連載
#60 「きょうも回してる?」
ガチャガチャ売り場〝戦国時代〟で生き残る…カギは原点の商品開発
売り場を展開し、商品もつくる会社だからこそできること
ガチャガチャ第4次ブームともいわれる昨今。全国的に売り場の拡大も続いています。ただし、その売り場にもやがては淘汰されていくのが世の理――。淘汰されない売り場作りにかかせないものとは。ガチャガチャ評論家のおまつさんが解説します。
コロナ禍の2年半にわたり、ショッピングモールなどの空き店舗を活用してガチャガチャ専門店の出店が相次ぎました。また駅構内など至るところに売り場も出来はじめました。
一時期よりは落ち着きを見せはじめたものの、ガチャガチャの歴史のなかで、今までにない出店ラッシュで第4次ブームとなっています。
ゲオホールディングスのグループ会社が7月に、イオングループ会社が8月に売り場を初めて展開するほか、石川県の金沢丸越百貨店がガチャガチャ専門店を誘致するなど、売り場の拡大は今も続いている模様です。
これだけ売り場が増え続けている状況はまさに、ガチャガチャ売り場の戦国時代と言えそうです。
そこで今後カギとなるのが、 いかに各売り場の特色を出していけるか、ということです。特色が出せない売り場は淘汰されていくことになっていくのではないでしょうか。
売り場の特色を出すため、いち早く差別化に着手してきたのが、名古屋から全国に店舗を拡大しているドリームカプセルです。
ドリームカプセルは店舗を設置・運営している立場でもありながら、メーカーのように商品を企画し販売もしています。
ドリームカプセルの代表の都築祐介さんは、SNSに力を入れることでお客さんと直接交流をしたり、売り場の視点を活かした商品を作ったりするなど、すでに差別化を図っています。
たとえば、今では当たり前のように感じますが、専門店で初めてSNSを積極的に活用し、店舗での販売開始の告知や、商品のサイズ感などを紹介しはじめました。情報発信をし続けた結果、都築さんが自らTwitterで発信する「ドリームカプセルの中の人」のフォロワーは11万人(8月時点)を超えており、業界1位のバンダイの13万人に追いつくほどです。
都築さんにとって、購入してくれるお客さんの視点を第一に重要視しているからこそ、直接お客様に届くSNSに力を入れているのです。
これは売り場作りにも反映されており、商品の品揃えの多さや仕入れの早さが特徴です。商品の品揃えの多さになかに、付加価値を高めるため、都築さん自身がSNSなどでお客さんと交流するなかで、独自で企画した商品がたくさんあります。これが、魅力ある売り場作りにもつながっています
「売り場の視点やお客様の交流から生まれてきた商品は、メーカーさんではなかなか作れないかもしれない。メーカーさんができないなら、僕が商品を作っていきたい」と、都築さん。
魅力ある商品にも、売り場の視点が練り込まれているのです。
今回紹介するのは、そんな都築さんの思いがこもった「青柳総本家 青柳ういろう ミニチュアマスコット(以下、青柳ういろう)」と「名古屋の名店 ミニチュアコレクション」です。
二つの商品は、生まれたときから50年間、名古屋を拠点に人生を送っている都築さんだからこそ誕生した商品だと感じます。
「青柳ういろう」誕生のきっかけについて、都築さんは「明治12年の創業の青柳総本家の本店は、名古屋の御園座の近くにあり、コロナ禍で厳しい状況でした。そこで青柳さんを応援したい思いがありました」と話します。
都築さんにとってういろうは、思い出の味。「給食でういろうが提供されることもあり、僕にとってういろうは、ソウルフードです」
「昨年、2種類の味が復刻し『しろ、くろ、抹茶、上がり、珈琲、ゆず、さくらの7種類の味が揃って販売する』というニュースを見たタイミングでガチャガチャを作りたいと思いました」と話してくれました。
昨年12月に販売した「青柳ういろう」は当初、「名古屋だけしか売れないだろうと思っていた」と都築さん。ところが、ドリームカプセルの渋谷の店舗では、1日半で完売。青柳総本家の店舗で販売したところ「本物のういろうよりも売れたと聞きました(笑)」(都築さん)。反響が大きかったことがわかります。
今でもドリームカプセルの店舗やドリームカプセルのECサイト、青柳総本家の店舗で購入でき、 ECサイトでは「青柳ういろうギフトセット」として販売しており、お歳暮セットのような豪華さを感じさせているところに、都築さんの遊び心が伝わってきます。
次に紹介するのが、「名古屋の名店 ミニチュアコレクション(以下、名古屋の名店) 」。誕生のきっかけは、都築さんが起業する前のサラリーマン時代にあります。
サラリーマン時代、都築さんが勤めていた会社の近くには「スパゲッティハウス・ヨコイ(以下、ヨコイ)」がありました。都築さんはそこでよく、あんかけスパゲッティを食べていたといいます。
「名古屋の人はあんかけスパゲッティを家で食べる人がいるほど、愛着があります。なくなって困るものの第一位は、あんかけスパゲッティです」
そんな愛着と、コロナ禍で厳しい飲食店をガチャガチャで応援したいという思いから、ヨコイに企画を持ち込んだそうです。さらにヨコイから他の飲食店に商品化の話しをしてもらい、都築さん曰く、「『名古屋の名店』はヨコイさんのおかげで奇跡のコラボが誕生しました」と言います。
ラインナップは、名古屋で誰もが一度は食べたことがある、ひつまぶしや味噌煮込みうどんのお店など。都築さんのお勧めはもちろん、あんかけスパゲッティです。
都築さんは「『青柳ういろう』や『名古屋の名店』は、基本的に全国というよりも、名古屋で売れてくれればいいです」と、名古屋愛をもって話してくれました。
昨今の原材料などの高騰などで、ガチャガチャ業界のメーカー側は値上げに踏み切るところもでてきました。
都築さんはこの状況について「店舗運営をするにあたって、仕入れ値があがり利益が取りづらい状況になってきています」と苦悩を語ります。
そんな中で運営を継続するための秘訣は「品揃え」。「店舗運営は、システマチックに運営するノウハウの一方で、独自のものづくりをすることで、『競合他社とは品揃えが違いますよ!』という差別化につなげています」
2022年は、ガチャガチャ業界では第4次ブームになっていますが、メーカーやガチャガチャ専門店にとって今後、今までにない厳しい環境になっていくことは事実です。今後の動向に注視していきます。
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「青柳総本家 青柳ういろう ミニチュアマスコット」は、 しろ、くろ、抹茶、上がり、珈琲、ゆず、さくらの全7種類。1回300円。
「名古屋の名店 ミニチュアコレクション 」は、「スパゲッティハウス・ヨコイ」のあんかけスパゲッティ、「あつた蓬莱軒」のひつまぶし、「喫茶マウンテン」の小倉トースト、「山本屋総本家」の味噌煮込みうどん、「味仙矢場店」の台湾ラーメンの5種セット。1回400円。
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