ネットの話題
「虫は触らず逃がしたい!」ヒットした「逃虫グッズ」発案者は学生
異例の提案、営業をうなずかせたセンス
家の中で見つけてしまった「虫」……。どうしていますか?
捕まえて逃がす「逃虫(とうちゅう)」という選択肢を広げるグッズが、注目を集めています。販売会社に話を聞きました。
虫が増える季節。ツイッターで投稿された、ある商品が「画期的!」と話題になりました。
その名も「触らずむしキャッチリー」。
透明な箱で虫を捕まえて、そのまま外に出し、ポイッと逃がすことができるという商品です。
パッケージに書かれたキャッチコピーは「虫は触らず逃がしたい!!」。
筆者も実は、虫を触るのは得意ではありません。ましてや殺虫剤で断末魔を見るのも、死んだ後の処理はもっと無理。
「できれば生かしたまま、触れずにそっと逃がしたい」と思っていました。こんなすごい商品、どうやってできたんだろう、と気になり、販売元に問い合わせました。
インタビューに応じたのは、販売元の大阪市のプラスティック加工メーカー「旭電機化成」です。これまでも、背中にスライドしてしっぷを貼れる器具「しっぷ貼りひとりでペッタンコ」など、アイデア商品を多く手がけてきました。
発明家を応援する企業というコンセプトもあります。
それでも昨年9月、「むしキャッチリーを売りませんか?」との提案があった時のことを、原守男専務はこう振り返ります。
「確かにアイデアは面白いんですけど、なかなか営業側が首を縦に振りませんでした。虫関係の商品は扱ったことがなく、ましてや『殺虫』ではなく『逃虫』って、一体どこに売りに行ったらいいんだろう? って」
実は「むしキャッチリー」は、日本大商学部・水野ゼミナールの学生たちが発案した商品でした。ゼミ対抗で企業から出されたテーマの商品を考え、競うコンテスト「S カレ(Student Innovation College)」で、テーマ内で見事1位を取り、商品化を狙っていました。
渋る営業を決断させたのは、学生たちがすでに作っていた「実績」でした。
アイデアの完成度もさることながら、試験販売で500個が売り切れ、2回目でも1000個を完売。
何よりも、TikTokで投稿した動画が数十万回再生、ツイッターやYouTubeで積極的な発信をしていました。
販売に必要な「宣伝」まで、ある程度できている。その学生のセンスや能力の高さに驚かされました。
「学生がここまで作ったものを、僕らも守ってやれば、きっと売れる」
@mushi.catchlea 虫を捕まえた後は、外に逃してあげましょう!虫をキャッチ&リリースする、これが「むしキャッチリー」の由来です!#虫#虫対策#クモ#商品企画#商品開発#むしキャッチリー#大学生の日常 ♬ 東京フラッシュ - Vaundy
教育の一環として取り組んだプロジェクトのため学生へのロイヤリティは発生しなかったそうですが、企業として知的財産を守るための商標登録、パッケージの完成、販売網の開拓など、販売に必要な投資をしました。
提案から2カ月後の11月に販売をスタートしました。
「年間3000個売れれば合格」と言われる市場で、半年で5000個を売り上げました。「最初はなかなか売れないもの。出足としては素晴らしい」
「むしキャッチリー」への反響では、思わぬ使い道も見えてきました。
「捕虫網のように虫の羽を傷つけないで捕まえられる」
「虫が苦手な親子でも、虫をとって、観察できる」
もともと「捕まえられたかどうか分からないと不安」という声に応えて、あえて透明の箱にしていた「むしキャッチリー」。それが功を奏し、「虫の観察」という用途にも広がっています。
もちろん、虫を見たくない人のために、透明の箱の上から貼れる「目隠しシール」もついています。
発売後、「そんなに近くに寄れない」という声も届きました。
既存のむしキャッチリーは長さ18センチ。開発担当の森内壮多さんによると、「持ち手が部分がさらに長い『ロングタイプ』(約30センチ)も現在、検討しています」とのこと。
さらに気になったところを、質問してみました。
――箱をスライドして捕まえる時に、虫が誤って間に入って、つぶれたりしないですか?
「虫も生きているので、ちゃんと自分で箱の境目を乗り越えます」
――飛ぶ虫でも、いけますか?
「箱の入り口は8センチ×7センチ。それに収まる虫なら、どんな虫でも使えます。でもハチとかムカデとか、危ない虫には使わないでほしいです」
――おいくらですか?
「定価1000円(税別)で、1個入りです。繰り返し使うことができます」
――どこで買えますか?
amazonなどのインターネット通販、東急ハンズなどの小売店では「忌避剤コーナー」などで扱っています。
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