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連載

#7 #令和の専業主婦

専業主婦の母は「がんばっていなさそう」 自分のことも苦しめた

夫は稼ぎを家に…私は家族に何も与えていない?

女性の長男が好きなおもちゃたち=女性提供
女性の長男が好きなおもちゃたち=女性提供

目次

専業主婦だった母のことを「外で仕事はできないだろうな、と頼りなく思っていた」。そう振り返る女性は、一時は「働いていないと意味がない」とまで思っていましたが、子育てのため、2年ほど前に自身も専業主婦になりました。自身が持っていた偏見に苦しめられたと振り返ります。「何もない日でも『いい日』だと思える」ようになるまでを聞きました。

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産後も仕事復帰するつもりだったけど…

2年半前まで、フリーランスのシステムエンジニアとして働いていた大阪在住の女性(35)は、第1子妊娠中に契約更新を迎え、それを機にいったん仕事を離れることになりました。

「戻る気は満々だったんですけどね」。出産後も子育てをしながら働くつもりでしたが、出産してみると子どもの世話は思ったよりも大変でした。

行きたいときにトイレに行くことも、泣く子どもをあやすために夜まとめて眠ることもできない毎日。「手を抜くことができず、全部に一生懸命になっていました」

そんな毎日が続く中で、「割り切って育児に集中しよう」と専業主婦の道を選びました。

しかし女性は元々、専業主婦という生き方を否定的にとらえていたといいます。
それゆえ、自身が専業主婦になった当初は、何かを成し遂げたという感覚のない日々がどんどん過ぎていくように感じていました。

その考えの根っこには、専業主婦だった、女性の母の存在がありました。

「仕事は厳しい」の対局にいるように見えた

女性が育った家庭は、専業主婦の母、仕事熱心な父、そして子ども4人の6人家族でした。

父は定時に帰ってくるものの、持病があったことなどから、家のことはほとんど母が担っていました。

学校から帰ってくると必ず家にいてくれた母。手作りのおやつを作って待ってくれていたこともありました。
女性は4人きょうだいの3番目ですが、「放っておかれたことがなく、母がずっとかまってくれていた記憶しかありません」。

そんな母の印象は「ずっと楽しそう」。
「いまなら、母が楽しそうにしてくれていたからこそ、家庭がいいものになっていたのだとわかります。ですが、自分がやってもらっていたことがあるのを棚に上げて、『お母さんってがんばっていなさそうだったな』と思っていた時期がありました」と告白します。

「人生はずっとがんばるもので、仕事は厳しいもの」。そう考えていた女性にとって、毎日楽しそうに過ごしていた母親は「仕事は厳しい」の対局にあるように感じていて、女性が大人になる頃には、その「楽しそう」が、「がんばっていなさそう」というイメージに変換されていました。

そして母に対して「頼りなく、外では働けないだろうな」とまで思うようになっていったといいます。

母への思いが専業主婦へのイメージとなり、「専業主婦は楽そうで、頼りない」。そんな偏った認識になっていったそうです。

そして女性の専業主婦に対しての認識は、社会人になると、より一般化していきました。

仕事を始めると、お金を稼ぐ大変さを痛感して「働いていないと意味がないと考えていました」。
優秀な女性の同僚が専業主婦になったと聞くと「もったいない」と思い、ましてや自分自身が専業主婦になるなんて考えもしませんでした。

冷蔵庫横のマグネット。長男の好きな乗り物であふれている=女性提供
冷蔵庫横のマグネット。長男の好きな乗り物であふれている=女性提供

明るく楽しい、それだけで価値ある存在

「大好きだし尊敬もしていた」けど、どこか頼りなさと隣り合わせの存在だと感じていた「専業主婦の母」。女性が認識を改めていくのは自身の結婚後のことでした。

偶然、「母親に対する解釈が自分を苦しめている」という内容の本を読んだのがきっかけでした。著者の講演会などを聴くうち、自分の中で母への認識が少しずつ変わっていくのがわかりました。

「仕事に一生懸命に取り組む父を尊敬していた」という女性は、それまでは「仕事をする父」と「専業主婦である母」と、それぞれを分けて見ていましたが、「尊敬していた父が選んだ人が母であり、その母が専業主婦である」のだと考え方が変化し始めました。

すると、母を「何もしていない人」「がんばっていなさそう」と捉えていたことが間違いだったことに気がついたといいます。「家で家族が安心して過ごせるために、いろんなことをしてくれていた。それ自体に価値があるのだとわかりました」

「持病があった父を支えてきたのは、お母さんの明るさだったり楽しむ力だったんだ」と気付き、「母を認めることができ、親を攻撃する子どもっぽい部分が落ちていった」そうです。

母への認識が改まると、それに伴い専業主婦観も変化して、「専業主婦という生き方を認められるようになった」と振り返ります。

女性が最近はまっているというリラックスグッズ=女性提供
女性が最近はまっているというリラックスグッズ=女性提供

「私は家族に何も与えていない」? …そうじゃない

現在、女性は専業主婦歴2年半。
専業主婦になった当初は、周囲から取り残されているような感覚に悩んでいましたが、母への認識の変化に伴い専業主婦への考えも変わったいまは、そんなことはありません。

周囲は「専業主婦って大変だよね」と、専業主婦の忙しさや人間関係構築の大変さについて理解してくれているといいます。

「同じ専業主婦の中には、もしかしたら収入がないことに対して引け目を感じている人がいれない」と、家族のケアには目に見える対価がなく、専業主婦の自己肯定感を下げている可能性に触れます。

2歳になる長男と夫と暮らす女性の家庭では、自営業の夫が働いてお金を稼ぎます。女性は「じゃあ私は家族になにも与えていないのかというと、そうではない。ある意味でお金より貴重な『時間』を全振りして子どもたちに与えているということに自信を持っています」と話します。

その自信があるからこそ、いまは「卑屈にはならず堂々とできている」そう。

「すごく単純ですが、毎日とても楽しくて何もない日でも『いい日』だと思います」

いまのところ、外で稼ぐという意味での仕事をすることは考えていませんが、自営業の夫の手伝いなどをしていくつもりだといいます。

「子育てが一段落したあとに、その後の人生をどうしようかなと考えて過ごすのもとても楽しいです」

そして女性はいま、第2子の妊娠中。「35歳を超えての第2子出産になりますが、自分が4きょうだいだったこともあり4人までがんばりたい。そう思えるのも、専業主婦としての実母の生き方を認められたからだと思います」

 ◇

専業主婦として家庭内のケア労働を精いっぱいしているのに劣等感があったり、「諦めた」なんていう気持ちにさせたりするのは誰なのか? そんな社会を変えていくためのヒントを探したい。どうすればいいか、一緒に考えてみませんか?
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