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「オムツ姿なら大丈夫」子どもの写真SNS投稿…専門家の語るリスク

簡単に個人を特定、親子関係に影響は…

SNS上でたびたび見かける、赤ちゃんの写真。不特定多数の人たちが見るSNS。アップする際に気をつけるべきことは何でしょうか。専門家に取材しました(画像はイメージです)
SNS上でたびたび見かける、赤ちゃんの写真。不特定多数の人たちが見るSNS。アップする際に気をつけるべきことは何でしょうか。専門家に取材しました(画像はイメージです) 出典: =Getty Images

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「生まれたばかりの我が子のかわいい瞬間を、みんなに見てもらいたい」。手軽にSNSが使えるいま、赤ちゃんとの日常を記録した写真を、ネットで目にする機会も多いでしょう。一方で不特定多数がアクセスできるため、思わぬトラブルに巻き込まれることも。SNSにアップするときに気をつけるべきポイントは何でしょうか。SNSの専門家と、子どもの発達の専門家に聞きました。

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子育て中の「心の支え」にも

ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「SNSは、子育て中の人たちが世の中とつながるために大切なツールでもあります。『危ないから使うのは良くない』と一概には言えません」と話します。

というのも、一児の母である高橋さん自身、子育て中にSNSに助けられた経験があったからです。子どもが小さい頃、周りに育児を手伝ってくれる人がいない上、夫は仕事から帰ってくるのが遅く、ほとんど「ワンオペ育児」だったといいます。

「言葉がまだ十分通じない上、寝付きが恐ろしく悪い我が子と一日中一緒。十分に睡眠も取れず、仕事も満足にできないため、メンタル的につらい時期がありました。そんなときに、SNSを通して『お子さんかわいいね』とか、『うちも一緒でした』といった同じ境遇の人たちからのメッセージをもらうと、『つらいのは私だけじゃないんだ』と心の支えになりました」

初めての子育ては、不安もいっぱい。ネットの育児情報の何を信じていいかも分かりませんでしたが、SNSを通して子育て関連情報も入ってくるようになりました。


「SNSでつながったコミュニティで、子育ての先輩から経験談を聞いたり、地域の育児情報を収集したりすることができました。『子どもを遊ばせられる施設が、こんな所にあったんだ』と発見もあり、子どもを連れて行き、自分が一息できる時間も作れました」

SNSも活用次第では、子育て中に、心の支えとなる人とのつながりや、便利な情報を得られます。一方で、高橋さんは、子どもの写真をアップするときの「落とし穴」には必ず気をつけていたといいます。

ITジャーナリストの高橋暁子さんは「SNSは、子育て中の人たちが世の中とつながるために大切なツールでもあります」と話します(写真はイメージ)
ITジャーナリストの高橋暁子さんは「SNSは、子育て中の人たちが世の中とつながるために大切なツールでもあります」と話します(写真はイメージ) 出典: =Getty Images

学校、制服…個人が特定できるもの、写っていませんか

高橋さんが子どもの写真をSNSに投稿していた際には、自分の本名は公開せずに、旧姓のまま、公開範囲を友だち限定にしていました。さらに子どもの名前は投稿せず、顔が判別できるくらい大きくなってからは、写真の投稿自体をやめました。合わせて、子どもにまつわる投稿を検索されないよう、ハッシュタグを付けませんでした。

「個人がネット上で特定できるようなあらゆる投稿はしない、と覚えたほうがいいです。名前を検索すると一発で出てきてしまい、インターネット上に一生残ってしまいます」と指摘します。

不用意な投稿は、個人や住まいを特定され、自宅付近で待ち伏せされるなどの犯罪を招く恐れもあります。将来の進学、就職、結婚などの節目で、関係者に知られたくないことまで調べられてしまう可能性もあるといいます。

また「個人の名前を出していないなら大丈夫」という油断も禁物だと、高橋さんは指摘します。いわく、場所が特定されるような投稿にも注意が必要です。たとえ、家そのものを写していなくても、通っている幼稚園や学校、近所の施設を写してしまったことで、居住地が特定できてしまうためだそうです。

「例えばお宮参りで子どもの写真を撮ろうと思った場合、大きな神社など、多くの人が行くような場所ならOKです。でも、家の近所の神社で撮影した場合、投稿は控えたほうが賢明です。自宅に帰ってきて、室内で撮影するなど工夫するといいと思います」

また、意図せず友人や他の人たちが写り込んでしまったことによるトラブルもあるといいます。「例えば、スタンプで友達の顔を隠したり、顔を出しても良いか許可を取っておけば、トラブルを回避できるでしょう」。さらに、顔が写っていなくても、制服や名札などで名前や通っている学校が分かってしまうケースもあるので、要注意とのことです。

高橋さんは「制服や名札などで名前や通っている学校が分かってしまうケースもあるので、要注意」とアドバイスします(写真はイメージ)
高橋さんは「制服や名札などで名前や通っている学校が分かってしまうケースもあるので、要注意」とアドバイスします(写真はイメージ) 出典: =Getty Images

その写真、子どもの立場だったら嫌ではありませんか

SNS上に子どもの写真を上げるリスクは、犯罪やトラブルに巻き込まれることだけではありません。思春期になってから、子どもが「勝手に写真をアップされるのが嫌だ」と思うようになり、親子関係に影響する場合もあると、高橋さんは語ります。

「海外で10代の娘が、父親を訴えた事件まで起こっています。Facebookで自分の小さな頃のおむつ交換写真などを公開することを『やめて』と言っても削除してくれなかったためです」と高橋さん。

また極端ですが、「#トイレトレーニング」などのハッシュタグを付けて、子どものお尻の写真を公開してしまう例もあるといいます。

「ネット上に一度でも写真を投稿してしまうと、『デジタルタトゥー』といって子どもが大人になってもインターネット上に残り続けます。親と一緒に写っている写真なら、子どもだけに注目が集まらないかもしれない。オムツを履いていれば、性器が隠れているから問題ないだろう。そう思う人もいるでしょうが、写真を公開すること自体が、将来的に子どもの尊厳を傷つけるかもしれません」

「また、体に発疹が出たといった病気に関することや、子育ての悩みなど、将来的に子どもを傷つける内容は投稿すべきではありません」と話します

SNSにオムツ姿を投稿することについて、高橋さんは「オムツを履いていれば、性器が隠れているから問題ないだろう。そう思う人もいるでしょうが、写真を公開すること自体が、将来的に子どもの尊厳を傷つけるかもしれません」と指摘します(写真はイメージ)
SNSにオムツ姿を投稿することについて、高橋さんは「オムツを履いていれば、性器が隠れているから問題ないだろう。そう思う人もいるでしょうが、写真を公開すること自体が、将来的に子どもの尊厳を傷つけるかもしれません」と指摘します(写真はイメージ) 出典: =Getty Images

子どもは所有物ではない


「子どもがかわいいからみんなに見て欲しい」という気持ち。そして、子育ての悩みを打ち明ける相手がおらず「誰か助けて」と思う気持ち。いずれも、子どもへの愛情に基づいています。自分の感情を誰かと共有したくて、我が子の写真をSNSに投稿する人も多いでしょう。

ただ、その愛情が一方的になってはいないか――。

子どもの発達に詳しい小児科・小児神経科医の小西薫さんは、「昔と違って今は核家族化が進み、子育てで孤独を感じている人も多いはずです。社会とつながるために、コミュニケーションツールとしてSNSを利用している人たちもいるので、写真を上げることを頭ごなしに否定はできないなと思います」と話します。

一方で、「子どものことを一人の人格としてではなくて、所有物として見ていないかと不安になります。親心とはいえ、一方的な愛情は子どもにとって本当に良いことなのでしょうか」といいます。

「子どもが自分の思い通りになると思っていませんか。SNSに写真をアップする行為は、その人の子育て観を反映していると思います。日頃『子どものため』と思っていることは、本当にその子の望んでいることなのか、問い直してみてはいかがでしょうか」

子育てにまつわる喜びや悩みを、他人と分かち合える点で、親たちの「救世主」ともなるSNS。ただ、写真をアップする前に子どもの目線に立って、「本当にこの写真はアップしても大丈夫かな」と、一度立ち止まって考えてみることも必要かもしれません。

SNSに子どもの寝姿をアップする保護者もいる(イメージ写真)
SNSに子どもの寝姿をアップする保護者もいる(イメージ写真) 出典: =Getty Images
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【連載・SNS赤ちゃん映え】
SNS上で見かける、赤ちゃんの写真。かわいいけれど、違和感も……。写真を撮りたくなる気持ちって? なぜ写真をアップするのか? 子供の尊厳を侵さず、SNSと向き合う方法とは? 保護者や専門家の話から考えます。

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