連載
#245 #withyou ~きみとともに~
TikTokで「ちょっと疲れましたか?」 5月のつらさに寄り添う大学生
「絶対ひとりじゃないよ」
「ちょっと疲れましたか?ちょっとキツイですか?」――。そんな問いかけから始まるTikTokの動画が話題です。新生活に疲れた人たちに向けて「自分のことを考えるきっかけにしてほしい」と投稿した18歳の大学生に、話を聞きました。
@momoko6663 毎日に疲れてませんか?
♬ オリジナル楽曲 - 桃子
動画を投稿したのは、福岡に住む大学1年生の桃子さん(18)。
「桃子です!」と元気な声とポーズが印象的な桃子さんは、TikTokで45万人のフォロワーがいます。
普段は、その日の出来事や、ご近所さんとの仲の良いやりとりなどを投稿しています。
明るい印象の投稿が多い桃子さんですが、5月はフォロワーから届くメッセージ内容の変化が気になっていました。
悩みを抱えているような、暗い内容が増えていると感じていたことから、普段の投稿とは少し毛色を変え、「自分のことに一生懸命になっていい」というメッセージを込めた動画を投稿しました。
動画では「みんな疲れたんですかね?そろそろきつくなってきますね」と穏やかな口調で共感を示します。
「目の前にあることをこなしているようで、どこか自分で気を張っていて、気がついたら不安定で、誰かに痛みを預けてしまったら自分がさらに弱くなりそうで、毎日ちょっとずつこわかったりしますよね」
「だけどみんな私たちに優しくありません。みんな厳しいです」
「そんな中みんなは毎日をこなします。みんなも生きているなら、桃子も一緒に生きています」
そして、「絶対ひとりじゃないよ」という力強い言葉。
およそ1分の動画は、「わたしたち、よくがんばりました。今日もお疲れ様!」という言葉で締めくくられます。
5月11日に投稿されたこの動画は、6万6千件のいいねがつき、「ありがとう」「この動画にたどりつけてよかった」「泣いてしまった」など、826件のコメントがありました。
桃子さんは、「新生活が始まって1カ月。慣れたようでどこか無理していて、体力も使い切ってしまっているような時期ですよね」と5月に気持ちが揺らぐ人に寄り添います。
日頃からインスタグラムなどのSNSに数十件と送られてくるメッセージですが、普段は他愛もない内容なのに比べ、5月は「暗い内容が多い」といいます。
「生活に疲れた」「毎日しんどい」といったDMの中でも、ハッとさせられたのは、「返事ができないことは知っているけど、見るだけでもいい。聞いてもらってもいいですか?」から始まる悩み相談でした。
それが今回の動画投稿の大きなきっかけになったと桃子さん。
5月につらい気持ちを抱えている人たちに向けて、スマホの録画ボタンを押したその場で出てきた言葉を投稿しました。
この春、桃子さんも大きな変化を迎えました。それまで通っていた中高一貫の学校を卒業し、大学という新しい環境に飛び込みました。
「人間関係がガラッと変わり、『井戸の外』に出ました。忙しいなと思うこともありましたが、きっとみんなそうなんだろうと思って過ごしています」
大きな変化にはストレスもつきものですが、気持ちがつらくなったときの対処法を聞くと、「『切り替えよう』とは思いません」とキッパリ。
考えごとをスマホに書き出すこともあるそうですが、「なんだかモヤモヤする」「何がなんだかよくわからない…」。そういった気持ちのときには、枕を持って布団にくるまり、「やどかりちゃん」になります。そのまま、考え事をしたりしなかったりしながら、数日を過ごすこともあるそう。
「きつくなったらそこで止まればいいし、きつくなった分、泣けばいいんです」と桃子さんは話します。
言葉にならない気持ちは無理に言葉にまとめず、じっと時が過ぎるのを待ちます。
今回の動画に関しても、「すぐに元気になってほしい」「一歩踏み出してほしい」など、見た人に目に見えるかたちでの大きな変化が訪れることを期待しているわけではないそう。「動画を見た人にとって、なにかの『きっかけ』にさえなればいい」と考えています。
「動画を見て『そういう考えもあるんだ』と思ってもいいし、『明日何があるんだっけ』と考えてもいいし、泣いてもいい。なんでもいいから、動画をきっかけに『自分』を考え始めるきっかけにしてほしいです」
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