連載
#9 特別じゃない日
マスクずらして自撮りする女子高校生2人 実は優しい理由があって…
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「わらったおかお」に込めた思いを聞きました。
マスクをずらして口元を見せ、笑顔で自撮りする女子高校生2人。
スマホで撮った写真を指で拡大し、口元だけをアップにしています。
いったい何のために?と思っていたら、目の前にはベビーカーに乗った赤ちゃんが。
マスクの上に口元のアップ写真をあてることで、マスクをしていても笑顔が見えるようにという工夫でした。
コロナ禍でマスクを外すことができなくても、通りすがりの赤ちゃんを笑わせたい。
そんな女子高校生たちの優しい気持ちに、赤ちゃんのお母さんも笑顔になりました。
コロナ禍後にご縁ができた方は「マスクをとったお顔を拝見したことがない」ということがよくあります。
そんな中、お知り合いになったご近所さんのマスクオフのお顔を初めて拝見したのは、その方が道を挟んでお子さんと歩かれているときでした。
その時初めて「全部の笑顔」を見ることができ、こっそりと嬉しい気持ちになったことを覚えています。
このお話を描いた後、漫画を読んでくれた友人からも「マスクを取れたら、顔をもう一回覚えてもらうために知り合い全員に会いに行かないとね」なんてビデオ通話越しに笑いあいました。
今までは当たり前に見ることができていた「全部の笑顔」を道を挟んだ場所からでなく、間近で見ることができる日が早く来るといいなと願っています。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化されています。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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