連載
「親戚が家で暴れている状態」 ウクライナ侵攻、ロシアの主張と誤算
ロシア側、3つの狙い
日々、事態が刻々と変化するウクライナ情勢。10代から「そもそも」の疑問を募ると、実は見落としていたかもしれない根本的な疑問が集まりました。「プーチン大統領の目的は?」。元モスクワ支局長の、駒木明義論説委員が答えます。
プーチン大統領の考え方はいくつかあるのですが、一番最初の理屈は「ウクライナにいるロシア人の保護」です。
ウクライナの中にはロシア人がたくさん住んでいます。プーチン大統領の言い分では、彼らがウクライナからいじめられていて、それを守るのはロシアの責任であり、助けるためにウクライナをやっつけないといけないと言っています。
ウクライナ侵攻には、もう一つ、狙いがあります。
それは、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構、アメリカが中心となっている軍事同盟)に入ろうとしているのですが、それをさせないためです。
NATOは元々、旧ソ連から色んな国を守ろうと、アメリカを中心に様々な国が集まってできたものです。そこにウクライナが入ろうとしているということは、ウクライナはロシアの隣国ですから、そこからNATOがロシアに攻めてくるんじゃないかとプーチン大統領は心配しているようです。
そうさせないためにウクライナを攻めて、大統領をロシアの言うことを聞く人物にすげ替えようとしています。
最後に、「ウクライナはロシアと一緒にならないといけない」という言い分があります。ロシアはウクライナを一人前の国とは思っていません。
いまの世界は、家の敷地は柵で分けられていて、その柵の中にはお互い勝手に入りませんという仕組みになっています。ですが、ロシアはそもそもウクライナを「お隣さん」とは思っていません。自分の家の付属品、あるいは弟の家くらいでしょうか。
「ウクライナ(弟)は一応ちゃんとした家で、柵もあるけど、元々は同じ家。それなのに弟は生意気にも自分のところから離れてアメリカと仲良くなろうとしている」。プーチン大統領からすると、これが許せない。正義に反していると考えています。
「ロシアとウクライナは元はといえば同じ家で、いまは別の家のようにみえるかもしれないけど、本来なら一緒にならないといけない」と。だから、その「正しい状態」に戻そうということで攻めています。
プーチン大統領としては「正義の戦い」なのですが、ウクライナからみると、「確かに親戚かもしれないけど、その親戚が自分の家で暴れている」という状態だと思います。
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