この「国民皆歯科健診」は、6月2日の朝日新聞の記事では、自民党から政府に働きかけがあり、方針に書き入れられたものとみられています。
唐突だと受け取られた「国民皆歯科健診」ですが、実は2021年10月の衆議院選挙でも、自民党の公約に明記されていました。
「国民皆歯科健診」は各地の歯科医らで構成される政治団体「日本歯科医師連盟」が法制化を訴えてきた内容でもあります。こうした政治的な経緯により、見聞きした人の反発を招いたともみられます。
ただし、自民党の「国民皆歯科健診実現PT」の中心人物は、同じ記事で、義務化については「義務化できるものではありません」「強制ではなく全国民が年一回、歯科健診を受けられたり、受けやすくしたりするのが国民皆歯科健診。その費用は基本的に国が負担していくようにする、というのが狙い」と回答しています。
「国民皆歯科健診」って何? 売り込んだ議員「義務化」は真っ向否定 - 朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/articles/ASQ613QJ6Q50UTFL00W.html
実際には「会社などの定期健康診断に歯科健診を取り入れる」などの案が検討されているということでした。
ここで会社の健康診断は、労働安全衛生法に基づくもので、事業者は労働者に対して医師による健康診断を実施しなければならず、労働者は事業者が行う健康診断を受けなければなりません。項目もあらかじめ定められています。一方、フリーランスなど、その対象にならない人もいます。
もし本当に「国民全員に歯科健診を義務化する」ためには法律などを含めた制度の変更や、対象の拡充などが必要になるであろうことを考えても、現実的には実現のハードルが高いとみられます。
それよりは、ある種のスローガンとして、歯科健診の受診を促していくキャンペーン、と受け取ることもできるのではないでしょうか。