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ネットの話題

「かわいい!」惚れ込んだ子ども服ブランドは、戦渦に巻き込まれた

《私たちの洋服を世界中の子どもたちに届けたい》

たいやきさんが購入したafynyのワンピースを着た子ども=本人提供
たいやきさんが購入したafynyのワンピースを着た子ども=本人提供

目次

裾に「FREEDOM OF CHILDHOOD(自由な子ども時代)」の刺繡が施されている一枚のワンピース。海外に拠点を置く子ども服ブランドに魅了された、日本在住の子育て中の女性がいます。しかし、今年に入り、この服が作られた国では多くの子どもが亡くなってしまいました。女性が関わったプロジェクトについて聞きました。

「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)

開封した瞬間に、思わず「わあ!」

幼い子ども2人を育てるたいやきさん(@ADuNPpTYEIjuUX9)には、お気に入りの子ども服ブランドがあります。「あまりにもかわいすぎて」、海外からの購入になるにもかかわらず、一気に何着も、何度も買うほど惚れ込んだブランドは、環境に配慮した素材を使い、高いデザイン性が魅力です。

そのブランドとの出会いは、昨年のことでした。
たいやきさんはツイッターのスペース機能(音声を使って自分たちで作り上げるコミュニティー)を使ってのおしゃべりを聞いていました。そのときの話題は、「子ども服」。オススメのブランドについて話が盛り上がる中、のちにたいやきさんがファンとなるブランドの話題になりました。

気になって調べてみると「かわいい!」と気持ちは盛り上がりました。さらに、サステイナブルであることを大事にしているというポリシーを知り、「ぜひ購入してみたい」。

ツイッターで知り合った友人3人と共同購入を決めました。

たいやきさんは、その頃は生まれたばかりでまだ立つこともできなかった長女のために、1歳になったら着られるであろうサイズのワンピースなど数点を購入。
数週間後、届いた商品を手にとると、「開封した瞬間に、思わず『わあ!』と声をあげてしまうような素敵なお洋服でした」。二重になった襟や、あしらわれたリサイクルコットンボタンなど、その芸術性に目を奪われました。

実物を手にデザイン性に改めて惚れ込んだのに加え、タグについている文言にも魅力を感じました。
Manifesto of childhood freedoms(子ども時代の自由についての公約)
1.Play all day(一日中遊ぶ)
2.Read books upside down(本を逆さまにして読む)
3.Compose poems that don’t rhyme(韻を踏まない詩を作る)
4.Eat spaghetti with hands(スパゲティを手で食べる)
5.Sing along with birds(鳥と一緒に歌う)
6.Dance in the rain(雨の中で踊る)
7.Color objects outside lines(線の外まで色を塗る)
8.Dream about a picnic on the moon(月でのピクニックを夢見る)
9.Tell endless stories…(終わりのないお話をおしゃべりする)
洋服のタグに書かれた「Manifesto of childhood freedoms」
洋服のタグに書かれた「Manifesto of childhood freedoms」

たいやきさんは、「彼らのお洋服作りの根本には、子どもたちが心地よく着られるようにという願いとともに、子どもたちにとって住みやすい地球であるようにという考えがあるんだと思います」と話します。

やっと娘に着せられた頃…軍事侵攻の気配

この子ども服ブランドは、ウクライナのリビウに制作の拠点を持つafynyというブランドです。

ウクライナには今年2月、ロシアが軍事侵攻しています。
たいやきさんはafynyの服に出会う前まで、ウクライナとのつながりは皆無でした。唯一、侵攻前にウクライナのことを調べたのはafynyの洋服を購入した時。「フリヴニャってどこの国の通貨だろう?」と調べたことがきっかけでした。

そして今年に入り、ロシアによるウクライナ侵攻がささやかれはじめた頃から、「ウクライナって、afynyがある国だよね」と、実感をもってウクライナという国を意識し始めました。
その頃はちょうど、afynyで購入したワンピースが、1歳になった長女に着せられるようになった時期。
「一年近く寝かせた洋服が子どもにピッタリのサイズになり、喜びとともに着せた時、この服が生まれた国に危険が迫っているという事実を認識してハッとしたんですよね」と当時の心境を振り返ります。

商品購入後、たいやきさんはインスタグラムを通じてafynyとメッセージのやりとりをするようになっていました。
購入後のお礼や、発送日のお知らせ、サイズの確認など、密なやりとりをしてくれるafynyに「あたたかいブランドだな」と信頼感と親近感を持っていました。

そのafynyがある国が侵攻されるかもしれない。

「心配する気持ちはありましたが、実際に侵攻が始まるまでは、危ないとはいえこの時代になって新たに戦争が起こるなんて思っていませんでした」と正直な気持ちを語ります。

afynyの服を着たたいやきさんの長女=たいやきさん提供
afynyの服を着たたいやきさんの長女=たいやきさん提供

発送再開後、再度購入「商品届かなくても…」

ただ、2月になり、ロシアはウクライナへの侵攻を始めます。

「ものすごくショックでした」

そのとき、たいやきさんは初めてafynyが拠点を置くリビウの場所を調べました。リビウはポーランド寄りの、ウクライナの西側に位置する都市のため、「比較的安全なのかな」と見守ることにしました。

ところが、侵攻が続く中、afynyのインスタグラムの投稿を見ていると、海外出荷がストップするなど影響を受ける様子を目の当たりにしました。
出荷が再開したという知らせを受けたとき、たいやきさんは「営業を再開したということは、彼らも洋服を買ってほしいということ」と理解し、日本からの購入がafynyへの応援になるかもしれないと思いました。

「子ども服を購入し、応援メッセージと一緒に送ろう」。再度友人たちを誘ってafynyから子ども服を購入しました。
「状況が状況なので、購入した商品が届かない可能性があることはわかっていました。本来の目的がafynyに応援の気持ちを届けることなので、『届かなくても理解してもらえる?』と友人にも確認した上での購入でした」といい、そのことは、応援メッセージとともにafynyにも伝えました。

すると、afynyのデザイナー、ナタリアさんから購入のお礼のメッセージが届きました。

「『応援の気持ちがうれしくて泣いている』ということや、『ひどい状況だけどいつか終わると信じている』という内容が書かれていました」

たいやきさんが購入したafynyの服=本人提供
たいやきさんが購入したafynyの服=本人提供

ツイッターで投稿した現地情報に「なにかできないか」

4月には、afynyの拠点がある街の鉄道駅がミサイル攻撃を受けたという報道がありました。

その少し前、たいやきさんはafynyから3度目の購入をしていましたが、「危ないから発送しなくていい」とすぐに連絡を入れ、どうか寄付として受け取ってほしいと伝えました。

一方、ナタリアさんからは「危ないときにはアラートが鳴るので大丈夫」と写真付きで状況が送られてきました。そして、そんなときでも、着てくれる子どもたちのことを思ったメッセージが添えられていました。

《私たちの洋服を世界中の子どもたちに届けたい。寄付の気持ちは嬉しいよ!ありがとう!》

そのときのやりとりの一部を、ナタリアさんの許可を得てツイッターで発信すると、たいやきさんのフォロワーから「なにかできることはないか」といったコメントが寄せられました。

それを機に、たいやきさんはafynyに負担をかけない形でなにか応援ができないか、ナタリアさんと相談を始めました。

何度かのやりとりを経て、afynyが主体となり、新作を事前予約・前払いしてもらい、その金額の一部を難民支援組織やウクライナ軍への救急セットやヘルメットなどの購入資金にあてるプロジェクトを始めました。

たいやきさんがプロジェクトについてツイートすると6千件ほどの「いいね」がつき、リプライで購入報告をしてくれるフォロワーも。中には海外購入が初めての人向けに、わかりやすい説明ブログを書いてくれた人もいました。

ナタリアさんからも「たくさんオーダーが届いている。何よりも日本から応援してくれている人がこんなに沢山いるということがうれしい」という感謝のメッセージが届きました。

安全に作ったものをまた子どもたちに…

afynyを知るまでは、ウクライナの人と出会ったことはなかったというたいやきさんは、ウクライナという国のイメージは湧きにくかったそう。ですが、afynyを知ったことで「素晴らしいクリエーションが生まれる国だと思った」。さらに、afyny以外にも素敵な子ども服ブランドがたくさんあることも知り、「ポリシーのある素敵な物作りをしている人が多くいる国なのだと思いました」。

そのウクライナではいま、市民の生活が脅かされる日々が続いています。

「ネットが発達したことで、いまもチャットレベルでウクライナに住む人たちとやりとりができている」とたいやきさん。「ナタリーはいつも明るく楽しく返信をくれますが、ミサイルが落ちたりする渦中にいることが、ずっと不思議で信じられない感覚です」と話します。

今回のプロジェクトについては、「自分たちの応援の気持ちや、『味方だよ』ということを直接伝えられたことが一番うれしかった」と話します。

大使館や国連機関に募金や寄付をすることで届く支援の形もあるとした一方で、「それと並行して、顔の見える関係の相手に、直接思いを伝えられたのは大きい」と振り返ります。

「あなたたちの作る物が好き。あなたたちが安全に作ってくれたお洋服を、また子どもたちに着せられる日がくるのを願っている」。たいやきさんはそんな思いをafynyに伝えているつもりです。

プロジェクトを通じて、日本からの支援が届くことについてafynyは「サポートを胸に、前を向いて、新作を作って送れるようにがんばりたい」とたいやきさんに伝えているそうです。

      ◇

プロジェクトの詳細についてはこちら
https://www.instagram.com/p/CcpotK-tsP4/?utm_source=ig_web_copy_link
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