ネットの話題
「グリーン ダ・カ・ラ」の謎ペンギン 出現場所から伝わる優しさ
きっかけはラベルレス…手に注目!
「こんなところに、なぜペンギンが?」。先月からSNSで話題になっているのが、「グリーン ダ・カ・ラ(GREEN DA・KA・RA)」のラベルです。「ネットで調べてもわからない……」という声に応えて、メーカーに取材してみると、ペンギンが絶妙な位置に現れる理由が! ラベルからにじみ出る、飲む人にも地球にも優しい担当者の思いを聞きました。
4月中旬から、Twitter上で、「グリーン ダ・カ・ラ(GREEN DA・KA・RA)」のラベルにかわいらしいペンギンが出現していることがひそかに話題だ。こんなところに前からいたっけ!? と気になるも、調べても出てこない…といったつぶやきがチラホラあがっています。
ペンギンが発見されているのは、「GREEN DA・KA・RA」および同ブランド「やさしい麦茶」のラベル。サントリーの公式ページを隅から隅まで見てみましたが、確かにペンギンについての情報は何もありません。公式キャラクターだとしたら、いつからいたの? 名前はあるの? このユルさあふれるペンギンは一体何者なのだ~! というわけで、同商品を販売するサントリー食品インターナショナルさんにお話を聞いてきました。
答えてくださったのは、同社SBFジャパン ブランド開発事業部、GREEN DA・KA・RA担当の柴尾洋香さんと、キャラクターをプロデュースしたデザイン部デザイナーの石川寛之さんです。
――「GREENDA・KA・RA」ブランドのラベルに、ペンギンが隠れていることに気づいた人たちが出てきています。いつからいたのでしょう……?
柴尾:2021年7月、「GREENDA・KA・RAやさしい麦茶」(以下、「やさしい麦茶」)650mlのラベルレスボトルを発売した時、EC販売用の段ボールで初登場しました。
――ボトルよりも前に、段ボールでデビューしていたんですね。その時の意図は?
石川:ラベルレスということで、元々ラベルがついている商品からラベルがなくなった状態のものが段ボールで届くようになりました。でも、それだとラベルから感じてもらっていた商品価値が伝わりづらくなっているんじゃないかな、と。
そこで、「やさしい麦茶」という商品のもつ“やさしい”イメージを段ボールでも表現できないかなと思ったんです。その際、オリジナルのキャラクターを入れることで、そのメッセージを伝えられないかと考えたのが、誕生のきっかけです。
柴尾:「GREENDA・KA・RA」のブランドビジョンは「親子を笑顔に」。親が子を想うようなやさしさを商品に込め、カラダにやさしい水分とやさしい気持ちをお届けするというコンセプトです。パッケージや段ボールについても、そういった世界観を表現したいという想いがあります。
――名前はあるんですか?
柴尾:私たちは“やさしいペンギン”、通称「やさペン」と呼んでいます。
石川:ペンギンに決まった後も、途中までは“ラベルレス”をアピールするキャラクターだったんですが、議論を重ねるなかで、ブランドを象徴するキャラクターとして昇華させてもいいんじゃないかという話も同時進行していました。
ボディーがボトル型だと、どうしてもラベルレスのキャラクターという感じになってしまう。「GREENDA・KA・RA」の持つやさしさや愛情といったイメージを伝えるキャラクターとして、もう少し広がりを持たせるような方向の案として、ペンギンのボディーはペンギンのままでデザインすることを検討し始めました。
――わあ、一気に今の“やさペン”の原型につながってきましたね!
石川:そうなんです。方向性が決まったところで、大人も子供も、見た人みんなが「ふふっ」と頰が緩むような、ちょうどいいユルさと愛嬌を研究しながら、少しずつ表情に落とし込んでいきました。全部かわいくて、どれも捨てがたくて…結構悩みましたね。
一方で、「GREENDA・KA・RA」というブランドは、前向き、明るくて快活というキーワードもあるんです。そういうところもしっかりイメージして、ただユルいだけではないキャラクター作りをしていきました。
石川:ブランドキャラクターにすることが決まったので、おなかにブランドを象徴するハートを入れたのと、実は足もハート形なんですよ。ペンギンの足の指は、本当は大きな指が3本と小さな指で計4本なんですけど、ハート形にすることで、よりブランドキャラクターを特徴づけられる。さらに、歩いた時に足跡がハートになって残っていく…みたいなストーリーが生まれ、キャラクターに人格を持たせることができるかなと。
――その後段ボールから飛び出して、店頭用のラベルに登場するようになったのは、いつからですか?
柴尾:今回(2022年4月19日)の「GREENDA・KA・RA」および「同やさしい麦茶」大リニューアルのタイミングです。剥がし口のあたりにいる“やさペン”は、それぞれの“手”に、ボトルとラベルを持っているんですよ。
――ほんとだ! 剥がしているんですね。
石川:そして剥がしてもらったら、600mlと680mlボトルのラベル裏面には“ストーリー”が載っています。それを読んで心が軽くなる、やさしい気持ちになってもらえたらいいなという想いが込められています。
――ほんとだ(2回め)! 何か描いてあるものが現れました!
柴尾:ラベルを剥がすのって、面倒だと感じる方もいらっしゃいますし、それ自体にまったく楽しみがない、ただの作業になってしまいがちです。そういう時に、少しでも楽しいとかあたたかい気分になれたらいいなという想いです。
――単純なイラストやメッセージではなく、“ストーリー”にした理由はあるのでしょうか。
石川:やっぱり、やさしい気持ちになってもらいたいということを第一に考えました。ひとつの言葉や絵より、読んで情景が浮かんで、やさしい気持ちがふくらむというところまで持っていけたらいいよねっていう発想から、ストーリーを考えてみようと。グループ全員で案出しをして、何度も話し合って。
――これは、何種類かあるのでしょうか?
柴尾:5種類あります。
――セリフがないことで、ストーリーや“やさペン”の気持ちを想像するのも楽しいですね。
石川:左から読んでいく形になります。例えば「vol.1」だと、“やさペン”が水やりをして大切に育てていた植物が、月日が経って大きくなって、今度は雨の日に“やさペン”を守ってくれる。
日常何げなくやっていたことが、ふとしたタイミングで愛情をもって返ってくるような……やさしさが回っているようなストーリーになっています。表現はmakomoさんがすごく工夫してくださって、僕は、“やさペン”がちょっと背伸びして水やりをしているところがすごくかわいくて、気に入っています。
「vol.5」は、初回案では、“やさペン”がしろくまの背中でくるくるまわって遊んでいる、しろくまもそんな“やさペン”を何も気にせず、ゆるく同じ時間を過ごしているというものだったんです。
でもそれだと、楽しそうなんだけど、“やさしさ”がある世界観にはもう一歩足りない。そこで、しろくまから背中を洗ってもらっていたペンギンが、泡のまましろくまの背中で遊んでいたら、いつの間にかどちらもきれいになっちゃった、というストーリーを組み立てました。
柴尾:他のストーリーは、見つけた人のお楽しみに!5つのストーリーのなかには、“やさペン”の日常を切り取ったものもあるので、ぜひ探してみてください。
――それにしても、これだけ薄いラベルの裏面に印刷となると、苦労もあったのでは。
柴尾:インクが薄過ぎると見えづらくなるし、でも濃くすると表から透けて見えてしまう。試行錯誤でした。印刷会社さんにも協力してもらって、茶色以外の色も試してみて、最終いちばん透けにくくて、ギリギリちゃんと見える色と濃度を調整しました。
石川:そして、実はボトルにエンボス加工されている“やさペン”は、空のボトルとキャップを持っているんです。
――……ほんとだ(3回め)!かわいい!
石川:ラベルを剥がしたら、次はボトルからキャップを外してねっていうメッセージで、ラベルとボトルとキャップを、全て楽しみながら自然に分別の習慣ができたらいいなと。
柴尾:“やさペン”の持っているボトルも、是非よーく見てみてくださいね。
――リサイクルについて、ペットボトル飲料メーカーとしての課題は。
柴尾:自販機の横にあるようなリサイクルボックスは「ゴミ箱」と思っている方も多く、ゴミやプラカップを入れられてしまうケースがよくあります。でも、あれはリサイクル専用のボックス。また、ボトルの中に吸い殻のような異物や液体、飲み残しが入ったものは、せっかくボックスに入れていただいても、リサイクルしづらくなってしまうんです。液体・飲み残しについては、中身が安全なものかどうか確かめられないためです。
リサイクルのためには、まずそういった細かい分別をしっかりやり切ることが大切。そうでないと資源として活用することが難しくなるので、分別の仕方を知っていただく活動は、今後も力を入れてやっていきます。
――正しい分別の仕方を教えてください。
柴尾:まずラベルを剥がし、キャップをはずします。ボトルはすすぎ、軽く潰してスーパーなどの店頭にある回収ボックスか、お住まいの自治体のルールに従って指定日に出します。ラベルとキャップは資源プラスチックです。なお、ボトル側に残るリングについては、リサイクルの過程で処理することになっているため、分別する時点で取りはずす必要はありません。
――最後に、“やさペン”のお気に入りポイントと、今後の展開について教えてください。
柴尾:私は足跡がハートになっているのがすごく好きです。自分の通った後についた足跡でみんながほっこりするっていうのが、「GREENDA・KA・RA」の、“やさしさの循環”を目指す世界を体現してくれているなと思います。今後は…“やさペン”がブランドの象徴としてもう少し活躍の場を広げていけたらな、とは思っていますが、皆さんの反響を見ながら少しずつ…ですね。
石川:気に入っているのは、やっぱり口元や目など、なんとも愛らしい表情ですね。何度も調整しただけに、愛情もひとしおです。
何かとせわしない時代、〈やさしさ〉ってますます大事になってきているなという実感があります。「GREENDA・KA・RA」のブランドメッセージを胸に、ボトルやキャップ、段ボール、すべてに想いをつぎ込んで、できるだけ感じてもらえるようにお客様とのコミュニケーションを大切にしていきたいです。
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