がいっぱいいてくれたという証明なのではないでしょうか。

うれしいことに、最近大人になったかつての読者に「かいけつゾロリ」が本を好きになるきっかけになったと言われることが多くなりました。

子ども時代を思い出して

ゾロリは、いたずらの王者を目指し、特技は変装とおやじギャグとおならです。

子どもたちはいたずらが好きですし、ちょっと悪いことに憧れることもあります。

自分がやったら怒られることを本の中でゾロリがやってみせることでスッキリすることもあるでしょう。

そして、ゾロリのいたずらは最後には必ず失敗するので、<悪いことはうまくいかない>というお話になっています。

ところが、大人になると、おならやおやじギャグだけを見て、すぐ「くだらん」とひとことでかたづけてしまいがちです。

自分が好きで読んでいるものをくだらないと否定した人がすすめてくる本をあなたは読みたいと思いますか?

それよりも、子どもの気にいっているものを、いちど、ちゃんと読んでみてほしいのです。

お父さんも子どものころ、おならでわらったな、こんなおやじギャグいっていたなあなどと、どこか自分の気もちに共感してくれるものがあれば、この人がすすめてくるものならおもしろいかもしれないと、子どもは興味をもってくれるのではないでしょうか。

「好き」はコントロールできない

子どもの将来に不安を感じる親心も十分に理解はできます。

ストレートでいい大学に行かせてあげたい、将来、楽をさせてあげたい気持ちはわかりますが、はたしてそれがその子の本当にやりたかったことなのでしょうか。

私は学校という場所は社会に出る前に自分は何に一番興味があり、やりたいのかをさがしだす場所だと思っています。

いくら全ての教科でいい点がとれたとしても、将来それがやりたかったことにつながらなければ意味がありません。

しかし、それは自分自身でみつけださなければならないので大変です。

その子が感銘をうけるのは人かもしれませんし、音楽かもしれない、一本の映画やゲームかもしれない。どこで出あうかは、大人はそれをコントロールできないけれど、見せたり体験させたりとチャンスはいっぱいつくってあげられるはずです。

サイン会などで、「ゾロリ」を読んでくれている子どもたちに好きな作品をきいてみると、「ようかい」好きや「メカ」好き、「きょうりゅう」好きや「食べ物」好き。千差万別です。

話してみると、その子の好きな物や傾向が浮かびあがってきます。そんな時、その好きなジャンルの私がおもしろかったと思う本や映画やマンガをすすめてみます。そこからその子の好きにぶつかってくれたらいいなと思うからです。

子どもは、好きなものがみつかり夢中になると、その吸収力はすごいものです。

野球選手や囲碁や将棋のプロになる人にしても、子どもの頃に興味を持ったことをまわりの大人たちがちゃんと理解して応援してあげた結果、才能が開花することがたくさんありますよね。

私も幸せなことに、子どもの頃から絵が好きで、ずっと描き続けさせてもらい、お勉強はイマイチでしたが今の仕事につながっています。

その子自身が、興味を持ったものに共感してあげて、そこからどんどん興味を深めさせてあげたり、広げ伸ばしてあげることが子どもたちの将来を幸せにするのではないかと思います。

ノウハウ、大人側の視点

「生活習慣を教えるための絵本がはやっていること」に対して、記者さんから意見を求められましたが、生活習慣を学ぶのは、本来は絵本からではなく周りの人とのかかわりからだと思うのです。

本来、子どもは生まれて数年しかたっていないので、驚いたりいらいらした時には声を出したり、急に走りまわったり、野生的なのが普通だと思います。

小さい頃からそういう部分をおさえられて、大人社会のルールをむりやり教えこまれた、大人にとって都合のいい子をいい子とする社会のほうが危うい気がします。あとでそれがその子のストレスにならないかが心配です。

生活習慣は文字通り、普段から、「おはよう」とあいさつを交わしたり、人の嫌がることはしないなど、基本的なことは子どもは周りの大人の態度から学ぶのです。人とのかかわりの中で自分で会得していくことが社会で生きるための勉強です。

「こういうときにはこうしましょう」「こんな場面ではこう言いましょう」と本に書いてあるから覚えましょうでは、応用がききません。実際の人間関係ではその都度考えて対応しなければならないのです。

それよりももっと大人が子どもと実際にかかわることで学ばせてあげるものだと思います。

ご安心ください。まわりを見ても、「おしり、おなら」とさけびながら走りまわっている大人は見かけませんよね。どんな子も、いずれかならずちゃんと大人になっていきます。

ですから、子ども時代には、その時にしかできない体験をちゃんとさせてあげてほしいのです。

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