連載
#6 #令和の専業主婦
専業主婦から在宅ワーク、短時間の「求職」に予想上回る応募…
専業主婦から在宅ワーカー、二つのメリット。
専業主婦も多く受講する、「ママ専用」のオンライン講座があります。在宅ワークが広まり、通勤時間を気にせずに働ける環境が少しずつ整備される中、ウェブデザインなどのスキルを持つ働き手は企業からの需要も高まっているそうです。一方で、家事の分担が女性に偏っている現状がある中、専業主婦が働きに出るには「壁」も。子育てをしながら働いたり、子育てに専念した後に再度働くための壁を低くする方法はあるのか。講座を運営するTimers社長の田和 晃一郎さんに聞きました。
――Timersでは専業主婦や育休・産休中の女性のオンラインでの学びをサポートし、受講後は在宅ワークで働く可能性も広がる「Fammママ専用スクール」を運営されています。専業主婦も受講するこの講座ですが、田和さんから見て、専業主婦から在宅ワーカーになった場合、働き手側のメリットはどこにあると思いますか。
2つあります。
一つは、育児・家事はもちろん大変なのですが、隙間時間がまったくないわけではなく、そのその隙間時間にお仕事をする機会を獲得し、収入に変えていけるというところです。
もう一つは、キャリア形成。
子育てなどで専業主婦になり、そこで完全なるキャリアブランクが5年、10年とできてしまうか、そうでないかは大きいと思います。
短い時間でも、時代にあった新しいスキルを得て、働き、報酬の額は大きくなくても、「専業主婦になりきらず」にキャリアを継続することができます。
――10年近いブランクがあると、確かに専業主婦側にとっても、働くまでの壁が高くなってしまう気がします。
例えば、お子さんが小学校の高学年くらいになったとき、小さい頃に比べると少し時間ができるかもしれない。そこで急に「社会復帰しよう」「正社員の職を探そう」と思っても、完全なブランクあるのと、少しずつでも在宅で仕事を積み重ねてきたというのとでは全然違うのではないでしょうか。
そういった意味で、短時間でも在宅ワークをすることは、長期的に見たときのキャリア形成になってくると思います。
――「専業主婦になりきらずに」というワードも気になりました。
男性が外で働き、女性が家で家事育児を、という0:1で物事を考えていた社会モデルの時代もありました。
でも、これからの時代は、専業主婦になったとしても、フレキシビリティーをもって、0:1じゃないキャリアの作り方が大切になってくるのだと思います。
――とはいえ、家事育児も大切な仕事です。専業主婦をしながら、働くことにも時間や労力を割くには、それ相応のメリットが必要だと感じます。
忙しい毎日の中ではなかなか想像できないかもしれませんが、人生100年時代といわれる中で、健康寿命も増えることを考えると、この先の人生で、もう一回働く可能性はあるはずです。それを見越したときのキャリア形成に、プラスになるということだと思います。
――「働きたいけど、子育てとの両立が難しい」と考える専業主婦もいると思います。どのような環境・職種であればそれは可能になると思いますか。
オンラインでできる仕事というのが大きいと思います。中でも、「新しいスキル」を身につけ生かすことです。
動画編集のスキル、グラフィックデザインなど、デジタル社会の進む中で、企業内にも新しい業務が増え、そのような専門的なスキルを持っている人には、短い稼働時間でもオンラインを基本としながら働くチャンスが広がっているのではないかと思います。
昨年2月から始めた「Fammオンラインアシスタント」という事業があります。これは、オンラインでできる業務を企業から受注し、卒業生を中心とした「オンラインで働きたい」というニーズのある方に紹介するものです。月30時間から働くことができ、現在累計100社ほどの業務を仲介しています。
この事業で請け負っているものの中にも、大手企業のSNS運用や動画編集などの業務も実際にあります。
――子育て世代の私生活での忙しさと仕事の両立は正直大変で、子育て中は専業主婦として私生活に比重を置きたいという方もいると思います。ライフステージの変化と「働く」との関係性についてはどう考えますか。
国際的にも日本は男性の家事育児参加時間が少なく、女性に偏っていることを鑑みると、専業主婦だけが自分の状況や「働く」と向き合うのではなく、男性がより家事育児を担い、選択肢を選べる環境整備が必須だと思います。
その現状を踏まえた上で、専業主婦として子育てに比重を置く方がいるのであれば、「専業だから」といって0:1で考えすぎることなく、その間に可能な範囲で在宅ワークなどにチャレンジし、キャリアブランクを埋めて、子どもが大きくなってから、社員として社会復帰していくのがきれいなかたちだと思います。
――社会の側にも柔軟な姿勢が求められていると思います。
子育て中に働く意思のある方たちを受け入れ、活用するという観点でいうと、働き方の多様性を認めていくということだと思います。
コロナが追い風になっていますが、リモート勤務や、フレックスタイムが重要です。人手不足の中で、柔軟性のある多様な働き方を受け入れていかないと、企業側にとっても人材確保が厳しいと思います。
――Timersが運営する「Fammママ専用スクール」とは、どんな講座ですか。
ウェブデザインや動画編集などの基本的なスキルを1カ月で学ぶもので、元々は各地に教室を開いていましたが、いまはオンラインに切り替えています。
家で子育てをしている人にも学びやすい環境にしたいと思い、スクールの間は集中できるよう、無料でシッターを利用できるようなサービスも提供しています。
――どのような方が通われているのでしょうか。
これまでに2000人以上の卒業生を輩出していますが、ある受講月には、半分以上が専業主婦の時期もありました。全体をならすと、7、8割が産休・育休中の方です。
産休育休中に、復帰後を見据えてスキルアップのために受講する人もいれば、子育てを機に働き方を変えるために在宅ワークへのチャレンジも視野に受講する人もいます。
――専業主婦の方の動機は。
子育て中の専業主婦の方が多く、「育児をしながらでも在宅で働ける方法があるなら働きたい」というニーズがあります。
在宅でできる仕事のスキルを身につけるために、これもまた、家にいながら勉強できるオンラインスクールという方法をとられているようです。
――子育て中の方というと、年齢層は30代くらいが中心でしょうか。
圧倒的に30代が多いです。
産休・育休中の方も多いため、お子さんの年齢は0歳からの低年齢。そのくらいの時期は、キャリアを考え直す時期でもあり、復帰するにしても、転職するにしても、なにか新しいスキルを身につけたいという方々です。
――1カ月でスキルが身についたとして、その後の仕事につながるものでしょうか。
1カ月で学べることには限界があるので、その後のフォローアップで、受講した講座外のITスキルなど、動画で学べる講座なども提供しています。
さらに、「Fammオンラインアシスタント」では、卒業生を中心とした「オンラインで働きたい」というニーズのある方に、累計100社ほどからの業務を仲介しています。
――企業側からも、在宅ワーカー雇用のニーズがあるということでしょうか。
企業側は、一人雇うほどではないけど、ウェブ関係の専門知識を持って仕事ができる人を探しています。そのニーズに応えるため、我々を経由して、在宅のオンラインワーカーを紹介しています。
オンラインワーカーの登録者は、約2000人います。
みなさん子育てをしながらも、在宅で働きたい人たちです。始めて1年ほどでこれだけの登録者数がいることに、働き手側からのニーズも感じていますし、それは我々が思っている以上に大きかったです。
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