連載
#11 特別じゃない日
祖父母からの「おすそわけ」 喜ぶ顔が見たくてこっそりと努力して…
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「おすそわけ」に込めた思いを聞きました。
コタツでみかんを食べている老夫婦。
夫は無言のままキレイにむけたみかんの皮を妻に見せ、自慢します。
すると妻も、皮を螺旋状に美しくむいてみせます。
そんな二人はある日、それぞれ大量のみかんを買ってきてしまい、娘一家にあげることに。
キレイなみかんを選んで箱に詰め、娘一家の家へ向かいます。
もうすぐ娘の家へ着くというときに夫が立ち止まり、つぶやきます。
「ミカンは……振動を与えると甘くなるらしいな」
二人はみかんを載せたカートを引きながら、あえて遠回りすることに。
「キレイなみかんばっかだなあ~」「あま~い」と喜ぶ孫たち。
ひそかな努力は伏せたまま、喜ぶ顔を眺めているのでした。
祖父母の家に遊びに行くと、毎回必ず持ちきれないほどのお土産を持たせてくれます。
たくさんの料理やお菓子の中に、近所の方からいただいたお野菜や果物も分けてくれます。
そして、いつもきれいなものを取り分けて渡してくれます。
「これいいね」「これもきれい」と言いながら、私に渡すものを選んでくれる祖父母の姿を見るのがとても好きです。
祖父母に何か渡そうとしても「そんなもんいらん」。
誰かにおすそわけするときは、私も喜んでもらえるものをお渡ししたいなと思っています。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化されています。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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