連載
#15 特別じゃない日
おばあちゃんが取り出したアルバム 中身は「重要文化財」なのでした
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「重要文化財」に込めた思いを聞きました。
「おばーちゃん どっちがいいと思う?」
孫娘が手にしているのは、バイト先のコンビニに貼り出すために描いた新商品のポップです。
「昔から絵を描くの上手だものねえ」
祖母は孫をほめながらポップを選び、選ばれなかった方のポップを手に取ります。
「もらってもいい?」
「いいよ~ でもどうするの?」
祖母はパタパタと部屋の奥に駆けていき、アルバムを取り出してきました。
中には、孫娘が小さいころに描いた絵や、保育園で作った折り紙などが貼ってあります。
「おじいちゃん、純加ちゃんの大ファンなのよ~」
ちょうど散歩から帰ってきた祖父。
2人の会話を聞いて照れてしまい、なかなか部屋に入ることができず玄関で固まってしまいました。
こちらのお話は単行本「特別じゃない日」の1巻発売後、ツイッターにて「特別じゃない日の幸せ体験談」として読者の皆様から募集したエピソードの中のひとつです。
ご投稿いただいた、ほのぼの様のおじいさまにまつわるお話です。
私の祖父もアルバムやファイルになんでも保管するタイプで、とても共感しました。
自分でも忘れていた作品や写真を、「見るか?」と嬉しそうに引っ張り出してくれる祖父。
そんな祖父と一緒にアルバムを見るひと時が、とても嬉しく幸せです。
◇
〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化され、7月に第2集「特別じゃない日 猫とご近所さん」が発売された。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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