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連載

#56 「きょうも回してる?」

赤の他人の証明写真をガチャガチャに リアル追求、まさかの売れ行き

「人によっては、全部当たりかもしれませんし、全部ハズレかもしれません」

「赤の他人の証明写真」=寺井広樹さん提供
「赤の他人の証明写真」=寺井広樹さん提供

目次

「赤の他人の」証明写真が出てくるガチャガチャがあったら、あなたは回しますか――。ガチャガチャ評論家のおまつさんも、思わずクリエイター本人に「シュール」と繰り返し伝えてしまうガチャガチャが、東京・神楽坂に設置されています。おまつさんが仕掛け人に、ガチャガチャ考案の経緯を聞きました。

「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)
ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

メーカーとクリエイターのコラボ増

ガチャガチャをひとつのツールとしてビジネスで活用するケースが増えています。

コロナ禍で、ガチャガチャの専門店の出店が加速したことで、ガチャガチャが多くの人にとって、日常生活の一部として浸透したからです。その結果、ガチャガチャを活用して商品をPRする企業が増加しています。

クリエイターにとっても、ガチャガチャは作品を発表する最初の登竜門として活用されることも増えてきました。メーカーとクリエイターがコラボして商品化するケースも多く見受けられます。

極端なことを言えば、ガチャガチャの筐体を置く場所を確保してしまえば、誰でも手軽に自分の商品を販売することさえできるのです。これがガチャガチャビジネスの魅力です。

「銚電マンシール」や「涙活」で話題のあの人

今回はネットでもすでに盛り上がりを見せている、「赤の他人の証明写真」を紹介します。

クリエイターの寺井広樹さんが担当したオリジナルの商品です。寺井さんは、このコラムでも紹介した千葉県銚子市にある銚子電気鉄道の経営危機を救う一助として企画した「銚電マンシール」の考案者であり、能動的に涙を流すことでストレスの解消を図る活動「涙活」や、離婚を考えている夫婦の再出発の決意を前向きに誓い合う「離婚式」のプランナーとしての顔も併せ持っています。

「銚電マンシール」
「銚電マンシール」

「素」を見た結果、たどり着いた

赤の他人の証明写真を商品にしたきっかけについて、寺井さんは「私は人の『素』に関心があります。ただコロナ禍で、マスクが当たり前の生活になって人の素顔を見る機会がめっきり減ってしまいました」と、コロナ禍が一つのきっかけだと話します。

「その上、SNSでは『映える』や『盛る』などで写真は加工した写真ばっかりです。正直、SNSはしんどいなと感じる人は多いのではないでしょうか。私も疲れるときもあります。しかし、証明写真には、『盛る』というより、飾り気のない人の『素』が垣間見られます」と教えてくれました。

さらに、寺井さんが手がけた「離婚式」には、綺麗にドレスアップした結婚式とは違って、結婚式のように着飾る必要はなく、完全に「素」の世界があり、涙活も人は泣くと「素」になるそうです。これらの経験から寺井さんは、多くの人の「素」を見てきた結果、人の証明写真に興味を抱き、証明写真を人にもらったりしたところ、「ひょっとしたら、証明写真を欲しい人もいるかもしれない。それだったら、ガチャガチャにしてみよう」(寺井さん)ということで、証明写真の商品化へとつながりました。

「赤の他人の証明写真」
「赤の他人の証明写真」

「シュールでエモい」

とは言っても、寺井さんから商品を見せていただいたとき、私は「正直、怖いです。そして、シュールです!シュールです!シュールすぎます(笑)」と思わず言ってしまいました。

寺井さんは「確かにシュールでエモいです。そして、くだらなさがあります。見ていただけたらわかりますが、本物の証明写真です。この商品にはリアリティを追求しています」と話してくれます。

第一弾は10人の証明写真です。リアリティにこだわり、寺井さんの知り合いの証明写真が商品化されています。就職活動している人やパートの主婦でこれから面接を受ける人もいます。この中には小学校の教頭先生もいます。しかし、誰だかわかりません。

誰だかわからないことこそが、今回の商品の魅力です。

寺井さんは「こだわった点は人選です。誰が誰だと教えてしまうと、面白くありません。カプセルから出したとき、『誰やねん?』と突っ込みたくなることがポイントです。それぞれの人の証明写真を見て、この人は、どんな仕事に応募するのだろうとか想像するのも楽しいですよ」と教えてくれました。

選定した10人について「『この商品は、これが当たりです』と提示していないところもポイントです。人によっては、全部当たりかもしれませんし、全部ハズレかもしれません(笑)」(寺井さん)。

まさかの売れ行き

ただ、この商品の驚くべき点は、証明写真の商品化に賛同した10人だと思います。

そして、遊び方についても、「レコードのジャケットに貼ったり、カプセルごとインテリアとして飾るのもアリです」(寺井さん)

何度も言いますが、何とも言えないシュールさがこの商品の売りです。

そして、この証明写真は一枚一枚ハサミでカッティングしてカプセルに詰めて販売しているほど、手間がかかっています。かつ、販売箇所は1ヵ所だけです。東京の神楽坂にある「PEANUTS CLUB」というペットの衣食住サービスのビルの入り口の外で販売しています。ちなみに、PEANUTS CLUBさんのビルは、映画「天気の子」で主人公がバイトとして住み込みで働く編集プロダクション「K&Aプランニング」のモデルになったとされる建物です。

商品のディスプレイポップには、第1弾と書かれており、まだ何も決まっていませんが、第2弾も予定しています。ただ、ダミーをFacebookで告知したところ、「私も出たい」と寺井さんに売り込みがあるそうです。

正直、この商品は売れないだろうなと思っていたら、3月26日から販売開始してからの2週間足らずで1000枚も売れたそうです。1000人も証明写真を手にする人がいるなんて、驚きです。これぞ何が当たるかわからない、オリジナルのガチャガチャの魅力であると、改めて寺井さんに気づかされました。

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赤の他人の証明写真は10種類。1回300円。

「赤の他人の証明写真」。インテリアとしても=寺井広樹さん提供
「赤の他人の証明写真」。インテリアとしても=寺井広樹さん提供
ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。
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