連載
ウクライナ侵攻、想定では〝大きなロシア〟へ…でも「誤判断としか」
クリミア半島の成功体験
日々、事態が刻々と変化するウクライナ情勢。10代から「そもそも」の疑問を募ると、実は見落としていたかもしれない根本的な疑問が集まりました。「軍事侵攻でロシアが得られる利益は?」。元モスクワ支局長の、駒木明義論説委員が答えます。
ロシア側から見れば、今回の侵攻がうまくいけばロシアはウクライナを取り戻せたし、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に入ることも防げ、ロシアの影響圏が大きくなるので、「大きなロシア」ができました。
ですが、いまの世界は、家の敷地は柵で分けられていて、その柵の中にはお互い勝手に入りませんという仕組みになっています。勝手にその敷地を奪おうとすることは、どんな理屈があっても、いまの世の中では許されません。
つまり、プーチン大統領がやったことには、一つのプラスもありません。そもそも、ロシアが今回主張していることの一つである「ウクライナは核兵器を開発している」ということにも根拠がありません。
ロシアにとっては、ウクライナを手元に置きたくて今回軍事侵攻に踏み切ったのに、逆にウクライナは「こんな国とは金輪際一緒になりたくない」とどんどん離れていっています。
さらに、世界中から非難の声があがり、経済制裁を受け、国は傾いていくし国民の生活水準も落ちています。そういう意味ではプーチン大統領はかしこくないことをやっているし、判断を誤っているとしか思えません。
ロシア国内をみると、ロシア人の中にも「ウクライナだって最初は同じ国だったじゃないか。離れるなんてひどいじゃないか」と考える人はたくさんいます。
でも、だからといって隣に攻めていきましょうというロシア人はほとんどいません。「ウクライナがひどいことをやっているんだ」というロシア国内での宣伝を信じている人もたくさんいますが、今回の事態が起きる前に、国内に「ウクライナをやっつけろ」という声がたくさんあったわけではありません。
攻めはじめてから、「驚いてはいるけど、うちの国がやっていることは正しいんだろう」という非常に消極的な賛成の声だと思います。
ロシア国内では、今回の事態が起きてから世界中から反対の声も聞こえてくるし、どうも様子がおかしいという雰囲気になっていて、半信半疑になっている人が増えています。
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