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順調な俳優キャリア…須藤蓮はなぜ映画監督に?同性愛描いた『逆光』

地方から都会へ「逆ルート」で話題に

そこに暮らし、会いに行く配給活動。映画館「出町座」にて=2022年3月京都、撮影:Asuka Sasaki
そこに暮らし、会いに行く配給活動。映画館「出町座」にて=2022年3月京都、撮影:Asuka Sasaki

目次

コロナ禍の尾道で完全自主制作による同性間の恋愛を描いた映画『逆光』が、20代を中心に話題を呼んでいます。ロケ地、尾道から公開をスタートすると、地方から都会への「逆ルート」で上映が全国に広がっています。監督をつとめた須藤蓮(25)さんは、大手事務所に所属する俳優です。朝ドラや映画主演など順風満帆なキャリアを築いていたのが、なぜメガホンを取ることに? 今も宣伝のために全国を駆け回る須藤さんに、写真家の相沢亮さんが迫りました。

「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)

「君が監督をやれば」背中押された

――今回の作品、驚いたのが主演の須藤さん自らが監督、宣伝、配給を行っている完全自主制作映画ということです。

「そもそも映画監督になるつもりはなかったのですが、俳優として作品に出演していくうちに、徐々に作り手に憧れを感じるようになりました」

「でも、ゼロから新しい何かを作り上げることへの興味がある一方で、自分には無理かなという葛藤を抱えながら過ごしていました」


――スターダストという大手事務所に所属し、朝ドラの出演や映画主演など順風満帆な俳優人生を送る中、なぜ映画監督に挑戦しようと思ったのですか?

「ドラマ『ワンダーウォール』で出会った脚本家の渡辺あやさんが『君が監督をやれば』と背中を押してくれ、制作に踏み切りました」

「それまで、"俳優に、映画は撮れない"という理屈が先きてしまいがちだったのですが、尊敬できる大人との出会いをきっかけに、『やりたい』という気持ちを優先できるようになりました」

2021『逆光』FILM
2021『逆光』FILM

「完成した時に尾道の方々の顔が浮かんだ」

――「逆光」の公開は、地方から東京へ広がるなど通常とは、逆のスタイルを取っています。

「正直、通常とは逆のスタイルの配給活動だったので不安はありました。ただ、それ以上に自分たちが創り上げた大切な作品に協力してくれた、尾道の人達から届けたかった。映画が完成した時に真っ先に思い浮かんだのが、尾道の方々の顔だったので」

【関連リンク】映画『逆光』公式チャンネル

――シネマ 尾道での試写会時、泣きながら感謝を述べる姿は、俳優の須藤蓮でなく、一人のクリエイターとしての姿だったと感じました。

「張り詰めていた緊張の糸がプツっと途切れ、安心感のようなものがいっきに押し寄せてきました」

「公開初日は、今まで映画制作に携わってくれた人や、滞在中に仲良くなった人たちが迎えてくれました。"知ってる"人達の温かい表情を見ていたら、『やっと公開できたんだ』と自然に涙が溢れてきました」


――連絡をするたびに違う場所にいますね。

「今日は京都で明日から福岡です。宣伝活動も兼ねて、連絡をくれた気になった方に会ってきます」

「少しでも興味があれば直接、足を運ぶことを心がけています。直接、会うことによって築くことのできる温かい関係を大事にしたいからです。そして、映画を公開してくれる劇場に直接その熱量を届けたい」

そこに暮らし、会いに行く配給活動「COMES THE SUN」にて=2022年3月、京都、撮影:Asuka Sasaki
そこに暮らし、会いに行く配給活動「COMES THE SUN」にて=2022年3月、京都、撮影:Asuka Sasaki

「今だから、オフラインを大事に」

――東京公開での舞台挨拶でも、人との対話を大事にする姿が印象的でした。そこまで、現場にこだわるのはなぜですか?

「今の時代だからこそ、オフラインでの人との向き合い方を大事にしています。
そうやって話していくうちに、友達に近い感覚になっていくんですよね」


――SNS経由でメッセージをくれたお客さんにも顔を合わせた瞬間にお礼を述べていたのには驚きました。

「顔を見た時にメッセージをくれたSNSのアイコンが思い浮かんできて。嬉しかったんです」

すぐ仲良くなり、笑顔で会話。京都大学「吉田寮」にて=撮影:Asuka Sasaki
すぐ仲良くなり、笑顔で会話。京都大学「吉田寮」にて=撮影:Asuka Sasaki

「諦めることを諦めた」

――作品に向き合う中で、諦めることがなくなったそうですね。

「諦めるという選択肢がなかったですね。諦めることを諦めてました」

「『諦める』という言葉って、よく考えたらおかしいなと思い始めてきて。本当にやりたいことを見つめ続けることができたら、どうすれば目の前にある壁を乗り越えることができるのかを、考えるはずですもんね」

「今は、良いものを作りたいという気持ちが先に来ます。楽しめない事や、本気になれないことは、もうやりたくないんです」

「丁寧な作品じゃないと響かない」

――様々な表現手段や発表方法が生まれる時代、丁寧に作ることが大切だと強調されています。

「本当にやりたいことを丁寧に作っている方が評価される時代に変わりつつあると思っています。だからこそクリエイターの想いがこもった丁寧な作品じゃないと人の感情に響かないのかなと思っています」
→「本当にやりたいことを丁寧に作っている方が評価される時代に変わりつつあると思っています。だからこそクリエイターの想いがこもった丁寧な作品じゃないと人の感情に響かないのかなと思っています」

「今までは役者としてクランクインの段階から携わっていたのですが、監督となって0から関わることになったことで、スタッフ一人ひとり、ひいては全体の見え方が変わりました。少しでも気になることがあれば、すぐにでも修正して、できる限り妥協のない作品にしていきたいと思っています」

そこに暮らし、会いに行く配給活動。「cafe ha ra」にて=2022年3月京都、撮影:Asuka Sasaki
そこに暮らし、会いに行く配給活動。「cafe ha ra」にて=2022年3月京都、撮影:Asuka Sasaki

コロナ禍で一番難しいことだから挑戦

――『逆光』が完成したのは、2021年。コロナ禍で映画制作に挑戦することになりました。

「コロナが長引いて、みんな気が滅入っているじゃないですか。僕はそんな人たちに、映画「逆光」の活動を通じて、コロナ禍でもやりたいことを諦めなくていいと伝えたいです」

「コロナ禍での映画撮影って、一見とても難しそうではないですか。ただ、結果として完成させることができました。クリエイターの方々には、時代を理由に、やりたいことを諦めて欲しくないんです」

そこに暮らし、会いに行く配給活動。誠光社にて=2022年3月、京都、撮影:Asuka Sasaki
そこに暮らし、会いに行く配給活動。誠光社にて=2022年3月、京都、撮影:Asuka Sasaki

――次回作「blue rondo」はどんな作品になりそうですか?

「まだ制作中で最終的にどんな形に仕上がるのか自分でもわかっていないのですが、もっと自分の中のパーソナルな部分に触れたような作品になると思っています」

「逆光が少し大人になって落ち着いた今の自分を表現をしているのに対し、『blue rondo』は、20歳くらいの自分を投影したような作品です。感情の揺れ動き、安定しない日々に身を任せていたような成熟していない気持ちを映し出したような作品になると思っています」

「先に公開された『逆光』を見て、その期待を持って観に来てくれた方たちの予想を良い意味で裏切るような作品になると思っています」


――映画の次に取り組みたいことは?

「まだまだ先の話ですけど、事務所を構えたいと思っています。そこの1階にクリエイターが交流できるオープンスペースを設けたいと思っています。沢山のクリエイターが集まって、またそこから新しい何かが生まれるような場所を作りたいです」

「もし僕たちに少しでも興味を持ってくれる方がいらっしゃれば、なんでも相談してください。一度、映画を一から制作したという経験が沢山のクリエイターの役に立つと思っていますし、その出会いが新しい何かを生み出す縁や力になると思っています」

京都映画館「出町座」 にて=撮影:Asuka Sasaki
京都映画館「出町座」 にて=撮影:Asuka Sasaki

取材を終えて――今の時代だからこその「丁寧さ」

尾道での先行公開の際、2ヶ月近く広島に滞在し、配給、宣伝活動をしていた須藤さん。地元の映画好きの方からは「こんな監督見たことない」と言われたそうです。

地元珈琲店のオリジナルコーヒー制作、アーティストとのコラボグッズなど活動を支えてくれた多くの人との温かい関わりを大事にしてきました。

結果として、シネマ 尾道では初週歴代1位の動員数を記録し、新人監督として異例の大ヒットを記録しました。

公開後も須藤さんは可能な限り舞台挨拶に立ち続け、多くの方と交流するその体験を大事にしています。

実際にアップリンク吉祥寺では連続ドラマの収録期間中にも関わらず、連日舞台挨拶に立ち続けました。

お客さんとの挨拶を終えた22時過ぎ。早朝からドラマの収録にも関わらず「お客さんとちゃんと向き合ってお話をしたかった」と言って、遅くまで残っている姿が印象的でした。

そんな須藤さんの活動が実を結び、kino cinema 横浜みなとみらい(3月11日)、京都出町座(3月25日)、大阪シネ・ヌーブォ(4月16日)宇都宮ヒカリ座(4月22日)と全国で公開劇場が後をたちません。

今日も自転車で京都の人に会いに行きます=撮影:Asuka Sasaki
今日も自転車で京都の人に会いに行きます=撮影:Asuka Sasaki

撮影中、プロデューサーから「須藤はみんなの隣人」と言われたそうです。

インタビュー中も、いつの間にかぐっと心に入ってくるような絶妙な心地よい距離感に。お互い司法試験に挑戦していた過去も飛び出し「大学の友達だったかな」。そんなことを思わせる雰囲気がありました。

「丁寧に作っている方が評価される時代に変わりつつある」

一人の写真家として、この言葉が響きました。

今はネット上で簡単に素敵なものに触れ合うことができ、みんな発信できる時代です。

だからこそ埋もれない良いものを作り続けないとすぐに新しいものに追い越されてしまいます。

「妥協のないものが人の心を動かす」

その言葉が身に染みました。

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