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連載

さっちゃんさんからの取材リクエスト

プレ駐妻のうちからやっておくべきことはありますか?



#9 #令和の専業主婦

夫の海外転勤…帯同してもキャリア諦めたくない 「駐妻」の深い悩み

理想は「キャリアを中断しても這い上がってきた雑草魂の人」

駐妻キャリアnet代表の三浦梓さん。サンパウロのF1会場にて=本人提供
駐妻キャリアnet代表の三浦梓さん。サンパウロのF1会場にて=本人提供

目次

取材リクエスト内容

新型コロナウィルスが以前に比べれば落ち着いてきたところで
勤務先から主人に海外赴任の辞令が出ました。

主人に帯同した場合、私はいわゆる「駐在妻」になるようですが、
今のお仕事が好きですし辞めたいとは思っていません。
現地の言葉や人間関係も不安だらけです。

プレ駐妻である今の内から
・どんな準備をしておけば良いのか
・キャリアを諦めたくないがどうすれば良いのか
を教えて欲しいです。 さっちゃん

記者がお答えします!

パートナーの海外駐在への帯同を理由にキャリアを諦めざるを得なかったことについて、モヤモヤとした気持ちを抱え続ける「駐妻(駐在妻)」の声を聞くことがあります。withnews編集部には「駐在に帯同したとしても、キャリアも諦めないためにできる準備はあるのでしょうか」という質問が届きました。駐妻キャリアnet代表の三浦梓さんに話を聞きました。

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駐妻キャリアnet
2017年、ブラジルの駐妻4人が「駐妻がより活躍できる機会を増やしたい」と立ち上げたコミュニティー。現在、世界54カ国に615人の登録者がおり、キャリアを継続したい駐妻と企業をつなぐ活動を強化している。「一度キャリアを中断しても這い上がっている、ロールモデルとなる女性を知ってほしい」と、女子大学生による100人インタビューも実施した。会員登録は無料。
駐妻キャリアnet

複数のロールモデルを探して

――駐妻になってもキャリアを諦めたくない人が、「プレ駐妻」であるうちから準備できることはありますか。

「駐妻となってもキャリアを諦めたくない」という場合に、忘れてはいけないことはパートナーからの理解だと思います。

日本と異なり、異国の地で夫婦は一心共同体で動く頻度が高いです。働く際も夫の会社のビザとの関係で、勝手には動くことができません。

いまの仕事を続けるにせよ、違うかたちでの働き方を模索するにせよ、夫婦で海外に行くからには、自分が今後どんなキャリアを歩みたいのか、自分自身がどう考えているのか、話をすることです。夫に対して説明しにくいところはどこか、自分の本気度をはかることができます。

その後に、自分が目指すキャリアのロールモデルを探すことです。気になっている単語でいいので、ネットで検索したりしてみると、情報を得ることができるかもしれません。
しかし、なかなか出会いにくいということもあり、駐妻キャリアnetのホームページには駐妻キャリアのインタビューを掲載しています。

ロールモデルが見えた後は、キャリアコンサルタントに相談して自分の考えを深掘りしてみましょう。ロールモデルを探すときも、キャリア相談をするときも共通してオススメするのは、複数人の話を聞くことです。

ポイントは、一人で悩まないこと。なぜなら、経験していないことは自分ではわからなくて当然だから。すでに駐妻を経験した方と話して、自分のキャリアをどう選択するかの筋道を立てると良いと思います。

駐妻キャリアnet代表の三浦梓さん=本人提供
駐妻キャリアnet代表の三浦梓さん=本人提供

肩書なくなり「何しているの?」がつらい

――615人のコミュニティーということですが、パートナーの駐在に帯同する前の仕事など、登録者のバックグラウンドについて教えてください。

キャリアについては、帯同する前にいた会社を退職している人が多いです。駐妻キャリアnet全体の割合は出していないのですが、昨年から駐妻キャリアnetで実施した「駐妻キャリアストーリー100人インタビュー」に協力いただいた方々は、休職制度を利用している人が11人、退職した人が70人という結果でした。

退職理由では、そもそも休職制度がない人や、夫のビザの取得の関係で扶養に入る必要が生じ、やむを得ず辞めた人が多いです。

駐妻キャリアnetはそもそも、キャリア志向の会員が多いコミュニティーなので、全体的には、やむを得ず退職の道を選ばざるをえなかった人の割合が多いと思います。

ただ、駐妻の中には「働かない環境になったことがうれしい」と感じる人もいると思うので、「みんながみんな働くのがいい」という思想にはならないように意識しています。


――登録のタイミングとしては。

一番多いのが、駐妻になって3カ月後です。
渡航してすぐは、荷ほどきや子どもの学校の手続きなどでバタバタします。ただ、子どもが学校に慣れてきたり、現地生活に慣れたりしたとき、ふと「自分にはやることがない」と感じ、寂しさを感じる人もいます。夫は会社、子どもは学校という居場所がある中、自分には家しかないと感じてしまうのではないでしょうか。
そのタイミングは、名乗るものがなくなってしまったことなどで自己肯定感が落ちてしまうのだと思います。

私自身は2020年から駐妻となり、現在サンパウロ州のカンピーナスで生活をしています。駐妻になる前、私は日本で個人事業主として働いていましたが、夫のビザ取得の関係で廃業届を出さなくてはいけませんでした。慶應義塾大学大学院の研究員などの肩書はあったものの、日本にいる間は名乗れていた会社名がなのれなくなってしまいました。
「何をしているの?」と聞かれても答えられないショックが大きい駐妻たちが多くいます。

次に多いのは、駐妻になることがわかった時点での入会です。情報収集のために登録されています。


――登録されている方たちの年代は。

年代でいうと、一番多いのは30代で全体の約60%を占めています。次に多いのが40代。年齢を重ねるにつれて、再就職先や復職のハードルは高くなる傾向があります。特に帰国後のキャリアに関する悩みは深いですね。

駐在員は複数回海外に赴任することがあります。会員の駐在帯同回数で一番多いのは、一回目です。帯同が二回目以降になる会員は、「自身の経験を伝えたい」という動機が多いです。

ブラジルでのダンス仲間との一枚。中央が三浦さん=本人提供
ブラジルでのダンス仲間との一枚。中央が三浦さん=本人提供

「キャリアを中断しても這い上がってきた雑草魂の人」

――駐妻キャリアnetが目指す、理想のキャリアの築き方を教えてください。

休職したり、いったん仕事を離れたりしている駐妻である間も、人事や広報、経理など専門性を維持したり高めたりする仕組みを作っていきたいと思っています。

専門性を生かせる仕事が少ないことを理由に、駐妻の期間だけ別の仕事をすると、専門性を維持することは難しい。ですが、「フルタイムで働けるときになったらすぐに働ける」ためにはスキルを上げ続ける必要があります。

駐妻キャリアnet会員が希望する働き方で1番多いのは、日本とのリモートワークです。そのため、駐妻に理解のある経営者や人事と仕事を作っています。将来的には、どこの国にいても、仕事ができる仕組みを作りたいと思っています。


――駐妻になることで、いったん仕事を辞めざるを得ない状況になる場合があります。そのことについてのお考えを聞かせてください。

やめたことで、会社員以外の働き方に出会うきっかけになると思っています。

最初は肩書がなくなることで自己肯定感が下がるかもしれませんが、駐妻である間にどう成長したかという実績があれば、好待遇の仕事を探すこともできます。
日本での働き方をリセットしても、駐妻を経験したあとに這い上がれる環境さえあれば、キャリアとしての厚みは増えていきます。

「駐妻」のイメージが、「キャリアを中断しても這い上がってきた雑草魂の人だよね」となるとうれしいです。

 ◇

専業主婦として家庭内のケア労働を精いっぱいしているのに劣等感があったり、「諦めた」なんていう気持ちにさせたりするのは誰なのか? そんな社会を変えていくためのヒントを探したい。どうすればいいか、一緒に考えてみませんか?
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