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連載

#90 コミチ漫画コラボ

「男のくせに泣いて…」と言われても泣いた夫が壊してくれた価値観

CMでも涙するパートナー、電撃が走った「一言」

水谷アスさんのマンガ「泣くことを思い出させてくれたひと」。「女だから」「男のくせに」といった根強く残る価値観を問い直す作品です
水谷アスさんのマンガ「泣くことを思い出させてくれたひと」。「女だから」「男のくせに」といった根強く残る価値観を問い直す作品です 出典: 水谷さんのツイッター

目次

小さい頃は泣き虫だった女性。周囲から「泣けば許されると思うな」「これだから女は」と言われて育ち、〝涙〟を封印してしまいます。しかし、良く泣く男性と付き合い始めて、「ある一言」に救われた思いになります。実体験を元に「押し付けられた価値観」を描いたというマンガの作者・水谷アスさんに話を聞きました。

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泣き方を忘れ、「泣きどころ」が分からない

自身の体験をもとにマンガを制作したという北海道在住の水谷さん。周りには「涙」に否定的な家族や先生、同級生たちが多く、つらかったり悲しかったりして泣いていると「泣けば許されると思って……」「これだから女は」などと言われてきたそうです。

「そう言われたくなくて、いつの間にか『泣いてたまるか』『負けたくない』と泣かなくなっていきましたね」と振り返ります。

出典:水谷さんのツイッター

16歳の時には卒業式で泣く友人を不思議な思いで見つめ、「泣き方」が分からなくなっていることに気づきます。

大学時代は「感動作」とうたわれた映画を見ても、自分だけ〝泣きどころ〟が分からない。友人の「あの映画で泣けないやつは人間じゃないね」という言葉がグサリと刺さります。

出典:水谷さんのツイッター

心に電撃が走った「一言」

そんななか、小学校の同級生だった現在のパートナーと再会。子どもの頃からよく泣く男の子で、成長してもそれは変わっていませんでした。

水谷さんの実家に集まり、テレビを見ていたある日。男性が感動して号泣すると、水谷さんの父は「男のくせに、人前でそんなに泣いて」とちゃかしました。

すると男性は、「男でも女でも 泣きたい時に泣くのは当たり前じゃないですか」とこともなげに答えたのです。水谷さんは「心に電撃が走った気がした」と振り返ります。

出典:水谷さんのツイッター

「『あ、泣いていいんだ』と思ったら、瓶のふたがパカッと開いたような、ホッとした気持ちになりました」

「泣いてもいいんだよ」と伝えたい

そんな男性と結婚を決めた水谷さん。小田和正の「言葉にできない」がかかるテレビCMでも泣いてしまう夫さんに、「そんな数秒で泣けちゃうんだ、気持ちよさそう」「この人の前で泣くのを我慢するのはバカバカしいな」と感じるようになり、今は素直に、泣きたいときは泣いているそうです。

深夜ふと、この体験を思い出し、スマホにメモして2日ほどでマンガに仕上げたといいます。

出典:水谷さんのツイッター

「描いている時は、小さい頃を思い出してつらい気持ちにもなりました。ツイッターにアップしたら『同じ体験をしました』という人が結構いて、まだ古い価値観に縛られている人には『泣きたい時には泣いていいんだよ』と伝えたいです」

自分の娘たちが自閉と診断されて

8歳と4歳の女の子2人を育てている水谷さんは、2年ほど前、育児と仕事の両立がうまくいかず、会社を退職しました。

人づきあいが苦手な子どもたちの対応がしやすいよう、「在宅で何かできないか」と考え、ブログで4コマ漫画を描き始め、現在のようにSNSなどでマンガを発信するようになりました。

集団行動が苦手、運動会のかけっこのスタートでも一人だけ走れない……。ちょっと周りの子たちと違うかもしれないと感じていた娘さんたちは、保育園の頃に自閉スペクトラム症と診断されました。その後、水谷さん自身も自閉スペクトラム症と判明します。

しかし「うちの子、自閉なんです」と説明すると、急に相手からは〝気遣う空気〟が伝わってくるといいます。

子どもたちの発達の特性を「左利き」にたとえる水谷さん。水谷さん自身も左利きだそうで、「右利きと違いがあったり、不便な点があったりしても、『右手で字が書けないからかわいそう』とはなりませんよね」といいます。

「特別扱いしてほしいとか『かわいそう』と思ってほしいわけではなく、日常にちょっとした大変さがあることだけ知ってほしい。ズレているところがあっても、『あ、そうなんだ』と受け止め合える社会になってほしいんです」

デコボコを組み合わせて……

過去のマンガでは、ゲームのテトリスの凹凸で発達の特性を説明。「それぞれを上手に組み合わせて大きな技を決められる社会の方が面白いのでは」と問いかけます。

2年前には幼い子どもの親と有志の大人で映画館を貸し切り、「子どもが騒いでもいい上映会」を計画。交渉や事務処理、フライヤー制作などそれぞれの「得意」分野にあわせて仕事を割り振り、イベントは無事に成功しました。

「デコボコのある人が集まらないとうまくいかなかった」と振り返ります。

ふだんから「普通ってなんだろう?」と感じているという水谷さん。

「普通はできるでしょ」「普通の男は/女は」「お母さんなんだから普通でしょ」……。

まだまだ社会に根強く残っている「普通」の価値観ですが、マンガを通して「それぞれ違うのが面白いじゃない?」と伝えていきたい――。そう考えています。

水谷アスさんのマンガ「泣くことを思い出させてくれたひと」:マンガのSNSを運営する「コミチ」とwithnewsのマンガ募集企画「#わたしの伴侶」に応募し、大賞を受賞しました。
水谷さんのツイッターはこちら→https://twitter.com/mizutanias
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