コラム
18歳はローンを組める? 成人年齢引き下げクイズ、「大人の方が…」
18歳成人を決めたのは当事者ではなく、現在大人であるわたしたちです。
2022年4月1日から、成人年齢が18歳になります。10代の孤立の解決を目指す認定NPO法人D×P(ディーピー)は、1~2月にかけて「18歳成人で法律上できるようになること・できないこと」をクイズで出題すると同時にアンケートをとる試みを行いました。正答率は世代によってまばらで、20歳以上の方が誤答する割合が多かった問題も。18歳成人、当事者だけに「変わること」を押しつけていませんか?D×Pからの問題提起です。
D×Pは、1月28日から2月3日までの間、特設サイトで「18歳成人で法律上できるようになること・できないこと」の一部をクイズ形式にし、アンケートを実施しました。アンケートには、ユキサキチャットに登録する13〜25歳など計452名が回答しました。
まずは、「18歳成人についてどう感じるか」について聞いてみました。
「責任が増えたり大人の扱いをされたりすることに自信がない」(18歳)
「責任を持てるような人間になりたいけどあと3年でなれるか不安」(中学生)などと不安感を持つ人がいた一方、
「不安はあるが、政治などに自分の意見が反映されるのは新鮮」(16歳)
「18歳になったら物事を自分で決められる性格になりたい」(17歳)といった、前向きな言葉も聞かれました。
また「未成年後見人がなくなるので、今以上に一人で生きていく覚悟を固めようと思います」といった、頼れる親がいない状況にいる17歳からの回答もありました。
※未成年後見人とは、親権者のいない未成年者を監護・養育し、財産を管理したり、遺産相続や契約などの法律行為を代行する人のこと。
アンケートと共に実施した、10代を対象としたクイズ「18歳成人で法律上できるようになること・できないこと」での正答率がいちばん低かったのは、「大型・中型自動車免許がとれる(トラックなど)」(正解は×)でした。2番目に低かったのは、「ローンを組んで大きな金額の買い物をすることができる」(正解は○)。
回答者の年齢別で正答率を見ると、「たばこを吸ったり、お酒が飲める」(正解は×)は、17歳・18歳の当事者は正答率100%に対して、20歳以上の正答率は87.8%と、当事者を下回る結果となりました。
その他の正答率に関しても回答者の年齢によってばらつきが見られ、18歳を迎えるまでの教育の重要性とともに、成人している人も18歳成人によって変わること、変わらないことを理解していく必要があると感じます。
ちなみに、クイズは全部で9問。中には、分籍(親の戸籍から抜けること)ができるようになるかどうかを問う問題も入れました。(正解は○)
これまでD×Pの「ユキサキチャット」に寄せられてきた相談の中には「親の暴力から逃げている」「家族から何度もお金を要求されるのがいやだ」といった、家族との関係性に悩むものも多くありました。
家族との関係性で悩む人たちに向けて、分籍という方法で家族と距離を置く方法もあるのだと伝えたくて、この問題を入れました。
民法の成年年齢には、「一人で有効な契約をすることができる年齢」という意味と「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。どちらも、自分の意思で様々なことを決定できる自由を得て、付随する責任を負うということです。
18歳成人を決めたのは当事者ではなく、現在大人であるわたしたちです。18歳、19歳に自覚や自立を促すのならば、すでに成人を迎えている大人も一緒に学び、考え、変わっていく必要があるのではないでしょうか。
家庭や学校だけが教育の場ではありません。社会のなかで学べるように、正しい情報にアクセスできる環境をつくることや困った時の相談先を用意すること、契約書の内容を十分に説明すること、困っている若者に相談先を案内することなど、できることはひとりひとりにあるはずです。
少子・高齢化が進み、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)も下降しています。
2022年2月に総務省より公表された人口推計(令和3年9月確定値,令和4年2月概算値)によると、生産年齢人口は 7455万5千人。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、2029年には7000万人、2040年には6000万人となると予測され、日本経済全体の縮小、地方の過疎化、社会保障制度の保持が難しくなるなど様々な課題が懸念されています。
日本の未来を担う若者が安心して活躍できるように。新成人に「自立や自覚」を求めるのではなく、大人も一緒に学び、ひとりひとりが活躍できる社会をつくっていきませんか?
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