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連載

#8 #令和の専業主婦

専業主婦からブロガーへ 年間数百冊読破…「この時間を『何か』に」

「もしかしたら専業主婦でも何者かになれるかもしれない」

ブログを始めてしばらくし、「もしかしたら専業主婦でも何者かになれるかもしれないし、もしかしたら仕事につながるのかもしれない」と感じたというぽんこさん=本人提供
ブログを始めてしばらくし、「もしかしたら専業主婦でも何者かになれるかもしれないし、もしかしたら仕事につながるのかもしれない」と感じたというぽんこさん=本人提供

目次

かつて、ランチ中の専業主婦らしき人たちをみかけると「お金も時間もあっていいな」と思っていたという女性は、自分が専業主婦になり、その見方が大きく変わったといいます。子育てや病気を機に会社を退職し、専業主婦になっておよそ10年の間に変化していった価値観について話を聞きました。

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育児と入院が重なり「限界だ」

9年前、ぽんこさん(40代、仮名)は育休から復職数カ月で、新卒から7年勤めていた会社を辞めました。「復職に迷いはなかったし、復職したらその先もずっと働き続けるものだと思っていた」のに、数カ月で決断した理由は二つありました。

一つ目は子育てとの両立がうまくいかなかったことでした。
ぽんこさんが復職したのは子どもが1歳半のときでしたが、保育園に通い始めた子どもは熱をよく出し、「お迎えにきてください」と、しょっちゅう保育園からの呼び出しがありました。夫にも相談はしていましたが、迎えはぽんこさんが担っていました。

お迎えに行くと、次は小児科へ連れて行き、そこで数時間待たされることも。その間ぐずる子どもの世話をし、通院後も体調が戻るまで数日休んで……ということを何度も繰り返しているうち、どんどん職場への「心苦しさ」がふくらんでいきました。

「周りはそこまで気にしていなかったのかもしれません。でも、仕事もほとんどできずに早退したり、その後数日休んだりというのを繰り返すうちに『この先もずっとこうだったら難しいな』と思うようになりました」

退職の二つ目の理由は自身の体調問題でした。

子育てとの両立に行き詰まりを感じていたのと同時期に病気を患い、1カ月ほど入院生活を送りました。
「仕事を休むことへの罪悪感みたいなものも強くなり、精神的にも落ち込んでしまった」というぽんこさん。

これらの事情が重なりあい、退職を決めました。

「続けられなかったですね。限界だ、もう無理だって思って辞めました」

「うらやましい」から変わった専業主婦への見方

退職後は、「仕事のことは割り切ってあんまり考えないようにしていました」。
その頃の支えはネットサーフィン。現実世界で友だちをつくるのが得意ではないというぽんこさんは、SNSやブログで子育て情報を追うなどしていました。
「子どもがそばにいたことにも、とても元気をもらっていましたし、支えてもらっていました」
仕事を辞めたことは「不本意だった」けれど、徐々に「いまは子育てをがんばろうかな」と思えるようになっていきました。

ただ、子育てはとても大変でした。中でもぽんこさんがつらかったのは「閉塞感」でした。

その頃、夫も忙しくしていて、毎日がワンオペ。お出かけする気力もわかず、「赤ちゃんを背負って数分の距離をお散歩するだけで精いっぱいでした」。

子どもが1歳になる頃までは「引きこもり生活」だったといい、大人と話す機会もごく限られていたそう。

そんな日々を送るうち、専業主婦への見方も変わってきました。

仕事をしていた頃は、出先で見かけるランチ中の女性たちをみかけると「いまとなってはとても失礼な見方ですが」と前置きし、「専業主婦かな。お金も時間もあっていいな。うらやましい」と思っていたというぽんこさんでしたが、「たまのランチを楽しんでいる方かもしれない」「常にそこでランチしているわけじゃなくて、たまたまお友だちと会えたのかもしれない」と、想像力を持てるようになったといいます。

始まったネットでの交流

子どもが小さかったころに「閉塞感」を抱えていたぽんこさん自身も、子どもが小学校に就学する頃には、少しずつ時間にも余裕が出てきました。

「その頃、よくツイッターを見ていました。そこでは『ママブロガー』とか『主婦ブロガー』という肩書がクローズアップされるようになっていました」

現実世界で友だちを作るのは得意ではないけど、家族以外の人と話したいし、つながりたいと思っていたぽんこさんは、ブログやツイッターで「発信する」ということに興味を持ち始め、気になったアカウントは片っ端からフォローしていきました。

4年ほど前からブログサービス「はてなブログ」を使うようになり、最初は「どこそこのラーメンを10円で食べた!」とか「TWICEのライブ最高!」など、日記のような感覚でその日あった出来事を書いていました。

それをコツコツと続けているうち、自分が発信するブログにコメントや反応が寄せられるようになり、ブログ内での交流が始まりました。
「顔もまったく知らない相手ですが、ネットを介して人とつながることができ、ほんの少し自分の居場所ができた気がしました」と振り返ります。

そんなとき、企業からのレビュー記事執筆の依頼が来たそう。「まったく知らない世界だったので、すごく驚いた」といいますが、「わからないなりに必死に記事を書いてみた」結果、読者からも依頼主からも好反応をもらったといいます。

「ブログってすごいな」と思ったぽんこさんは、「もしかしたら専業主婦でも何者かになれるかもしれないし、もしかしたら仕事につながるのかもしれない」と感じました。

やりがい感じる一方「ジレンマ」も

実はぽんこさん、子どもが幼稚園に入ったあたりから「子どものいない時間をもてあましていた」のだといいます。

幼稚園から子どもが帰ってくるまでの間、図書館で子育て関連の本を中心に年間数百冊の本を読破したりしながら、「この時間が『何か』にならないかなと模索していた」といいます。
夫の収入があるため、家計が逼迫するような状況ではない一方、洋服やコスメ、ランチなど月数万円程度の「主婦のおこずかい」は自分で作りたいと思っていたぽんこさん。アルバイトを探したこともありましたが、子どもが帰ってくる時間には家にいたい、かつ体力に自信のないぽんこさんにちょうどいいアルバイトはなかなか見つかりませんでした。

一方、収益化できるブログであれば、ネット環境さえあれば自宅でもでき、「やりがいも金銭面も魅力でした」。

1年前からは個人事業主となり、本格的に自分のブログを運営しています。元々文章を書くことが好きで、書いている時間がとても楽しいというぽんこさんは、「やりがいと収入のバランスがちょうどよく、ピタッとはまった感じ」と話します。
「今後はインフルエンサーと言われるような立場にまでなりたいな」と展望を語ります。

一方で、実は「リアルな人とのつながりがもうちょっとあった方がいいな」と思っていると迷いを打ち明けます。
ただ、短時間で働けるかつぽんこさんの体力に見合った仕事というのが、身の周りにはなかなかみつからないそう。
「子どもが小学校高学年になったとはいえ、やっぱり帰ってくるときには家にいたい。ジレンマです」

     ◇

「M字カーブ」――。日本の女性は出産・育児により一度職場を離れる人が多く、女性の年齢層ごとの労働力率(労働力人口の割合)がM字を描くことが知られています。二番目の上り坂(Mの谷の後)の間、女性にはどんな苦悩があるのか、そしてそれの原因はどこにあるのかを解像度を上げていく必要があると強く感じます。

その結果、ぽんこさんのように収入面とやりがいのどちらもを満たせるような仕事に巡り合えればいいですが、そこまでたどりつけない人のモヤモヤにも目を向けていくべきではないでしょうか。そしてそれは、専業主婦に限ったことではないのかもしれません。
家族の介護や自身の心身の不調により、「いったん職場を離れる」という時期を過ぎたあとの働き方に、もっと目を向けていきたいと思っています。

そして、それはもちろん専業主婦であり続けることを選び取っている専業主婦自身を否定するものではありません。

 ◇

専業主婦として家庭内のケア労働を精いっぱいしているのに劣等感があったり、「諦めた」なんていう気持ちにさせたりするのは誰なのか? そんな社会を変えていくためのヒントを探したい。どうすればいいか、一緒に考えてみませんか?
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