MENU CLOSE

エンタメ

ミルクボーイが〝消えた〟報道に怒った理由 劇場へのあふれる愛

キー局出なくても「食べられてますんで!」

ミルクボーイの駒場孝(左)と内海崇=栃久保誠撮影
ミルクボーイの駒場孝(左)と内海崇=栃久保誠撮影

目次

「見事にテレビから消えた」。昨年末、そんな見出しの記事で取り上げられたのは、「M-1グランプリ2019」で優勝したミルクボーイの内海崇と駒場孝だった。真相をたしかめるため本人たちに直撃すると、あふれんばかりの〝漫才愛〟に満ちた言葉が返ってきた。劇場もテレビも関西にこだわる理由、番組最後の放送になった志村けんから受けとったもの。「M-1」チャンピオンの〝それから〟を聞いた。(ライター・鈴木旭)

「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)

 

ミルクボーイ
2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生として出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを受け、合格し正式に吉本所属となる。2017年1月にはツートライブ、金属バット、デルマパンゲをレギュラーゲストに迎えてライブイベント「漫才ブーム」を立ち上げた。2019年に「M-1グランプリ」で優勝。現在、テレビでは『ごきげんライフスタイル よ〜いドン!』(関西テレビ)、『よんチャンTV』(毎日放送)、ラジオでは『ミルクボーイの煩悩の塊』や『ミルクボーイの火曜日やないか!』(ともにABCラジオ)など関西でのレギュラー番組多数。週末は劇場で1日10ステージ以上の漫才を披露している。
 

「最初から関西でやるって言ったし」

――今年1月10日に放送された『ミルクボーイの煩悩の塊』(ABCラジオ)の中で、「にゃんこスター、はんにゃ、ミルクボーイ…消えたお笑いコンビの現在は?」というネット記事が出たことに対して内海さんが「関西全員が怒らなあかん」と発言されていました。

内海:一番は「最初から関西でやるって言ったし!」っていうトコですよ(笑)。そこが飛んでもうてるのに「関西でひっそり」って書かれてるのがね。なんか隠れてるみたいな。

やっぱああいう記事って勘違いを生むじゃないですか。ツイッターとかで見てもらえればどんな活動しているかすぐわかるんです。でも、読者はそこまでいかなくて、その記事だけ見て「あー、そうやな。出てないな」って思ってしまう。

駒場:これでホンマに何もなかったら、ダメージ食らうかもしれないですけど(笑)。腹は立ちますけど、ああいう記事は別にもうええかなと。内海はそれを面白おかしくラジオで言っただけなんで。自分らのポジションは一応作ってるつもりやし、「関西でちゃんとやってます」っていうのがありますから。


――現在、準レギュラーを含めるとテレビとラジオのレギュラーは7本。関西では売れっ子ですよね。

内海:ルミネtheよしもとに出演するタイミングで『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)とかも、ちょいちょいは呼んでいただいたりもするんですよ。けっこう関西のレギュラーが忙しくて、月曜日は東京でオファーいただいても来られませんし、金曜も生放送があって難しい。

そんな感じだから、毎日いろいろあって休みもないんです(苦笑)。土日も劇場に出てますからね。それで「消えた」って、俺がやってるこれは何なんやろうっていう。関東の人とかの目線が気になったというか。

駒場:なんか定期的に出ますよね、「ミルクボーイ、どこ行った?」みたいなのが(笑)。

内海:去年の春から、関西でレギュラーがめっちゃ増えたんですよね。月曜の『ごきげんライフスタイル よ〜いドン!』(関西テレビ)は円広志さん司会で14年ぐらい続く朝の顔みたいな番組ですし、夕方からは『よんチャンTV』(毎日放送)、収録ですけど深夜にABCラジオの『ミルクボーイの煩悩の塊』が放送されてます。

火曜日はお昼に生放送のラジオ番組『ミルクボーイの火曜日やないか!』(前同)、金曜日も『2時45分からはスローでイージーなルーティーンで』(関西テレビ)っていう1時間の生放送番組があるんですよ。

ミルクボーイの内海崇=栃久保誠撮影
ミルクボーイの内海崇=栃久保誠撮影

テレビ出なくても「食べてるっちゅうねん」

――お笑いに詳しくない方は、「劇場中心の活動で生活できるのか」という疑問もあるのかもしれないですね。

内海:漠然とした芸能界のイメージがあるのか、「テレビ出なくても営業で食っていけてそう」みたいな。めちゃめちゃ食べてるっちゅうねん(笑)

――今は1日何ステージぐらい出演されているんですか?

内海:明日は11ステージと漫才番組の収録です。土日は劇場をけっこう入れていただいてますね。1ステージいくらって感じで、劇場によって多少は出演料も変わると思いますけどほとんど同じです。コロナでお客さんが半分の時は半額とかありましたけど、もうけっこう戻ってますね。M-1優勝前までは一番下の1ステージ2000円。今はそこから相当上がってます。そこはもうチャンピオンですから(笑)。

駒場:上げてもらいましたね(笑)。

――ラジオ番組の中で内海さんが「劇場は地道じゃなく一番華々しい」とおっしゃていました。

内海:劇場は華々しいですよ。だってテレビのロケなんてめちゃ長いですし。ただ、その代わりテレビのほうが影響力はありますよね。

駒場:先輩らも「テレビで稼げたのは昔や」って言う人が多いですね。僕ら羽振りがいい頃のテレビは出てないからわからないですけど。たぶん見てる人もそのイメージがあるんでしょうね。「テレビに1回出たら何十万、何百万もらえるらしい」みたいな。そのままのイメージで見てる人も多いんだと思います。

内海:今は別にテレビに呼んでもらった時に「これなんぼ?」とか、そんなに思わないというか。でも、明細を見た時に「裸であんだけやって、これかい!」っていう番組はあります。たまに、「え!?」ってなりますから……。

駒場:舞台はテレビより稼げるかもしれないですけど、その分スベッたら2人だけの責任ですからね。もちろんテレビも緊張感あるし、前出なあかんトコはありますけど、大勢の中にいて何もしゃべらんでも2時間の収録は一応終わりますよね。

漫才は2人しかいないので、スベッてむちゃくちゃになったら、コンビだけで何とかしなきゃいけない。その緊張感はぜんぜんテレビと違いますね。あと、ネタを作る過程もあってのお金なんで、そらたくさんもらっててもおかしくない。それが漫才っていう作品やから、とも思いますし。

ミルクボーイの駒場孝=栃久保誠撮影
ミルクボーイの駒場孝=栃久保誠撮影

「大阪のお笑いが一番面白い」

――現在、大阪を拠点に活動している一番の理由は何でしょうか?

内海:やっぱりNGK(なんばグランド花月)ですね。東京の人は変に思うかもしれないですけど、劇場の感じとしては一番やと思うんで。「日本一いいと思うところでやりたい」っていうのがあります。

駒場:僕はちっちゃい頃から吉本に入りたかったのが大きいですね。今でこそ東京の養成所もありますけど、僕らの時は大阪しかなかった。「大阪のお笑いが一番面白い」と思ってあこがれてたんです。僕、中学・高校と横浜で関東にいたんですけど、「お笑いやるなら絶対大阪に行かなあかんな」って、それしかなかった。

大阪のお笑いが面白いと思うし、今も一番面白いんじゃないですかね。それなら一番面白いところにいたほうがいいって考えですね。


――東京にもたくさん劇場はありますが、違いはありますか?

内海:僕はNGKのほうが堂々とできますね。NGKで観たほうがおもろいんかなとか思って。たぶん「本拠地でやってる感」「ホーム感」があるというか。

駒場:たしかに。観てる人の感じも違いますね。

内海:なんとなく、「ミルクボーイを観に大阪に来たよ」っていう人が多いんかなって空気感がありますね。もちろん東京の劇場でも喜んでもらえるんですけど、「テレビの人気者を劇場に観に来た」みたいな雰囲気を感じることがあるんで。勝手に思ってるだけでしょうけどね、自分が。

ホーム、アウェーで言うと、NGKは最初から「期待されてるな」って感じる。モニターにミルクボーイって出たら、「おーっ」って声も起こりますし。そういうのが嬉しいですね。

駒場:その感じはあります。でも、「このボケは、東京だとスベるけど大阪だとウケる」とか、そういう意味での大差はないです。そこは僕らも、東京でもどこでも全部ウケたいですし。期待感が違うんじゃないですかね。大阪だと僕らのこと知ってくれてる人がより多いし、定着できてるってことの反応の違いぐらいだと思います。

内海:あと大阪のほうがいっぱい出てるのも大きいでしょうね。


――かまいたち、見取り図は東京で活躍しています。

内海:かまいたちさんは大阪でだいぶ前から活躍してましたからね。芸歴2年目ぐらいから十何年ロケ番組に出続けてますから。そらめちゃうまいですし、売れるやろって感じですよ。それと比べたら、まだ僕らはかまいたちさんがM-1決勝に行く前の量もいってない。

ただ、たくさんテレビに出てることに対する嫉妬みたいなものはマジでないかもしれないですね。ただ、劇場の比重が大きい僕らはウケなあかんなと思ってます。「漫才やったら負けられへんな」っていう思いぐらいですかね。

駒場:コンビの方向性もあるやろうし、テレビは別物って感じがしますね。

内海:違う道を走ってる感じがしますね。好きでこっちの道に来てるのに、「あっちの道ええな」と思わないじゃないですか。そもそも違う道に、上とか下はないと思うんですよね。

『だいじょうぶだぁSP』最終回に出演

――ミルクボーイと言えばM-1決勝で披露した“リターン漫才”をイメージしますが、劇場では別のパターンを試されていたりもするんですか?

駒場:もともと違う形でもやってたんですよ。だから、「一生やるぞ」ってこだわってる感じでもなく、面白いのが思いついたら別のパターンもやるしって感じですかね。

内海:僕らもあの形を一時期やってなかった時に、先輩から「あれ面白いのにもうやらへんの?」と言われて向き合ったところがあるんですよ。そこから新ネタを作り続けて、「もうないもうない」と言って何年も来ましたからね。さすがにもうテーマないやろって探したら、まだあったりする。「まだこんなんあったか」みたいな発見がおもろなってもうてるかもしれないですね。そこに意地になってるというか。

僕らも何であれをずっとやり続けてるのかわかんないです(笑)。飽きたりもしないんですよね。M-1決勝のコーンフレーク以降、「ネタによって進化してるな」って自分らでも思うんで。進化してないなと思ったら飽きて来るでしょうね。


――「飽きずにネタを作り続ける」という姿勢は、志村けんさんとも通じるところがあります。お二人が出演した『志村けんのだいじょうぶだぁ 笑いで頑張れニッポンSP』(フジテレビ系・2020年3月放送)が、結果的に『だいじょうぶだぁスペシャル』の最終回となりました。

内海:本番が始まる前に「M-1見たよ、面白かったねぇ」という言葉をいただいて、「ありがとうございます」ってお伝えして。その後、志村さんのコント中に漫才披露させてもらったんです。終わってからも「面白かったよ」と言っていただきました。緊張した体験としてはけっこう上位に入ります。

駒場:めっちゃ嬉しかったですね。現場はテーマパークみたいに、ここはスナック、ここはお城、ここは公園って感じで、いろんなセットが組まれてました。1個のスタジオに何個もセットあったんは覚えてますね。

内海:その感じを見られたのもええ経験でしたね。志村さん、その後何本もコント撮るって言ってました。僕らが見たのは、志村さんがちょっと酔ってる役やったんですけど、めちゃめちゃ演技がすごかったです。一気にスイッチ入ったみたいな。

駒場:間近で見てましたけど、一気にコントに入るというか。楽屋では普通に静かに座ってはったのに、スタジオ入って来たら「志村さんになった」みたいな感覚。それ見て、「うわぁ」っていう。オンオフがすごかったです。

「ミルクボーイを観に大阪に!」

――今後目指すのは、「海原やすよ ともこ」「中川家」のようなNGKの看板でしょうか?

駒場:いいっすねぇ。ずっとウケてますし、ホンマにスベッてない。あんなふうになりたいです。

内海:そうですね、そこが目標になるんかなぁっていう。ただ、「漫才の最強」って何なんやろうと思って。もちろんNGKなんですけど、全国飛び回って漫才やるのが最強なのかとか……。そこはまだわかんないですね。


――テレビの世界で、「こんな番組をやり続けたい」というイメージはありますか?

駒場:今ケーブルテレビでやらせてもらってる『ミルクボーイの伝説少年』(eo光チャンネル)っていう番組は、スタッフさんがけっこう自由な企画を考えてくれて楽しい。ホンマにコンビで自由にできるような番組なんですよ。そんなんがずっとあればいいなと思いますね。

内海:『よんチャンTV』っていう番組の中で、僕らがやってる「なんかエエことありました?」ってコーナーがあるんです。街中で最近ええことあった人を探して、そこで「今日息子が誕生日なんです」とかって話が出たら、僕らもサプライズでお祝い行かせてもらって息子さんだけのオリジナル漫才を作るみたいなことを2本撮りでやってるんですよ。

それがホンマにめっちゃ頭使う。言うたら新ネタなんで、覚える力もいるし、練習もするし、頭から火出そうなぐらい大変なんです。ただめっちゃ喜んでくれるんで、大変ですけどやりがいは今一番あるかもしれないですね。

そういう喜んでもらえる番組はやりたい。あと関西で活動してますんで、「ミルクボーイを観に大阪に遊びに行く」みたいな感じで劇場や関西が盛り上がれば嬉しいです。それから、ちゃんとご飯は食べられてますんで! そこは心配しなくても大丈夫です。

取材を終えて――何よりも、NGKで漫才を観たい

ミルクボーイの2人は、大阪芸術大学の落語研究会で知り合い、M-1決勝の舞台にあこがれてコンビを結成している。漫才をきっかけにスタートしたのだから、彼らがNGKの出演を第一に考え、大阪を拠点に活動しているのは至極自然な流れだ。

いろんな活動スタイルの芸人がいる昨今、全国区のバラエティー番組に出演していないからと言って「関西でひっそり」というくくりをされるのは残念でならない。実際の2人は、関西で忙しい日々を過ごしている。何よりも、「NGKはホーム感がある」と聞いてNGKで漫才を観たいと思った。

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます