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「果てしなく続く」落書き、たどったら「超大作」 子どもたちの思い
終着地点でにっこりほほえむあの子
子どもがチョークで地面に描いた「果てしなく続く」落書き。こどもの国(横浜市)の「らくがきひろば」に残された超大作がツイッターで話題になりました。話を聞くと、一見〝落書き〟に見える作品の数々には、子どもたちの「今」が映し出されていました。
1枚目には、黄色いチョークで地面に描かれたうねる帯状のもの。これは一体何なのか。画面の奥まで続いていて、全貌が分かりません。
そして2枚目で、ついに「黄色い帯」の終着地点が明かされます。にっこりほほえむ少女の〝髪〟につながり「ラプンチェル」(原文ママ)。
この投稿には「超大作」「ながぁぁぁぁぁぁぁぁ」「よく飽きずに描いたなぁ」「キャンバスがあれば子どもはここまで描きたいものなんだね」と称賛が寄せられ、15万件以上のいいねが集まりました。
この落書きが発見されたのは、神奈川県横浜市の「こどもの国」です。1965年に開園し、約100ヘクタールに雑木林と子どもの遊び場が点在しています。キャッチコピーは「あそびの中に未来がある」。
正面入り口を入ったところで、入園者がまず目にするのが、今回の落書きが見つかった「らくがきひろば」です。
「超大作」が生まれた背景には、広さだけではない仕掛けがありました。
広場には色とりどりのチョークがたっぷり入った箱が置いてあります。折れてるチョークも混ぜて数百本。
使っていい本数などの制限はしていません。〝約束ごと〟は「チョークは、使う分だけ箱から出そう」「使ったら箱に戻そう」「壁・イスにはお絵かきしないでね」など最小限です。
こどもの国の、広報室・岩﨑裕太さんによると「チョークは毎朝補充します」。それでも来園者が多い休日には昼過ぎで「空っぽ」になって、追加補充しに行くこともあるそうです。
入園してすぐ「らくがきひろば」に釘付けになる子どもたちも多く、大人が「早く遊具に行こう」とやきもきする姿は〝あるある〟とのこと。
チョークが出せない「雨の日」には、「今日はチョークないんですか」とがっかりする、落書き目当ての〝リピーター〟もいるそうです。
「『子どもたちに思い切り大きな落書きをしてもらいたい』という思いを受け継いで続けています」
「らくがき」は開園当初は、イベントでした。
広報誌「こどもの国ニュース」によると、チョークメーカーの「日本白墨工業」が協賛し、毎年小型トラック1台分のチョークを提供してくれ、「落書きコンクール」や「落書きをしよう」というイベントを開催していたそうです。
「らくがきひろば」として常設されたのは90年代後半。
交通量や近隣との関係もあり、のびのびと家の前や道路で子どもたちが落書きをする機会は減っているのかもしれません。
「チョークを触って指に色が付くのがただ楽しいという子もいたり、てんっと少し描くだけで満足する子もいます。とにかく、みんなチョークで何かを『描きたい』という思いを感じます」
個人や塾経営者などから「もう使わないので」などとチョークが寄付されることもあります。子どもたちの中にはチョーク自体が珍しいという子もいそうです。
「らくがきひろば」には、そのときの子どもたちの興味や関心、はやりや思いが表れていると言います。
不動の人気キャラは、アンパンマンやドラえもん。でも一時は、鬼滅の刃のキャラクターに押されたこともありました。「令和」を持つ菅義偉元首相の絵があったことも。
岩﨑さんは通りかかるたびに「いまはこれが流行ってるのか」「けっこう、世の中に関心を持って見ているんだなぁ」と眺め、気づきをもらいます。
卒業シーズンには《俺らの友情永久不滅》。父の日には《パパへ 大好き》、《お誕生日おめでとう》。
地面の落書きを写真に撮って、大切な人に送っている子たちがいました。
平和な時、楽しい時の、幸せな絵。そして子どもたちの願いが「絵」ではなく、メッセージでつづられることもあります。
《コロナもうやだ》《コロナはやくおわれ》
《せかいへいわ》《戦争反対》
「落書きは、気持ちを表現して、伝える場になっているんだと思います」と岩﨑さんは話します。
「見ている側も楽しませてくれる。らくがきひろばは、こどもの国の大切な『アトラクション』です」
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