「過去4回改名」のホテル
ネットで「ゲームボーイかと思った」などと書き込まれるデザインは、高度経済成長期に一部の建築家たちにより行われた、「メタボリズム」建築を思わせるものです。メタボリズムとしては、黒川紀章さんの中銀カプセルタワービルが有名です。

他方、このホテルはこれまでに「晴海グランドホテル」「ホテルフクラシア晴海」として運営されていた時期もあり、何回か長期の休業も経験。こうした経緯について、マックスパートに話を聞きました。
同社によれば、デン晴海は当初、リクルートコスモス系のコスモスホテル開発が運営していました。個性的なデザインは建築家の上浪恒さんによるもの。その後、マックスパートの親会社であるカラカミ観光がこれを買収、晴海グランドホテルとしてオープン。運営はマックスパートが行うことになりました。
晴海グランドホテルとしては、ホテル専門誌『週刊ホテルレストラン』の調査で4年連続客室稼働率1位を獲得。その後、ブランド変更に伴う改装再開業のため、2017年10月~18年5月まで休業。その後はホテルフクラシア晴海として運営されましたが、21年3月に一度、閉業を発表しました。
その上で、大和ライフネクストのカンファレンスホテル「L stay & grow」ブランドのホテルとして、マックスパートが引き続き運営する形で、22年6月に再度オープン。このように複雑な経緯をたどりました。

まずはやはり「まるでブラウン管のテレビをたくさん貼り付けたように見える、個性的な外観に惹かれます」とhacoさん。
「勝どき駅から晴海通りを歩いて向かう途中、黎明橋の手前から、近代的なビルとホテルの特徴ある外観が並んで見えるのが面白い。屋上にある、斜めに切り取られたような塔屋もかっこいいです」
hacoさんはフクラシア晴海時代に宿泊したこともあるそうで、当時の内部の様子も教えてくれました。
「ホテルの内装や設備は新しく綺麗になっていて、過ごしやすかったです。竣工当時の痕跡はほとんど見当たりませんでしたが、2階のエレベータ前の照明と非常用誘導灯、駐車場の文字など、一部に名残りを感じました。
四角い窓を内側から見ることができ、どう開くのかわかったのもうれしかったです。押して開けるタイプの窓で、下側が10センチほど開きます」
この50年、手から手へと渡ってきたホテル。逆に言えば、過去の特徴的な建築物が取り壊されていく中、こうして旧デン晴海が引き継がれていったとも言えます。晴海に立ち寄った際は、L stay & grow晴海から、高度経済成長の面影を感じ取ってみるのもよさそうです。
【連載】#ふしぎなたてもの
何の気なしに通り過ぎてしまう風景の中にある #ふしぎなたてもの 。フカボリしてみると、そこには好奇心をくすぐる由縁が隠れていることも。よく見ると「これなんだ?」と感じる建物たちを紹介します。