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スパイ出身のプーチン大統領、ウクライナのNATO加盟を恐れる理由
「本当はロシアと一緒にいたいはずなのに」
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「本当はロシアと一緒にいたいはずなのに」
日々、事態が刻々と変化するウクライナ情勢。10代から「そもそも」の疑問を募ると、実は見落としていたかもしれない根本的な疑問が集まりました。「ウクライナがNATOに入るとなぜ困る?」。元モスクワ支局長の、駒木明義論説委員が答えます。
プーチン大統領はNATOについて、「ソ連はもうなくなったのだから、(旧ソ連の支配から逃れようと加盟する国もあった)NATOはもう必要ない」と考えています。
それなのに、かつてソ連だった国がどんどんNATOに加盟し、NATOがロシアに近づいていると感じています。それを「NATOはロシアを攻めようとしている、あるいは弱らせようとしている」と捉え、許せないと考えています。
要するに自分の「身内」であるウクライナがNATOにいっちゃうのが耐えがたいんですね。「ロシアはNATOから嫌がらせを受けていて、耐え続けてきたけど、もう我慢ができない。だからウクライナを攻めた」と考えています。
ただ、そもそも、NATOはロシアを攻めるつもりはありません。なぜかというと、NATOもロシアも核兵器を持っているからです。もしNATOがロシアを攻めた場合は核戦争になり世界が滅びます。したがって、正面切った戦争はできないのです。
でも、プーチン大統領は、正面切った戦争ではないにしても内側から弱体化させられることも恐れています。プーチン大統領はスパイの出身なので、そういう攻め方を自分はしてきたし、自分がその標的になる可能性も考えています。
ウクライナがNATOに行こうとしているのも、欧米がスパイや工作員の力を借りて国民を扇動したりしているのではないかと考えています。「本当は彼らもロシアと一緒にいたいはずなのに、無理やり引きはがされている」。プーチン大統領にはそう見えています。
そして、同じようなやり方をロシア国内でもやられるのではないかということも恐れています。
確かに、アメリカはロシアにもっと民主的な国になってほしい、もっと下品な言い方をすればアメリカにとって都合のよい国になってほしいという意図はあるでしょう。ですが、それはNGOなどを通じた動きであり、世界の取り決めとして悪いことをしているわけではありません。
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