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無名サークルがコミティア行列 「自分(てめぇ)で創れ」込めた想い

©️『39歳の免許合宿 ~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~』ごめたん/ワニブックス
©️『39歳の免許合宿 ~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~』ごめたん/ワニブックス

目次

お笑いトリオ「グランジ」のメンバー・五明拓弥さんによるマンガ『39歳の免許合宿~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~ 』。

同作は、Twitterで公開されるや、じわじわとファンを拡大。その後、同人誌即売会「コミティア」での販売とオンライン販売を経て、ついにはワニブックスからメジャー版がリリースされるまでに成長した。五明さんは、自らそれらのプロセスを一気通貫で行った。

なぜ、芸人が注文や梱包までを手掛けようと思ったのか。「自分(てめぇ)」で創ることの大切さ――その真意を尋ねた。(ライター・我妻弘崇)

>>【前編はこちら】30代最後の年の「免許合宿」 リフレインする青春の甘酸を描き話題に 新人漫画家「ごめたん」意外な正体<<
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コミティア当日、とんでもなことになる

――丸々描き直していく中で、同人誌即売会「コミティア」への参加を決めます。どうして自費出版をしてまで一冊の本に?

元々、一冊の本にしようとは思っていませんでした。SNSだけで終わる予定だったんですけど、またimaiさんとさほさんの3人で会う機会があって。そしたら、さほさんが、「せっかくだからコミティアで出しませんか?」と、また操縦し始めた(笑)。

――もう鉄人28号と正太郎君のような関係だ(笑)。

もう一つ理由があります。そのときimaiさんが、コロナ禍の中で2年間ほど費やして『MONSTERS』というアルバムをリリースしました。デジタルが主流になりつつある音楽業界にあって、『MONSTERS』は「版」でしか発売していない。

その理由をimaiさんに聞くと、レコードとかCDって、それを買いに行くときの思い出とか、届いたときの思い出があると。形があるからこそ、その前後の行動が生まれて、その思い出が音楽にプラスされる。流れていきやすいデジタルと違って、それって尊いよね――その話に、いたく感銘を受けまして(笑)。

だったら形に残して、誰かのプラスの思い出になったらいいなって。それで自費出版で本を作ることを決め、同人誌即売会「コミティア」に参加することにしたんです。でも、何部刷ったらいいのかわからないですから、不安もずっとありましたよね。コストも想像以上にかかったから、「これ本当に売れるのかな」って。
マンガ家「ごめたん」としてデビューしたグランジ・五明拓弥さん。
マンガ家「ごめたん」としてデビューしたグランジ・五明拓弥さん。 出典: 朝日新聞社
――そうした不安を吹き飛ばすように、「コミティア」では開始早々、行列ができるほどの大反響だったんですよね?

ホント、すごかった……あの日は忘れられないです。「コミティア」の2日前くらいかな、描き直して再アップした『39歳の免許合宿』が、Togetterでまとめられていて、バズったんですよ。一日で閲覧者が30万人くらいになったみたいで、さほさんから「(コミティア当日は)とんでもなことになる」と予言されていた。僕はまったく人が来ないフラグだと思っていたけど……。

――良い方向に転んだと。

(頷く)。有名なサークルは、壁側にいるらしいんですけど、僕らは真ん中にいる名もなき初参加のサークル。そんなところに、突如100人くらいの行列ができて。「コミティア」用に300冊刷ったのですが、ありがたいことにすべて売り切れました。

もちろん、諸経費を含むと赤字なんですけど、40歳になってこういう青春があるんだなって感慨深かった。さほさんも新作を用意して、imaiさんもステッカーを作って販売して、3人でサークル『梅ヶ丘ドライビングスクール』として参加する。

係の人がインカムで、「梅ヶ丘ドライビングスクール、たいへんなことになってます」とか言っている(笑)。僕もimaiさんも、行列を見るのが怖くなって、「見るのやめましょう。お金の精算に集中しましょう」と変な汗が出てくる。

免許合宿も青春でしたが、形にして「コミティア」に参加するまでも、なんだか文化祭に出店するみたいな高揚感があって、何歳になってもやろうと思えば青春の場所ってあるんだなって。めっちゃ疲れましたけどね(笑)。
写真提供:五明拓弥
写真提供:五明拓弥

得ることができたのは運転免許証だけじゃない(笑)

――その後、自身でオンライン販売サイトも作る。発送も含めて、全部、五明さん一人でやっていたんですよね?

です。「コミティア」に来れなかった人たちから、「オンライン販売をしてほしい」という声が多かった。マンガ同様、よちよち歩きでネットショップを作って、BASEに登録しました。

実は、吉本から「吉本のサイトで売らないか?」という相談もされました。でも、ここまで自分でやってきたから、純度100%、自分でやりたかった。一日に何時間も同じ体勢でシールを貼り続けるとか、地味な作業もたくさんあるけど、一人でやることがとても面白かったんですよ。

ですから、そういう気持ちを素直に吉本には伝えました。その上でOKをもらって、自分のオンラインサイトで注文を受けて、買っていただいた一人一人に感謝の気持ちを込めて発送してました。

いろいろ大きくなってくると、いろんな意見が入ってくる。ここ数年でそういったことを感じることもあったので、ちょっと一回、とことん自分でどこまで作れるかやってみようと。

――まさに、第2話(DAY2)で教習所の教官から言われた、「ストーリーは自分(てめぇ)で創れ」ですね。

シートベルトとかミラーの微調整のことを聞いただけなのに、そんなことを言われるなんて夢にも思わなかったですけどね(笑)。

でも、結果的に車の運転だけじゃない。教えてくれたのは人生そのものだった。僕は、先述したようにbayfm78で週一回パーソナリティをさせてもらっているんですけど、その都合で、中抜けできる免許合宿じゃないといけなかった。

ほとんどが中抜けNGで、なんとかimaiさんと都合の合う中抜けOKの合宿が、マンガで描いた教習所だった。だから、もし他の免許合宿だったら、その言葉にも出会えなかった。
 ©️『39歳の免許合宿 ~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~』ごめたん/ワニブックス
©️『39歳の免許合宿 ~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~』ごめたん/ワニブックス
――しかも、その中抜けがimaiさんのドラマを生む(笑)。

ホント、得ることができたのは運転免許証だけじゃない(笑)。自分(てめぇ)で創らないといけないと思ったから、マンガにする、じゃあ次はどうする? だったら、形にして同人誌即売会に参加しよう。それもできたからじゃあ次は? 本屋に並んでいるところを見てみたい――。

このマンガは免許合宿のストーリーだけど、「このマンガ自体を成長させていくストーリー」があってもいいと思ったんですよね。そしたら、どんどん転がっていって。

BEAMSのポップアップにしても、「コミティア」に来ていただいた中に、imaiさんの知人であるBEAMSのカルチャートの方がいて、後日お話をさせていただいたところ開催できることになったんです。

――BEAMSのポップアップも、五明さん自ら開催のきっかけを作ったんですか!?

恐れ多くも、ははは。カルチャートの方が、一番最初にアップした赤ん坊状態のときのマンガから見てくれていて、「ぜひ」と快諾してくれたんですよ。
7月8日~18日まで開催された「39歳の免許合宿 at ビームス ジャパン」
7月8日~18日まで開催された「39歳の免許合宿 at ビームス ジャパン」 出典: 写真提供:五明拓弥

世の中がストップしたとき、どうするか

――まさしく一気通貫。コロナって制限下のある生活を余儀なくされているところがあるけど、自分のやる気と人とのつながり次第で、いかようにもなるということを五明さんは体現している。マンガはもちろん、「形」になったマンガを介して、その前後にドラマが生まれている。

本当に全部友だちのおかげなんです。imaiさん、さほさんがいなかったら、描いてないですし、本にもしていない。おかげさまでマンガは好評をいただいているんですけど、YouTubeチャンネル『ごめたんのメジャー流通への道』の再生数は、ひどいもんです。というのも、話がうまくいきすぎて、何の挫折もないように見える。これじゃ面白くないですよ。

――たしかに、冒頭の「どうも、こんちわ」ってあいさつが自信に満ちています。ベテランのそれですよ。

裏では、ものすごい苦労してるんですよ!(笑) でも、夢のような展開が続いているのも事実。

――人生の示唆に富んだ話だと思います。世の中がストップしたとき、何もできないととらえるか、何でもできるととらえるか。見方次第なんだと。

世の中って捨てたもんじゃない。何をやるにしても遅いということなんてまったくないです。なんなら歳を取ってやった方がいいこともたくさんあると思う。

免許にしたって、39歳のおじさんの自分だから準備できたこともあるわけで。歳を取っても、世の中には青春を送ることができる場所って、めちゃくちゃある。そのためにも、「ストーリーは自分(てめぇ)で創れ」なんですよね。
マンガ家「ごめたん」としてデビューしたグランジ・五明拓弥さん。
マンガ家「ごめたん」としてデビューしたグランジ・五明拓弥さん。 出典: 朝日新聞社
©️『39歳の免許合宿 ~ストーリーは自分(てめぇ)で創れ~』ごめたん/ワニブックス
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