お金と仕事
山本太郎さん、なんで「消費税ゼロ」にこだわるの?本人に聞いてみた
とにかく「積極財政」を訴える理由
去年の衆院選で3議席を獲得し、所属議員が衆参両院で5人になったれいわ新選組。とにかく「積極財政」を訴える、れいわ新選組とはどんな政党なのか。毎月10万円給付されると何が起きるのか。代表の山本太郎さんにYouTubeたかまつななチャンネルで聞きました。※2021年12月27日の取材を記事にしています
――れいわ新選組の街頭演説を取材させてもらいましたが、熱気がすごかったですね……。一度、聞いてみたかったんですが、れいわのカラーはどうしてピンクなんですか?
好きだからっていう、ものすごく単純な理由。何か意味があるわけではなく。昔からピンク色のポロシャツとか着ていたんですよね。芸能界にいたときからピンクが好きな色で。あれ、たかまつさんの名刺入れがピンクですけど、隠れれいわ支持者、もしくは信者ですか?
――カメラケースが赤なので。自民か共産かもしれないです。
超党派系で。ありがとうございます。
――そもそも、からお聞きします。れいわ新選組は、何を理念にした党なんですか?
生きているだけで価値がある社会を作りたいという非常にシンプルな理念ですね。今の社会って生きているだけでは許されないような空気があるじゃないですか。何かの役に立っていなきゃいけないとか、何かに貢献していなきゃいけない、生み出していなきゃいけないという、生産性で物事が測られるような社会で、こんな地獄のような世の中をやめたい。生きているだけでいいじゃないかと。生きているだけで価値がある社会を大きなビジョンとしていこうということですね。
――れいわの支持層はどんな人なんですか? やっぱり生活が厳しいと感じている人が多い?
幅広いですね。生活が厳しい人たちが応援しているんじゃないかというイメージがあると思うんですけど、そうではなくて、富裕層の方もいらっしゃいますし、今の社会に対してすごく不安がある、このままじゃまずいだろうという思いを持った、かなり幅広い層の方々からご支援いただいています。年代で言うと、いちばん厚い層はたぶんロスジェネ世代かなと思いますね。
――どうして既存の政党ではなく、れいわを支持していると思いますか?
何十年も続いてきた既存の政党では政治が変えられなかった。より悪くなったという部分を考えるならば、やはり新しい勢力で何かしらやらかしてくれるんじゃないかという期待感が支持に繋がっているのではないかな。もちろん、一番しっかりと支援してくださる方々は、私たちの政策を買ってくださっているとは思うんですけど。
――そうした支持者の期待を、どうやって実現していくつもりですか? これまでの政党と違うところは?
捨て身なところじゃないですか。普通、議員は議員であり続けることが目的ですから。私にとっては議員であり続けることは目的ではないということですね。
だからこそ2019年の参議院選挙のときは、戦略として先に舩後さん、木村さん、重度障害者と難病患者を先に上げるということをやったわけですね。自分が落ちるかもしれないリスクに関して、実際に落ちてしまいましたけれども、自分が議員でい続けなきゃいけない気持ちよりは、その状況に応じていつでも捨ててやるよと。目的はこの社会を変革していくことです。そういった意味で、これまでの政治家とは大きく違うと思います。
――ご自身を3番目にされたのはかっこよかったです。ああいう姿勢は皆さんの熱も生んでいる感じがしますね。
あれで受かっていたらかっこよかったんですけどね。まんまと落ちているところがもったいなかったというか、残念でしたけどね。
――寄付もすごく集まっていますよね。2019年が5億円で、2020年が2億4000万円。どうしてそんなに寄付が集まるんですか?
はっきりと答えにすることはできませんが、多くの悲鳴が集まっているんだろうと。もちろんそれは当事者、苦しんでいる人たちだけではなく、この先の日本を憂いている人たちから集められた寄付だろうと思っています。
――今回、ご自身は自民党の石原伸晃・元幹事長の東京8区から立候補すると宣言したものの、野党共闘の中では立憲民主党の候補者にすでに一本化されているとして批判を受け、選挙区の変更を余儀なくされました。ぶっちゃけなんであんなことになったんですか?
(反省点としては)立憲側にもっとしっかりと根回しをしておいていただくことの念押しだったり、そういう部分じゃないですかね。それが十分にされていなかったことが原因かなと思います。されていれば状況は変わったかもしれない。根回しという部分が十分でなかった結果、ハレーションが大きくなって、自分自身の決断として、これはもう引いたほうがいいだろうということを決めたということですかね。
――政策についても伺いたいです。政策はどのように作っているんですか?
私たちが一番大きく訴えているのが経済政策なんですけども、25年不景気が続いている状況に対して、コロナがやってきてダブルパンチですね。この状況でできることは何かと考えたときに、当然一人ひとりが使えるお金を増やしていく。みんなの生活を底上げする以外にないわけですから。じゃあその方法としてどういうことができるかと考えたら、減税です。他にも給付金や家賃の補助など生活の基礎にかかる部分に対して底上げをしていく。だからまず、社会を引いて見たときに、何が足りていないかを見つけて、それを何に落とし込んでいくかという方法で決めていますね。
――政策の中で山本さんは、「消費税ゼロ」を一環して掲げていらっしゃいます。そもそも税を集める目的についてお伺いしたいです。
「みんなから搾り取ったものを分配するのが税。国が何かをやろうとしたら、皆さんから搾り取った財源がなければ手当はできません」というのは間違いです。税とはそういうものじゃない。
例えば社会に出回っているお金を増やしたり減らしたりできるのが国の仕事なんです。お金が減りすぎると不況になります。日本は不況が25年続いている。先進国の中でも唯一ですよ。何が起こっているかというと社会に十分にお金が回っていない。このときに消費税を増税しますとなったら、さらに社会に回るお金が減って不況になります。誤った経済政策を元に、25年間、景気が悪いんですね。
じゃあ何をしなきゃいけないかというと減税です。他にも足りていないところにどんどんお金を入れてお金を増やすことを国がやらなきゃいけない。すると、デフレという状態からインフレになり、お金が回りだしているという状態が生まれてくる。インフレが進みすぎるとよくないので、お金を間引くこともしなきゃならない。それが税金ということです。
――税金は、財源の確保が目的なのではなくて、景気を調整する手段ということなんですね。
おっしゃる通り。財源の確保というのは財務省の刷り込みです。メディアでは一切言われないことですね。
――れいわニューディールについてもお伺いしたいです。積極財政を掲げていらっしゃいます。安倍政権は企業の負担を減らした一方、個人には結局お金が回らなくて失敗しました。れいわは個人に現金給付をするという考え方で、個人がどんどん消費すれば景気が良くなると。私は個人が消費しても、また企業が内部留保するだけじゃないかと思うんですが、どうお考えですか?
現金給付をして景気が良くなったとしても、企業が内部留保して利益を溜め込むんじゃないかという話ですけど、これは状況が変わるかなと思っています。社会にお金が回ると、企業がこれまでやってこなかった投資などにもお金を入れてくるんですね。
例えば、潰れそうだった店にお客さんが入るようになったら、テラス席を作ろうかとか、2号店を出そうかとか、企業側も投資をするんですよね。すると、事業規模が拡大する中で、働く人を確保するために賃金を上げないと人がつかまらなくなる。今は人手不足と言われているけど、実はそうじゃなくて、賃金不足だということですね。そこをいかに補うかが必要です。
――れいわは、インフレ率が2%以内だったらもっと積極財政をしたほうがいいと言っていらっしゃいます。私はもしその理論に立つとしたら、個人にお金を給付することよりも、国が新しい産業を作ったりしたほうがいいのではないかと思います。毎月10万円を4年間給付した場合、たぶん600兆円ぐらいお金がかかると思うんですけど、600兆円あったらいろいろ新しいことができるんじゃないかなと思ったりもします。そこはどうお考えですか?
現金給付だけやればいいという話はしていません。1年間、月10万円をこの国に生きる1億2000万人に1年間配ったらどうなるか。参議院の調査情報担当室が試算してくれました。
結論から言うと、今のルールのもとでも、毎月10万円の給付を数年に渡って行えるぐらい、日本は財政に力があることがわかりました。財政規模はこれぐらい出しても問題ないということです。1年間の予算とは全く別に、毎月10万円配るだけの力が日本にはあるんだということが示されたわけです。
話を戻すと、例えば1年間の予算に加えて144兆円を新たに出せるならば、国内の状況を見て生活が地盤沈下しているところを引き上げていくための現金給付も必要だし、消費税をやめたり新しい産業にお金を出していくことも当然必要です。その中身は、必要なものを入れていけばいいという考え方です。
――最大でそれができることを示したかっただけで、それを現金給付に全部回すわけではないということですね。ところで、私はシルバー民主主義が非常に問題だと思っているんですけど、若い人ほど人口が少なくて選挙にも行かないから、若者の声が反映されにくい。教育費も先進国の中でこんなに少ない国は日本ぐらいです。シルバー民主主義はどうしたら打開できると思いますか?
若い人たちが気付くしかないですね。はっきり言えば主権者教育を受けていない大人たちが、この世の中をここまで壊したということです。若い人たちが力を合わせて、泥舟を一刻も早く岸につけるという状況を作り出していかなきゃいけないと思いますね。
――私たちの会社は笑下村塾という会社で日本で主権者教育を全国規模でやっている会社なんですが、全国規模で主権者教育をやっているところは1社しかないんです。もともとは私たちの会社だけじゃなくて、他のNPOとかもたくさんいましたが、みんな撤退しちゃいました。資金繰りの難しさからです。私たちが潰れてはいけないと思って、今、各自治体と連携できないか、いろいろ模索しつつ、海外の事例も取り入れたりできないかとか考えている段階なんです。
そういったところに対しても予算を付けるという状況を前に進めるためには、積極財政を押すしかないですよ。できないことじゃなくてできることだから。逆に言ったら、税の中で配分を決めなきゃいけないという考え方だけにとらわれていたら、そこにたぶん予算は付かないと思います。
――100兆円の中での奪い合いだと、主権者教育はやっぱり優先順位が下がってしまうということですね。
主権者教育。最低限の政治をちゃんと監視しようぜ、コントロールしようぜという当たり前のことがこの国では共有されていない。それどころじゃないんだっていうようなところに追い込まれている。その状況を変えていくためには、一人ひとりの生活が安定して、たとえ仕事を失ったとしても生活なんとかなるしなっていうようなセーフティーネットがあってというような状況を作っていかなきゃならない。
ただ主権者教育があるだけでは弱いじゃないですか。社会の安定だったり、個人の生活の安定というものとセットであったときに、その威力はもっと大きくなると思うんですよね。
だから積極財政。4兆円、年間払うだけで教育、大学院まで無料にできるんだよって。数百万人が苦しんでいる奨学金もチャラにできるし。今ここでお金を出さないと。一番価値のあるお金の出し方をしようと。だから、そういう部分をたかまつさんにもぜひ強力に牽引していただきたいな。
――政治家の取説をぜひお伺いしたいです。若い人にとって政治家は身近じゃないと思うので、れいわ新選組の議員さんをこう使ってくださいみたいな取扱説明書みたいなのを教えていただければと思います。
議員本人が心を動かされるかどうか。それやらなあかん、これはやろうという思いになるかどうかですね。政治ってすごく幅が広いじゃないですか。例えば、教育の問題、労働の問題、介護の問題といたあらゆる問題、かなり広範な問題を取り扱うのが政治という場所ですけど、全てについて議員の皆さんがご存知なわけじゃないので、こんなことも知らんのかということではなくて、このことをぜひ深めていただきたいと議員に教えてやる、レクしてやるというスタンスでいろいろやり取りするのが一番いいと思います。
――最後に、若い人はれいわに入れたほうがいいですか?
横に広げていただきたいですね。興味のない人を巻き込んで。選挙なんていいよと言っている人をお茶に誘うとか。久々しゃべろうよって言いながら。
私たちが中規模政党になるまでの時間を極力短縮して、今、政治によって社会が壊されている速度を緩められないか。政治を変えることは、世の中を変えることは決して無理なことじゃない。この国のオーナーである皆さん次第。その中でも若い人たち、すごく大きな力を持っていますよ。若い人たちが大人がやっているいい加減なことに対して、いい加減にしろというツッコミとともに政策を打ち出していく後押しを、ぜひしていただきたいと思いますね。
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