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情熱がギチギチに詰まってる!「87字印鑑」が魅せる超絶技巧に驚嘆

「脱はんこ」の時代に職人が示した意地

1円玉よりも小さい丸枠内に、びっしりと並んだ文字列……。究極の職人技から生まれた、ある印鑑について取材しました。
1円玉よりも小さい丸枠内に、びっしりと並んだ文字列……。究極の職人技から生まれた、ある印鑑について取材しました。 出典: 永江印祥堂のツイッター(@nagaeinsyoudou)

目次

私たちの生活に身近な印鑑。その製作を担う職人たちが、技術の粋を集めて生み出した、とある逸品が話題を呼んでいます。小さな丸枠内に、めいっぱい文字を詰め込んだ特別仕様で、人々を驚かせているのです。生産元企業の関係者に話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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直径1.2センチの枠内でひしめく文章

好評を博しているのは、松江市に本社を構える永江印祥堂の印鑑です。

1円玉よりも小さい、直径1.2センチほどの丸枠。その内側に、9行の文章がひしめくようにして、ぎっちりと詰まっています。内容はこんな具合です。

こんにちは。島根県にある小さなハンコ屋が1.2センチの印鑑の中で限界の文字数に挑戦しています。今回は87文字に挑戦。しっかり読めていますね!これが職人の技術なんです!すごいでしょ。
同社のツイッターアカウント(@nagaeinsyoudou)が12日、紙上に押印し、右横に1円玉を並べた状態で撮った写真を投稿。すると「『職』の字を掘るのに骨が折れたのでは」「激しく萌える」といったコメントが殺到しました。
押印済みの紙をアップで撮影した画像。画数が多い「職」の漢字も、はっきりと印刻されていることがわかる。
押印済みの紙をアップで撮影した画像。画数が多い「職」の漢字も、はっきりと印刻されていることがわかる。 出典:永江印祥堂のツイッター(@nagaeinsyoudou)

6人の職人たちが力を結集した

永江印祥堂は1970年に創業し、一貫して印鑑生産を続けています。既存の書体を印章向けに改良した独自書体「永江文字」の開発など、ユニークな取り組みで名を馳(は)せてきました。

同社の担当者によれば、「87文字印鑑」も、そうした施策の延長線上に誕生したといいます。印材に地元・島根県名産の「神楽ひのき」を用いた特注品です。

いわく、印面上の文字の幅は1ミリにも満ちません。機械を使い、太さが異なる複数の針で彫り込まれました。文字データの配列や印刻を専門とする6人の職人たちが、その力を結集したのだそうです。

「『ここに文字を置いてしまうと飛ぶ(押印した際に潰れる)よね』などと、職人同士で話し合いながら、文章の配置や行間の空け方を考えました」。担当者が、作業の様子について振り返ります。

印面を直接見てみると、驚異的に細かい彫り込みに圧倒される。
印面を直接見てみると、驚異的に細かい彫り込みに圧倒される。 出典:永江印祥堂のツイッター(@nagaeinsyoudou)

デジタル全盛の時代に示す存在意義

同社がツイッター上で投稿した印鑑の写真には、18日現在で22万超の「いいね」がつき、4万回以上リツイートされています。これだけの反響があるとは、全く予想していなかったと、担当者は驚きました。

「元々、弊社のスキルを周知する目的で印鑑を作りました。そのため一点物となる予定だったのです。しかし盛況ぶりを受けて、リツイートが3万3千回を超えたのを機に、記念品として33本限定で販売することにしました」

一本5500円(税込)で売り出すと多くの注文が舞い込んだといいます。ちなみに今回の製品は杉の端材を用いた「グリーン印鑑」と呼ばれるもの。圧密加工という特殊製法で木質の柔らかさを克服しており、高い技術力にも注目が集まりそうです。

近年、デジタル化の進展により、「脱はんこ」の流れが加速しています。事業縮小や廃業の憂き目を見る印鑑事業者も少なくありません。苦しい時代だからこそ、自社の存在意義を積極的に示していきたい。担当者は、そう語りました。

「新型コロナウイルス流行に伴う『巣ごもり需要』で、宅配物などの受け取り用に認め印のニーズが高まるといった、明るい話題もあります。世の中に必要とされる限り、これからも印鑑を作り続けていきたいですね」

※永江印祥堂のオンラインショップはこちら(外部リンク)

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