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「足裏のイボがダクトテープで…」SNSで拡散 皮膚科医による注意点

本来はモノの補修などに使用されるダクトテープだが……。※画像はイメージ
本来はモノの補修などに使用されるダクトテープだが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

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“足の裏のイボ”に何年も悩んでいる人が「市販のダクトテープ」で“治った”とする情報がSNSに投稿され、著名人も拡散するなどして注目されています。一方、専門家の意見は「おすすめできません」。身近な病気への対処法について皮膚科医に話を聞きました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
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自己判断で悪化することも

“足の裏のイボ”に何年も悩んでいる人が「市販のダクトテープ」で“治った”とする情報がTwitterに投稿され、24日時点で約2万回リツイートされています。多数のフォロワーのいる著名人も驚きの声と共に拡散しており、注目されています。

一方で、皮膚の病気に対して、医薬品や医薬部外品以外のものを使うことは、効果や効能、安全性が不明で、リスクもあります。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司さんに話を聞きました。

まず、大塚さんは「世間で“イボ”と呼ばれるものには、さまざまな皮膚の病気があり得ることに注意が必要」だと指摘します。

一般的な“イボ”は「ウイルスが感染してできるイボ」で、専門用語でウイルス性疣贅(ゆうぜい)と呼ばれるもの。他、ミズイボ(伝染性軟属腫)や老人性疣贅、脂漏性角化症など、多くの皮膚の病気があります。悪性腫瘍の場合もあり、診断には慎重を期す必要も。そのため、安易な自己診断は禁物であるとされます。また、足の裏には“イボ”と似た病気で、“タコ”や“ウオノメ”ができます。

「もし、足の裏にできていたのが“タコ”や“ウオノメ”であれば、削るのが一般的な治療ですから、ダクトテープで粘着させて皮膚の硬いところを剥がすことで、似た効果があるかもしれません。病院ではサリチル酸を含むテープを患部に貼り付けて治しています。

“イボ”はヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚の深い部分にある基底細胞に感染し、細胞分裂が活発にな​​ることでできます。ダクトテープで“イボ”を柔らかくして、ウイルスがある部分を含めて根こそぎ剥がしてしまう理屈も考えられますが、その場合は傷になると思います。

これまで多数の成分が治療薬として試されてきた歴史を考えると、ダクトテープに含まれている成分がウイルスに特別な効果があるという可能性も低いでしょう」

その上で、大塚さんは“イボ”にダクトテープを使うことについて「好奇心をくすぐる情報ではあるものの、皮膚科医としておすすめしません」とします。

病院で処方される塗り薬や貼り薬は、薬の効果はもちろん、安全性に関しても厳しい試験をクリアしています。ダクトテープはもともと人の皮膚に貼ることを想定して作られたものでなく、その安全性は検討されていません。

「例えば、ダクトテープの成分でかぶれたり、ダクトテープに含まれる成分が体内に吸収され健康被害が起きたり、強い粘着力で皮膚を剥がして傷が広がってしまう可能性もあります。

また、ダクトテープで患部をカバーしてしまうと中の様子が見えず、気がつかないうちに感染を起こしている、ということもあり得ます。特に糖尿病がある人は足の感覚が鈍い方も多く、感染を起こしても痛みを感じず、かなりひどい状態になることがあります」

他の病気が隠れている可能性

“イボ”は身近な皮膚の病気である一方、種類や発生部位などが患者さんによって違うため、日本皮膚科学会も“治療は皮膚科医でも苦労する”とします。どの治療法を用いても、多くの場合、一回の治療で治すことは難しく、何回か繰り返してやっと治るのが普通だとされます。

今回のように情報がSNSで拡散されたのは、“イボ”が治りにくく、困っている人が多いから、とも考えられます。悩む患者さんに、大塚さんはこう伝えたいとします。

「“イボ”の治療は病院で行われる液体窒素療法が一般的だと思いますが、ウイルスが表皮の奥深くにいるため、しっかり凍らせないと治りません。処置に痛みが伴いますが、がんばって病院に通院してほしいと思います。

また、イボが多数できる方、治りづらい方などは、免疫機能が低下している可能性があります。他の病気が隠れていないか、私たち皮膚科医が血液検査で調べるケースもありますので、まずは病院に来ていただきたいです」

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