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「お金ないでしょ」ATMの音がつらい…セブン銀行〝神対応〟の秘話

「利用者の主観」でも変更決断した理由

ツイッター上で繰り広げられた、企業の公式アカウントのやり取りが好評を博しています。背景事情について取材しました(画像を一部加工しています)
ツイッター上で繰り広げられた、企業の公式アカウントのやり取りが好評を博しています。背景事情について取材しました(画像を一部加工しています) 出典: セブン銀行のツイッター(@7BankOfficial)

目次

全国各地のコンビニなどで見かけるATM。とあるユーザーがツイッター上で打ち明けた、効果音への感想をめぐる出来事が注目を集めています。設置事業者のセブン銀行(東京都千代田区)が、お礼のメッセージを書き込んだのです。何気ない一言に対して、なぜ敏感に反応したのか。同社の担当者に話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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「ものすごい調査力」驚きの対応

ATMから現金を下ろすときに流れる効果音が、「お金ないでしょ」に聞こえてつらい――。昨年11月、そんな趣旨の感想がツイートされました。

そして約10カ月後の今年9月13日、思わぬ事態が起きました。ATMを設置したセブン銀行の公式アカウント(@7BankOfficial)が、次のように返信したのです。

「当社のATMに関するツイートを受け、新型ATMの操作音を変更いたしました!」

「お客さまに明るい気持ちでご利用していただけるよう検討してまいりましたので、今後お使いの機会に是非ご体感ください」

投稿主がコメントに気付き、一連のやり取りについて拡散すると、多くの人々が注目。「これは神対応だ」「ものすごい調査力」といった反応が相次ぎ、企業側の〝好プレー〟を激賞する声が広がりました。

ツイッター上で話題を呼んだセブン銀行の返信(画像を一部加工しています)。
ツイッター上で話題を呼んだセブン銀行の返信(画像を一部加工しています)。 出典: セブン銀行のツイッター(@7BankOfficial)

「心地よい」効果音のはずなのに…

ユーザーの小さな声に耳を傾け、寄り添う対応が実現するまでに、どのような経緯があったのでしょうか。セブン銀行の担当者を取材しました。

同社では事業刷新につなげるため、自社サービスにまつわるSNS上の投稿を、日常的に調査・収集しています。ATMの効果音関連の意見を見つけたのは、リサーチ役の社員たちでした。

担当者によると、今回のコメントが指すのは、「第3世代」と呼ばれる旧型ATMへのキャッシュカード挿入時に流れるメロディーだと思われます。一方、後継機「第4世代」ATMの効果音についても、以前から改善の要望が届いていたそうです。

「第4世代ATMの効果音には、液晶画面上のアニメーションに合わせて再生されるものがあります。そのため『軽やかさ』『楽しさ』を意識した旋律となっていました」

「お客様からは『心地よい』という声を多くいただいていました。しかし『音を聞くと悲しくなる』といったご意見も、SNS上の一部でつぶやかれていたのです」

個人の見解であっても重視する

第4世代ATMは、首都圏を中心に1万2千台ほど設置されています。現在稼働中の旧型機も、順次置き換えていく予定です。そのため今年1月、ATM開発部署が効果音の再検討を決定。プロジェクトを立ち上げ、9月7日にメロディーを一新しました。

変更されたのは、第4世代ATMから紙幣やキャッシュカード、明細表が出る際に流れる効果音です。これまでよりも明るい音調で、少し反響音を加え、包み込まれるような感覚を演出しました。

「元々のメロディーはピアノ単音で構成され、『落ち着き』『心地よさ』を重視したサウンドコンセプトでした。ただ、その『落ち着き』が暗い印象を与えてしまう懸念があった。そこで、お客様に気持ちよくお取引いただけるようにしました」

厳密に言えば、話題のツイートが指摘した効果音と、実際の更新箇所は異なります。しかし、サービス向上のきっかけの一つになったとして、セブン銀行がお礼の返信を書き込んだのです。

ところで、今回拡散された投稿の内容は、あくまで個人の見解であるとも言えます。文面を見た人々の中からも、「あらゆる要望を受けているときりがないのでは」との声が上がりました。

この点について担当者は「ATMのメロディーや画面デザインへの感想は、確かに利用者の主観が関係している」と認めます。その上で、一部効果音に対し「不穏な印象を持つ」とのコメントが一定数寄せられたため、対応したと説明しました。

セブン銀行の「第4世代」ATM。
セブン銀行の「第4世代」ATM。 出典: セブン銀行提供

ATMならではの事情があった

担当者によると、新メロディーはおおむね好評とのことです。セブン銀行がSNS上の反応を重視する背景には、ATMという機器特有の事情があります。

利用時のトラブルに備え、各筐体(きょうたい)には、インターフォンと呼ばれる音声案内用の受話器が付属しています。しかし通話のハードルが高く、利用に至るケースが限られるそうです。

こうした点から、ユーザーの心情をつぶさに読み取る上で、どうしても困難が生じてしまうのだといいます。

「操作の仕方が分からなかったり、不安があって利用をやめたり……。そんな体験を、当社が把握している以上に、多くのお客様がしていらっしゃる可能性があります。その理由を知る施策として、SNSでのコミュニケーションは大切なのです」

いわく、ツイートを端緒とした事業改善の例には、様々なものがあります。ATMに障害が発生した際の、利用者への情報発信方法の変更などが代表的です。サービスのわかりやすさ、安心感、利便性にまつわる意見には、特に注目しています。

こうした取り組みについて、担当者は「今後も可能な範囲で続けていきたい」と話しました。なお新メロディーは、第4世代ATMでのみ聞くことができます。また第3世代ATMの効果音は、従来のものを継続使用するとのことです。

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