ネットの話題
展示場の窓覆う布「絶対めくらないで」動物園が投稿した訴えが話題
大人こそ知って欲しい、命守る取り組み
栃木県那須町の動物園・那須どうぶつ王国がツイッター上に投稿した、切実な訴えが話題を呼んでいます。来場者が、ついやってしまいがちな行動を控えるよう、呼びかける内容です。「動物の生き方を変えてしまうかもしれないと、知って欲しかった」。投稿した飼育員に、胸の内を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
14日、那須どうぶつ王国の公式ツイッターアカウント(@nakprstaff)が、「※お願い※」という書き出しのツイートを公開しました。
添付された2枚の画像に写っているのは、動物の展示場です。よく見ると、窓全体が白い布で覆われ、「お休み中」と書かれた貼り紙も掲げられています。
その様子について、本文で、こんな風に解説されているのです。
「人間は動物たちの生活の場にお邪魔する立場。尊重したい」「ルールはしっかり守らないと」。ツイートには多くのコメントが連なり、4千超の「いいね」もつきました。
※お願い※
— 那須どうぶつ王国 (@nakprstaff) March 14, 2022
動物園では動物へのストレスを極力減らしたり、少しずつ環境に馴れてもらったりするために展示をお休みしている場合があります。
その際、カーテンや目隠し等を使用しています。
よくカーテンを捲ったりカーテンの留め具を外す等して中を覗いてしまう方がいます。
絶対にお止めください。 pic.twitter.com/K6CQo9eDob
共感を集めたメッセージは、どのような経緯から発信されたのでしょうか? ツイートを投稿した、同園動物チーム保全チーム飼育技師の橋本渚さん(28)を取材しました。
橋本さんによると、公開された画像は、アフリカなどの砂漠地帯に棲(す)むネコ科の動物・スナネコの展示場で撮影されました。メスの「ジャミール」とオスの「シャリフ」、その間に今年2月に生まれた、3頭の子猫向けのスペースです。
ジャミールと子猫たちは現在バックヤードにいます。一般公開も休止中ですが、子猫の成育ぶりを確認しつつ、3月18日から再開予定です。これに先立ち、閉園後を中心に一定時間展示場に入れて慣れさせる取り組みが、約1週間前に始まりました。
窓が布で覆われているのも、その一環です。スナネコの飼育担当として携わる橋本さんいわく、非常に重要な意味があるといいます。
「生後間もない子猫たちは、とても敏感です。いきなりたくさんの人間に囲まれると、強いストレスを感じ、餌を吐き戻すなどしてしまいます。そのため、窓から入る光や音を抑え、人間の姿や声に順応しやすい状況をつくっているんです」
こうした事情から、適度な遮光性・遮音性を得る目的で、今回は園内の救護室に備蓄しているシーツを活用しました。普段はロールカーテンなどを使いますが、生態に未知の点が多いスナネコのため、知恵を絞ったそうです。
橋本さんによれば、動物にとって、幼少期に展示場で負荷を感じる経験は、成長後も尾を引きます。物陰に隠れたまま動かなくなったり、食事を十分に摂(と)らなくなったりするのです。結果として、病気がちになる恐れもあります。
そのため同園では、取り組みを実施している部屋の前に、「お休み中です」「練習中です」と記載した注意書きを設置してきました。しかし、壁に布を固定する画びょうなどを外して、窓の中をのぞき見ようとする人々は少なくありません。
「以前、別の動物の展示場を消毒作業中だった時のことです。突然窓の覆いが開き、来場者の方と目が合いました。場内の動物がパニックに陥っていたのを覚えています。人間がいる環境がストレス源になるというのは、本当に一大事なんです」
そして、好奇心に駆られて布をめくるのは、子ども以上に大人であることが多いといいます。橋本さんは「大半の方々はきちんとルールを守ってくれている」としつつ、啓発のため、今回のツイートを作成したと打ち明けました。
ちなみに施設にやってきたばかりだったり、高齢で長時間の展示に耐えられなかったりする動物も、布で覆われた部屋で暮らすことがあります。様々な理由で、人目から遠ざけられている生き物がいる。それも、動物園の現実の一端です。
カーテンの中には
— 那須どうぶつ王国 (@nakprstaff) March 14, 2022
環境に馴れている最中の動物
産まれて間もない動物
繊細な性格の動物
休息が必要な動物がいます。
覗いてしまうことで大きなストレスを与えてしまうことがあります。
動物園では動物への思いやりをしっかり持ってお楽しみください。 https://t.co/CKtyJtKEg7
橋本さんの訴えには、賛同的なコメントに加え、「外国語の案内文も掲示した方がいい」といった声も寄せられています。この結果について「幅広く思いが伝わってありがたい」と感謝した上で、次のように話しました。
「動物園には、家畜から野生生物まで存在します。一種一種、必要な対応や関わり方は全く違うんです。そうした点を踏まえ、動物に対する思いやりを忘れず、展示場の見方を意識して楽しんで頂けたらうれしいですね」
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